偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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屋台で焼きそばかタコ焼きか悩むのを楽しめ①

 

 

 浴衣は夏に着るものである。それなのに、春の象徴たる桜模様というのは、なかなか珍しい。

 

 よくある紺色ベースに、濃淡それぞれの桜が入り混じる浴衣に、橙色の帯を締めて。同色の鼻緒の下駄を履いて。肩で揃えられた薄紅色の髪を提灯(ちょうちん)に照らされながら、人ごみを小股でカタコトと歩く姿は、まわりからどのように見えているのだろう。

 

 赤い細身の首輪を巻いていることには、気づかないでほしいと心底願っているのだが。

 

 夜の夏祭り。行き交う人は老若男女みんな楽しそうに笑っていた。屋台にも活気があり、等間隔に並んでいる見張りの黒い制服を着た男たちも、心ここにあらずとそわそわしている。この可哀想な男たちは、祭りに参加する将軍の護衛をして、真選組全員駆り出されているのだ。

 

 真選組全員が徴収された中で、常に監視されなければならないわたしはどうなるのか。

 

 答えは簡単だった。

 

『一緒に来るに決まってらァ』

 

 言われてみれば、納得である。祭り会場中、真選組の隊士たちが目を見張らせているのだ。監禁ではなく、軟禁されているわたしにはぴったりのお出かけである。

 

 しかし、一緒に突っ立っていては芸がない。むしろ不自然。遊び歩きたいが、お金がない。

 

 そのことを訊いたら、返事はこうだった。

 

『じゃあ、焼きそば買ってきてくれや。残った分は好きなもん買っていいから。あ、もちろんマヨネーズはたっぷりかけてきてくれよ』

 

 マヨネーズに焼きそばをかけたほうがいいのではないか、と訊いたら、それは情緒がないと言われた。

 

「なかなかいいアイディアだと思ったんだけどね」

 

 そんなわけで、マヨネーズたっぷりの焼きそばと、綿あめと、虫かごを持ったわたしの足取りは、軽かった。余ったお金でやった型抜きは、見事成功し、商品の黄金のカブトムシを手に入れた。おそらく、ただ塗料を塗ってあるだけだろうが、それでも提灯のオレンジ色に照らされて、黄金にきらきらと輝く姿は勇ましい。虫かごの中で、悠然と佇んでいる。

 

 わたしは(やぐら)近くのステージに辿りつく。このステージでは、もうすぐ江戸一番のカラクリ技師が将軍への見世物を披露するらしい。もちろん、櫓の上には将軍と、その妹の姫君がいらっしゃるとのこと。

 

 ――挨拶くらい、したいけどなぁ。

 

 櫓の真下からは、その上にいる人など、もちろん見えることもなく。

 

 わたしは綿あめをぱくりと口にして、

 

「ひひはははーん! ふうんん、はってひたほー」

「食べながら呼ぶんじゃねぇ」

 

 ほわんと溶ける甘みを満喫しながら、わたしは土方に焼きそばを渡した。

 

「ちっ、やっぱりマヨが少ねぇな」

 

 ――だから言ったのになぁ。

 

 と内心思うものの、わしゃわしゃと勢いよく食べだす姿を見て、まぁいいかと黙っておく。

 

 隣にいた近藤は、羨ましげに言ってくる。

 

「いいなぁ! ねぇ、桜ちゃん。俺にはないの?」

「え? 土方さんにしか、頼まれてなかったよ?」

「んもー、桜ちゃんのいけずー」

 

 ゴリラみたいな男にいけずと言われても気持ち悪いだけなのだが。

 

 それを言うのも我慢して、わたしは手を差し出して、にこっと笑った。それで察したのか、近藤も眉をしかませながらも笑って、懐に手を入れる。

 

「桜ちゃんはなかなかの商売上手だなぁ。じゃあ、俺はタコ焼きをお願いしようかな」

 

 そう言って、財布をまるまる渡してくる。それなりに重みがあった。

 

「ちょっと多くない?」

 

 わたしが財布を手で弄ばせると、近藤は大口を開けて笑う。

 

「祭りなんて久々なんだろ? こんな可愛い桜ちゃんの姿も見れたしな。遊んでおいで。でも、全部使わなくていいんだからね」

「全力で全部使ってくるわ」

 

 つられて、わたしも笑う。わたしは周りを見渡した。このあたりは将軍の傍だからだろう、真選組の幹部らしき人たちが多めに配置されているようだが、ある人物がいないことに気づく。

 

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