偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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迷った時は喧嘩を売れ②

 そう言うと、近藤はあっさりと言う。

 

「嫉妬してんだよ」

「誰に?」

「みんなに」

 

 そのアバウトで幅広い返答に、わたしは顔をしかめる。

 

 すると、近藤がわたしの頭をポンポンと叩いた。

 

「大好きな女の子が、姉貴を亡くして一番心細い時に、山崎と仲良くしたり、将軍様に膝枕したりしてるんだから……ね」

 

 わたしは自信ありげな笑みを浮かべる近藤に、無表情で言う。

 

「じゃあ、将ちゃんもバズーカでズドーンかな?」

「や、さすがにそれは……ないと……いいよね……?」

「あーあ、真選組の春は短かったねー」

「やめて! 俺まだ死にたくないっ! 腹切りは嫌だー」

 

 両手で頭を抱えてぶるぶると震える。

 

 そんな大袈裟なリアクションに、

 

「責任者って大変だねー」

 

 淡々と答えて視線を下げれば、気を失っている将軍の口角が少しだけ上がっていて。

 

 ――ま、いいか。

 

 わたしが扇子で将軍に風を送りながら、何気なく訊く。

 

「てか、なんで総悟くん、あんなに綺麗なのよ。こっちこそ嫉妬したっての」

 

 それに、近藤はあっさりと答えた。

 

「そりゃあ、毎晩吉原に花魁として潜り込んでるんだから、キャバ嬢だって大差ない――」

「近藤さァァァァァアアアアアアんっ!?」

 

 ドスの効いた、うねり声。

 

「隠密じゃなかったのか? え?」

 

 あっという間に突進してきた沖田が、怒りをあらわにしながら、局長を見据えていた。

 

「そ……そういや、桜ちゃんには内緒でって約束だったな……すまない」

 

 と、狼狽えながらもわたしを見下ろして来る近藤。

 

 その不自然さとヒントを元に考える。

 

 沖田に女装趣味は、基本としてなかったはずだ。どちらかといえば、なんやかんやで男らしさなどにこだわっていた節もある。

 

 吉原という場所がどんな所かは知らないが、花魁がなんたるかは知っている。ようは遊女だ。男を楽しませることを生業とする人たちのことだ。キャバ嬢と違う点は、境界や雰囲気が違う……といったところか。

 

 そんな真似を、わざわざ沖田がしてまで潜入していたということ。

 

 そして、それがわたしに内緒だったということ。

 

 ――わたしに関係する何かを調べていたということ……?

 

 わたしは沖田を見上げる。

 

 沖田が固唾を呑んでいた。よほど、わたしにはバレたくないのだと思われる。

 

「……鬼兵隊でも、その吉原ってところに潜んでいるのかな?」

 

 沖田と近藤が目を見開いた。

 

 どうやら、正解のようである。

 

「まぁ、江戸のどこかに潜伏してるだろうって、そりゃ調査してるわよね」

 

 近藤さん暗殺事件の際や、武器の密輸事件の際、高杉やその部下と鉢合わせしている。つまりは、その根城がどこかにあるということだ。

 

 攘夷浪士の討伐が真選組の仕事の一環である以上、それを調査するのも当然のこと。

 

 そして、

 

「一番隊隊長が直々に動くなんて、結構信憑性があるってことよね?」

 

 わたしが微笑むと、沖田が歯を軋ませる。

 

「……先に言っておくが、俺ァぜってェーに許さねェーぞ?」

「そう言われて、わたしが言うこと聞いたことがあったかな?」

「大体、アンタが来てなんになるってんだ? ストーカー捕まえんのは、お巡りに任せておきゃいいだろ」

「ちょいとストーカーに訊きたいこともあったもんでね。なかなかいいタイミングで居所見つけてくれるなんて、さすが真選組ね」

「んなもん、俺が捕まえて来てやっから、牢屋にぶち込んでから訊きゃァ、いいだろーが。それともアレか? 俺が信用ならねェーってでもいうのか?」

 

 そう言われて、わたしは笑顔で、一言。

 

「だからね、愛が重いって言ってんのよ」

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