女の買い物に付き合う男にメリットはない①
一言で表すならば、今日も江戸は平和である。
わたしはお布団の上で、思いっきり伸びをする。
空高く輝く太陽は、とてもギラギラしていて。外は蜃気楼のごとくぼやけて見える。
夏である。命少ない蝉が主役の夏である。そんな外界に出しゃばってしまったら、蝉様に失礼である。
だから、わたしは大人しく、もうひと眠りしようと目を閉じる。
風鈴のチリンとした音が涼やかで、入ってくる風は生暖かいながらも、毛布代わりには心地いい。
横になり、背中を丸める。枕を抱きかかえた。
今度はどんな夢を見ようか。
「マヨネーズくんとバドミントンする夢はさっき見たし、ゴリラと
むにゃむにゃと独り言を呟くのもまた楽しい。
うすら、うすらと遠のく意識の中で、風鈴の音が軽やかに響く。
チリーン。
チリーン。チリーン。
チリチリチリーン。チリチリチリチリヂリヂリヂリヂリ……
「どぉーん」
そんな気の抜けた声と共に、脳天にごつんと固いものが当たる。眉間に力を入れながら、のそりと身を起こし、その正体を確認する。
筒。
暗黒世界への入り口かと思う暗闇が、わたしの頭のところにあって。
その入り口を手にする少年は言う。
「
「えーと……土下座はしないけど、起きてあげるから、そのロケットランチャーは下げてもらえないかな?」
わたしが今、寝食の世話になっている真選組において、一番驚いたことが、
「てか総悟くん、その痴女猫って呼び方やめてくれないかな?」
身を起こし、伸びをしながらそう訊くと、
「アンタがそんなガキみてェな呼び方変えたら、考えてやらァ」
「いいじゃん、総悟くん。見た目のイケメンさと可愛さが極まる呼び方だと思うわよ?」
「ふーん」
興味ないかのようにそう返事をすると、沖田は四つん這いになって近寄ってくる。沖田の色素の薄い瞳に、わたしのきょとんとした顔は映る距離で、彼はわたしの顎に手をかけた。
「俺を褒める時はなァ、サドとかドSって言いやがれ」
そして、わたしの髪を撫で、首元に手をかけ。
ガチャ。
何かが閉まる音がする。
「さー行くぞ、痴女猫。いい加減、服着替えやがれ」
鎖の付いた首輪をつけられ、スタスタ歩いていく沖田にひっぱられるわたし。
「ちょ、ちょっと! やだぁ、外出たくない! 暑いー!」
「うるせェ、アンタ何日おんなじ服着てるんでィ!」
「だって、これしかないんだから仕方ないでしょう!」
三日前に沖田救出時に借りた真選組の制服を、ずっと着ていたのだが、どうやらそれが不満の原因のようである。何の自慢にもならないが、今のわたしは一銭も持っていない。第一、基本男しかいない屯所から、出れないのだから仕方ないと思うのはわたしだけなのだろうか。
「だからと言って、ずっとそれ着て寝ているだけなんて腐りすぎだバカヤロー」
「ううう……わたしの幸せ馬鹿にすんなぁ……」
そんな感じで、わたしは強制的に江戸の町へ出ることになった。