「はぁ?」
一気に顔が熱くなるが、わたしは気づかないふりして、そっぽを向いた。
「ガキが背伸びしたこと言っても、ぜんぜんサマになってないわよ」
「へぇー」
沖田はわたしの後ろに回り、耳をつんつん突っついてくる。
「じゃあ、どうして耳まで真っ赤になってるんでさァ?」
「うるさいっ!」
わたしは沖田を振り払い、適当に商品をいくつか手に取った。
「店員さーん、これ下さーい」
店員に商品を手渡して、わたしは沖田を一瞥する。
「じゃあ、先外出てるから」
スタスタと客を掻きわけ店外へ。まだお日様は高く、呑気にぽかぽか町を見下ろしていた。
行き交う人々はわたしを稀有なもののように見てくるものの、どうせ女がこんな格好しているからだろう、と気にしないでおく。
そう、気にしてたらやってられないのだ。
他人の言うことなんて。他人の視線なんて。
他人はこっちの事情なんて、なに一つとして知らないんだから。知ったこっちゃないんだから。
「どうしよっかな」
愚痴るように、呟く。
形はどうであれ、少年が自分に服を買ってくれるのだ。もしかしたら真選組の組織として経費を貰ってきたのかもしてない。沖田個人のお金かもしれない。
しかし、どちらにしろ、お礼はしなくてはいけないわけで。
借りた恩を、そのままにするわけにはいかないのだ。
恩を仇で返せば、潰されるのなんて、あっという間なのだから。
「それなら、それでいいのかもしれないけどね」
そんな時である。
騒音が聴こえた。
「チョメチョメー! チョメチョメー!」
少年の歌声である。歌というより、叫んでいると表現したほうが近いかもしれない。ジャカジャカしたバックミュージックと共に、歌詞のような戯言のような、意味のない、だけど愛情に満ちているようなシャウトが聴こえてくる。
――不良が遊んでいるだけかな?
そうだとしても、この音量はちょっとやりすぎである。場所は、ここの裏の川沿いの通りからか。
「そうだ」
わたしは閃いて、一人手を叩く。
――悪ガキの暴動を止めちゃおう。
始めはただの騒音被害だけかもしれないが、度がすぎれば市民に被害が及ぶような刑事事件になるかもしれない。
真選組とは、いわゆる治安保持の部隊のようだし、こういうのも仕事の一環であるはずのである。
「言われた通り、身体で返してあげようじゃない」
沖田の言った身体の意味は違うだろうけど、だからこそ、やりがいがあるというものだ。
善は急げとばかりに、わたしは走る。
「おい――」
後ろから声がかかる、振り返れば、沖田がカラフルな袋を抱えて店を出てきたようだ。
「ちょいとガキ懲らしめてくるわ!」
わたしは笑顔で、手を振った。