偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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お酒は飼い主の許可をもらってから①

 

 

 

 

 雀がちゅんちゅんと鳴いていた。今日も快晴。地面のぬかるみもすっかり無くなっており、夏ならではのじめじめ感はあるが、それでも清々しい朝である。

 

「桜ちゃん! 今度は普通に遊びにきてねー」

「ははっ……じゃあ、将ちゃんに今度蹴鞠(けまり)でもしましょうって言っておいて」

 

 そよ姫とそんな感じで別れて。

 

 無事、真選組屯所前である。

 

 わたしは沖田の肩を借りて、歩いていた。

 

「ったく、左腕打撲に足首捻挫……ザマァねェなぁ」

「ほんと、面目ない……」

 

 沖田の呆れた声に、わたしは項垂れる。

 

 浚われたヒロインを助けようとして、このザマだ。まぁ、ヒロインが男でヒーローが女だという違いはあるけれど、助けた人の肩を借りなきゃ歩けないというのは、情けない話である。

 

 挙句に、奈落から逃げた後のあとザマ。後になって怖くて動けなくなったとか、年下の女の子に励ましてもらったとか、いくら凹んでも足りない――と思っていると、沖田がぼそぼそ言う。

 

「……ちげェよ、女に怪我さしたなんざ、オレが情けねェんだ」

「ん?」

「ちっ、なんでもねェ」

 

 舌打ちして、沖田は屯所の門を開ける。

 

 歩きながら、沖田の顔を見ると、唇を尖らせていた。幸い、沖田に大きな怪我はなく、こうして無事に帰ってこれたのだ。何がそんなに不満なのか……。

 

 ――あ、そうか。

 

「ごめんね」

「なにがサ?」

「誘拐されて……怖かったよね?」

「はぁ?」

 

 沖田が大口を開ける。そして、大きなため息を吐いた。

 

「おめェ……いや、もういい。勝手にしろ」

 

 玄関でわたしを放って、沖田は一人すたすたと広間へと入っていく。とすんとお尻を打ったわたしは、患部をさすりながらその背中を見ていた。

 

「もう……なんなのよ」

 

 わたしも唇を尖らせて、立ち上がった。そよ姫の手当てのおかげか、ゆっくりならば一人でも歩けるのだ。

 

 広間の扉の前で、一呼吸。

 

 そういや、わたしはどんな顔で扉を開ければいいのだろうか。

 

 一応、もう一度顔を見せるのが筋として、沖田と共に帰ってきてはみた。まぁ、今着ているこの制服も返さなくてはならないってのもある。

 

 けど、これからどうしようか。

 

 土方は処遇が決まるまで軟禁すると言っていた。大人しく軟禁されるか? 特に目的とかもなにもないし、帰る場所もないから、衣食住が確保されるなら、それも悪くないかもしれない。しかし、処遇が決まればどうする? 死刑や切腹と言われたら、大人しく従うか?

 

 ――それはないよなぁ……。

 

 わたしは目を閉じて、首を振る。

 

 目を閉じて、頭にある一人の男の顔が浮かんだ。かつてのわたしの兄だった人。優しくて、厳しくて、馬鹿だった人の顔。

 

 どうせ死ぬかもしてないのなら、彼に会ってからにしよう。高杉のところから、わたしを助けてくれたのだ。そう遠くにはいないだろうと思う。

 

 しかし、わたしをここに捨てたのだ。拒絶されるかもしれない。それでも――

 

 ――けど、とりあえず、真選組に筋は通さないとね。

 

 覚悟を決めて、扉を上げる。

 

 ばんっと弾けるクラッカーの音。目の前にはひらひらと色とりどりな紙吹雪が舞っていた。

 

 多くの隊士たちが笑っている。その奥の弾幕には、大きくこう書いてあった。

 

『桜ちゃん、ようこそ真選組へ』

 

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