偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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お兄ちゃんと呼ばれて萌えない男はいない③

 腕で引き寄せてくる男の正体は、顔を見なくてもわかった。沖田が追いかけてきて、怒っているのだ。

 

 しかし、わからないことがある。

 

 沖田は、わたしが泣いていると言う。

 

 沖田は、わたしを泣かせて銀時を怒っているらしい。

 

 ――どうして?

 

 思わず、鼻で笑ってしまう。

 

 なんで、何も知らない少年が、怒るのだろうか。しかも、どうやら銀時とは顔見知りらしいじゃないか。

 

 わたしなんかより、以前からの知り合いじゃないか。

 

 だったら、怒られる方は、わたしじゃないのだろうか。信用されるのは、銀時の嘘の方でないのだろうか。

 

 ふと、ずっとじゃれあっていた少年少女が目に入る。彼らはあたふたとしていた。少年が真っ白なハンカチを取り出して。少女がそれを奪い取り、わたしに差しだしてくる。

 

「ごめんな。銀ちゃんはこの通り甲斐性の欠片もない(くず)アルよ。だから、こんな男のことはとっとと忘れて、幸せになるアル。けど、そっちのクソサドもどうかと思うアル。お姉ちゃん男見る目ないアルな」

「おー、チャイナなかなか言ってくれるじゃねーかィ」

「私は事実を言っているだけアルよ」

 

 そんなことを言いながら、この少女はハンカチでわたしの顔をごしごし(ぬぐ)った。少し痛い。

 

 ――あぁ、なんか言わなくちゃ。

 

 チャイナ少女も、眼鏡少年も、心配そうな顔でわたしを見ている。お登勢とかいう、派手なおばさんも、同じような顔。

 

 沖田は後ろにいるから顔が見えないが、ずっとわたしの肩を抱いたままだ。

 

 そして、銀時は、ちらりとも、わたしの顔を見ようとはしない。

 

「最低な男ね……」

 

 わたしは、ぽつりと呟いた。

 

 だって、完全に自分が悪者になろうとするのだから。

 

 これでは、まるでわたしは、悪い男に引っかかった、可哀想な女ではないか。

 

 わたしが、あなたの言うことを聞かなかったばかりに、あなたの大事なモノが全て壊れてしまったというのに。

 

 わたしが、あなたのそばを離れたばかりに、あなたの大事なモノを全て壊したというのに。

 

 あなたがわたしを許せなくても当然なのに、それでもあなたは自分が悪者になろうとする。

 

 だから、わたしは自分が泣いていることを自覚して、笑うのだ。

 

「本当に、あなたは最低な男ね――」

 

 その時、工場から轟音が響く。

 

 空砲と共に出てくるのは、人の二倍はあると思われる丸っこいロボット。沖田が持っているようなバズーカを肩に掲げて現れる。その背後からは、ゴーグルを着け、作業着を着たずんぐりむっくりなおじさんだった。

 

「おいテメェら! 人の作業中にいつまで騒いでおるんだ!」

「それはこっちの台詞だジジイ! 毎日毎日でんやでんやゴタゴタうるせぇーんだよ! ちったぁ、迷惑味わえたかコノヤロー!」

「なんだキサマは! 演歌に痴話げんかにやりたい放題なのはどちらだ!」

 

 そのおじさんと銀時が絡み出し、それにおばさんたちも入り出して。

 

 すると、沖田が腕を引いてくる。

 

「行くぞ」

 

 小さく、低く、そう言って。

 

「……そうだね」

 

 そんな楽しそうに、馬鹿馬鹿しく騒ぐ銀時の姿を目に納めて、わたしは歩を翻した。

 

 

 

 その日はまっすぐに屯所に帰り、夕食を食べずに床についた。

 

 そして、翌朝――というか、また起きたのはお昼過ぎだったのだが。

 

 目が覚めると枕元には、綺麗な浴衣と、首輪と、読みやすい字で書いてある手紙が置いてあった。

 

 手紙にはこう書いてある。

 

『男を見返すために、女ができる一番の方法は、綺麗になることだ』

 

 今日もお天気はよくて、決して手が届かないと諦めるしかないほどの高い空が見える。そして、清々しいまでにカラっと暑い。

 

 とりあえず、わたしは背伸びをした。

 

 さて、とりあえずカピカピの顔を洗ってみようかな。




前の章とまとめて同じタイトルにするつもりだったのですが、長くなりそうだったので分けました。

自分で書いておいてあれですが、沖田がいい男すぎて怖いです。
そう思うのが私だけだったら、きっと私も男を見る目がないのでしょう。

これから立て続けにカッコいい男たちを書くつもりなのですが、うまく書けるかびくびくしながら、頑張りたいと思います。
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