偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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偽・夏祭り篇
女の買い物に付き合う男にメリットはない①


 

 一言で表すならば、今日も江戸は平和である。

 

 わたしはお布団の上で、思いっきり伸びをする。

 

 空高く輝く太陽は、とてもギラギラしていて。外は蜃気楼のごとくぼやけて見える。(せみ)がミンミンと残りの生を謳歌していた。

 

 夏である。命少ない蝉が主役の夏である。そんな外界に出しゃばってしまったら、蝉様に失礼である。

 

 だから、わたしは大人しく、もうひと眠りしようと目を閉じる。

 

 風鈴のチリンとした音が涼やかで、入ってくる風は生暖かいながらも、毛布代わりには心地いい。

 

 横になり、背中を丸める。枕を抱きかかえた。

 

 今度はどんな夢を見ようか。

 

「マヨネーズくんとバドミントンする夢はさっき見たし、ゴリラと蹴鞠(けまり)する夢も見たし……」

 

 むにゃむにゃと独り言を呟くのもまた楽しい。

 

 うすら、うすらと遠のく意識の中で、風鈴の音が軽やかに響く。

 

 チリーン。

 

 チリーン。チリーン。

 

 チリチリチリーン。チリチリチリチリヂリヂリヂリヂリ……

 

「どぉーん」

 

 そんな気の抜けた声と共に、脳天にごつんと固いものが当たる。眉間に力を入れながら、のそりと身を起こし、その正体を確認する。

 

 筒。

 

 暗黒世界への入り口かと思う暗闇が、わたしの頭のところにあって。

 

 その入り口を手にする少年は言う。

 

痴女猫(ちじょねこ)がいつまで寝てんだ。ただちに起きて俺様に土下座しないと、ホントにアンタの頭をどぉーんすっぞ」

「えーと……土下座はしないけど、起きてあげるから、そのロケットランチャーは下げてもらえないかな?」

 

 わたしが今、寝食の世話になっている真選組において、一番驚いたことが、天人(あまんと)に侵略されたとはいえ、戦争もない平和な江戸の警備隊組織に、ロケットランチャーが常時配備されてたことである――それを使っているのは、この一番隊隊長だけだけど。

 

「てか総悟くん、その痴女猫って呼び方やめてくれないかな?」

 

 身を起こし、伸びをしながらそう訊くと、沖田総悟(おきたそうご)はロケットランチャーを横に置いて、わたしをジト目で睨んでくる。(はり)にかけてた風鈴は、なぜか彼が手で鳴らす。

 

「アンタがそんなガキみてェな呼び方変えたら、考えてやらァ」

「いいじゃん、総悟くん。見た目のイケメンさと可愛さが極まる呼び方だと思うわよ?」

「ふーん」

 

 興味ないかのようにそう返事をすると、沖田は四つん這いになって近寄ってくる。沖田の色素の薄い瞳に、わたしのきょとんとした顔は映る距離で、彼はわたしの顎に手をかけた。

 

「俺を褒める時はなァ、サドとかドSって言いやがれ」

 

 そして、わたしの髪を撫で、首元に手をかけ。

 

 ガチャ。

 

 何かが閉まる音がする。

 

「さー行くぞ、痴女猫。いい加減、服着替えやがれ」

 

 鎖の付いた首輪をつけられ、スタスタ歩いていく沖田にひっぱられるわたし。

 

「ちょ、ちょっと! やだぁ、外出たくない! 暑いー!」

「うるせェ、アンタ何日おんなじ服着てるんでィ!」

「だって、これしかないんだから仕方ないでしょう!」

 

 三日前に沖田救出時に借りた真選組の制服を、ずっと着ていたのだが、どうやらそれが不満の原因のようである。何の自慢にもならないが、今のわたしは一銭も持っていない。第一、基本男しかいない屯所から、出れないのだから仕方ないと思うのはわたしだけなのだろうか。

 

「だからと言って、ずっとそれ着て寝ているだけなんて腐りすぎだバカヤロー」

「ううう……わたしの幸せ馬鹿にすんなぁ……」

 

 そんな感じで、わたしは強制的に江戸の町へ出ることになった。

 

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