偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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猿山の大将は高いところが好き⑥

 ――どうする?

 

 わたしは無理やり考える。少女を立てに取り、立ちこもる――寝巻にも関わらず、上質な着物を着ており、何より天守の一部屋を寝室として与えられている少女。かなりの身分に違いない。人質としては十分価値がある。

 

 ――奈落と同じことしてどうすんのよ!

 

 次。また窓から沖田を連れて飛び降りる。今度こそ、ちゃんと着地できる保証はない。大怪我でもして、衛兵に見つかればそれはそれでまた問題になる。第一、わたしは今、沖田総悟としてここに来たのだ。本物の沖田総悟と一緒に発見されたら、それこそまた面倒になる。

 

 ――第一、死ぬ可能性のほうが高いっての。

 

 ならば、どうする。どうする。

 

 慌てれば慌てるほど、震えは大きくなるばかり。

 

 ――どうする!

 

 目をつむり、唇を噛みしめる。

 

 そんなわたしの手を優しく包んできた手は、柔らかくて、温かかった。

 

「お、お兄ちゃん! ごめんなさい、大丈夫。なんでもないよ!」

 

 布団で震えていた少女が、いつの間にかわたしの手を握ってくれていた。

 

 一瞬間が空いて、外にいる男が言う。

 

「そうか……ところで、部屋に鞠が転がりこんでこなかったか?」

「鞠?」

「うむ。桜色の鞠なんだが」

「さくら……」

 

 少女はわたしの頭を、色々な角度から見る。

 

 桜色の鞠――まさか……。

 

「……うん。さっきその鞠、拾ったよ。けど、傷だらけだから、直そうかと思ってて」

「そうか。ならば、その鞠、朝方にでも裏門まで届けてやってくれないか? 余の友達が取りにくるはずなんだ」

「お兄ちゃん、友達いたの?」

 

 少女はからかうように言う。

 

 外の男も、苦笑したようだ。

 

「失敬だな。余のことを将ちゃんと呼んでくれるくらいの仲だぞ」

「そっか。それはもう友達だね」

「うむ。しかし、まだその者の名前を訊いていなくてな。ついでに訊いておいてはくれないか?」

「いいよ。わかった。ちなみに、どんな人?」

「そよより少し年上の女性でな、物おじしない、仲間想いの優しい娘だ」

「ふーん。私とも仲良くしてくれるかな?」

「おそらく、快諾してくれるだろう」

「そっか、楽しみだな」

 

 そう言うと、少女はわたしの手を一段と強く握り、にこりと微笑みかけてくる。

 

「じゃあ、お兄ちゃん。朝一番にちゃんと届けておくから。任せておいて! ちゃんとこっそり行ってくるから」

「あぁ、頼んだぞ」

 

 そして、静かな足音が遠ざかっていく。

 

 すると、少女は一息吐いたあと、わたしと沖田を交互に見て、再び笑った。

 

「私はそよと申します。兄から頼まれたので、お二人の手当てをさせていただきますね」

「えーと……」

 

 わたしが状況に呆気にとられていると、沖田が片膝をついて、頭を垂れる。

 

「ご面倒おかけして、大変申し訳ございません。真選組一番隊隊長、沖田総悟。このご恩は必ず、お返しさせていただきます、そよ姫様」

「沖田様、気にしないでくださいまし。いつも真選組には江戸の安全を守ってもらっているのですから。ようやく恩が返せるのは、こちらの方です」

 

 少女――そよ姫は、わたしの手をゆっくり離した。気づけば、もう震えは止まっている。

 

「初対面なのに手を握ってしまい、すいませんでした」

「い、いえ……」

「兄が将ちゃんなら、私のことはそよちゃんと、お呼びくださいね」

 

 将軍の次に、その妹である。もう、この城に足を向けて眠れないな、と思いながら、

 

「じゃあ、わたしのことは桜ちゃんで」

 

 半ば自棄になりながら、わたしは笑顔を作った。

 




この章ももう少しで終わりです。

そよ姫好きです。可愛いです。こんな妹欲しいです。

題名に『妹』入れながら、妹要素が未だほとんど皆無ですが、次の章でようやく出てくる予定です。
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