「あー! こないだの銀ちゃんが拾って捨てた女アル!」
興味がこっちに向いたのか、チャイニーズ少女が駆け寄ってくる。
それに気づいてか、
「離れろよ」
銀時が小さく、冷たく呟く。わたしは唇を噛みしめて、彼の腰から手を離した。
――やっぱり、許しちゃくれないか。
下を向いていると、眼鏡少年もこちらへやってくる。ちなみに、演歌は流れっぱなしである。
「あぁ、こないだの。具合はいかがですか? 銀さんが真選組に預ける言った時は驚きましたけど、真選組の人だったんですね」
「真選組……ね」
どう返答しようかと、銀時に尋ねようとしても、彼は視線を合わせてもくれない。
――来なきゃ、よかったな。
そう考えて、否定する。
ここへ来たのは、彼がいるからではない。ここで居合わせてしまったのは、いわゆる事故だ。わたしにも、銀時にも防ぎようがないことである。
だから、わたしはこう訂正するのだ。
――わたしが生きてなきゃ、よかったな。
わたしは目頭が熱くなるのを堪えて、笑顔を作る。
「えー、あの時は助けていただいてありがとうございました。お礼を言いたかっただけなので、これで失礼しますね」
すらすら言えたことに安堵して、わたしは身を翻そうとした――が、それを肩を押さえて遮られる。
化粧の濃いおばさんだった。
「アンタ今、銀時のこと、お兄ちゃんと呼んだね。兄妹なのかい?」
訊かれて、わたしも口を開くことができない。きっと彼は、そのことを否定したいだろうから。
そのおばさんは、口早に言う。
「アタシゃ、銀時が住んでる所の大家をしている
「あー……」
わたしは顔をしかめて、銀時を見る。銀時はそっぽを向いて、こめかみを掻いていた。
チャイニーズ娘と眼鏡少年が身を乗り出してくる。
「なになに銀ちゃん、妹なんていたアルか? 色素が薄いこと以外、銀ちゃんに似てないアルね」
「たしかに、髪の色が桜色……ですか? 珍しい色同士ってこと以外、全然違いますね。目もぱっちりしてるし、服もきっちりしてるし」
「銀ちゃんの妹なら、もっとぐーたらしてそうアルよなー。髪もぼさぼさで、死んだ魚のような目をしてて」
「そうだね。しかも、銀さんの妹なら敬語とか絶対喋れなさそうだよね」
「おーまーえーらー、遠まわしに俺をディスって楽しい? 楽しいよな、絶対!」
銀時が楽しそうな二人に、怒りながらもどこか楽しそうに歯向かって。
――そっか。
わたしはふと、顔の力を抜く。
どうやら、銀時は自分の居場所を見つけたんだな、と悟って。
新しい居場所を見つけたんだと、わかって。
わたしは過去の消したい存在なんだと、理解して。
そんなわたしに追い打ちをかけるように、銀時が言う。
「こいつはなぁ……その、こないだちょいと夜の店でそーゆープレイしたお姉ちゃんでな。ちょっとお姉ちゃん、もう俺にはお金ないから。当分お店に行けそうにないから。だから、俺は諦めて、他の客見つけてくんない?」
――またまた、ろくでもない言い訳考えつくもんね。
そう呆れた言葉を返したいのを我慢して、代わりの言葉を考える。
その時、何者かに肩を抱かれた。
「奇遇ですねェ、