偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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お兄ちゃんと呼ばれて萌えない男はいない②

「あー! こないだの銀ちゃんが拾って捨てた女アル!」

 

 興味がこっちに向いたのか、チャイニーズ少女が駆け寄ってくる。

 

 それに気づいてか、

 

「離れろよ」

 

 銀時が小さく、冷たく呟く。わたしは唇を噛みしめて、彼の腰から手を離した。

 

 ――やっぱり、許しちゃくれないか。

 

 下を向いていると、眼鏡少年もこちらへやってくる。ちなみに、演歌は流れっぱなしである。

 

「あぁ、こないだの。具合はいかがですか? 銀さんが真選組に預ける言った時は驚きましたけど、真選組の人だったんですね」

「真選組……ね」

 

 どう返答しようかと、銀時に尋ねようとしても、彼は視線を合わせてもくれない。

 

 ――来なきゃ、よかったな。

 

 そう考えて、否定する。

 

 ここへ来たのは、彼がいるからではない。ここで居合わせてしまったのは、いわゆる事故だ。わたしにも、銀時にも防ぎようがないことである。

 

 だから、わたしはこう訂正するのだ。

 

 ――わたしが生きてなきゃ、よかったな。

 

 わたしは目頭が熱くなるのを堪えて、笑顔を作る。

 

「えー、あの時は助けていただいてありがとうございました。お礼を言いたかっただけなので、これで失礼しますね」

 

 すらすら言えたことに安堵して、わたしは身を翻そうとした――が、それを肩を押さえて遮られる。

 

 化粧の濃いおばさんだった。

 

「アンタ今、銀時のこと、お兄ちゃんと呼んだね。兄妹なのかい?」

 

 訊かれて、わたしも口を開くことができない。きっと彼は、そのことを否定したいだろうから。

 

 そのおばさんは、口早に言う。

 

「アタシゃ、銀時が住んでる所の大家をしているお登勢(おとせ)という者でね。アンタの兄が家賃を滞納しているもんだから、代わりに払えるなら払ってもらいたいんだけど」

「あー……」

 

 わたしは顔をしかめて、銀時を見る。銀時はそっぽを向いて、こめかみを掻いていた。

 

 チャイニーズ娘と眼鏡少年が身を乗り出してくる。

 

「なになに銀ちゃん、妹なんていたアルか? 色素が薄いこと以外、銀ちゃんに似てないアルね」

「たしかに、髪の色が桜色……ですか? 珍しい色同士ってこと以外、全然違いますね。目もぱっちりしてるし、服もきっちりしてるし」

「銀ちゃんの妹なら、もっとぐーたらしてそうアルよなー。髪もぼさぼさで、死んだ魚のような目をしてて」

「そうだね。しかも、銀さんの妹なら敬語とか絶対喋れなさそうだよね」

「おーまーえーらー、遠まわしに俺をディスって楽しい? 楽しいよな、絶対!」

 

 銀時が楽しそうな二人に、怒りながらもどこか楽しそうに歯向かって。

 

 ――そっか。

 

 わたしはふと、顔の力を抜く。

 

 どうやら、銀時は自分の居場所を見つけたんだな、と悟って。

 

 新しい居場所を見つけたんだと、わかって。

 

 わたしは過去の消したい存在なんだと、理解して。

 

 そんなわたしに追い打ちをかけるように、銀時が言う。

 

「こいつはなぁ……その、こないだちょいと夜の店でそーゆープレイしたお姉ちゃんでな。ちょっとお姉ちゃん、もう俺にはお金ないから。当分お店に行けそうにないから。だから、俺は諦めて、他の客見つけてくんない?」

 

 ――またまた、ろくでもない言い訳考えつくもんね。

 

 そう呆れた言葉を返したいのを我慢して、代わりの言葉を考える。

 

 その時、何者かに肩を抱かれた。

 

「奇遇ですねェ、万事屋(よろずや)の旦那ァ。しかしいきなりですが、俺のペット泣かすなんざ、旦那といえど、理由によっちゃタダじゃおきやせんぜ?」

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