偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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屋台で焼きそばかタコ焼きか悩むのを楽しめ②

「ねぇ、総悟くんは?」

「お、本当に躾けられだしたか?」

 

 焼きそばを食べ終えた土方の軽口に、わたしは顔をしかめた。

 

「違うわよ。けど、浴衣姿くらい見せてあげようかなっと思って」

 

 そういうわたしに、土方は「ふーん」と相槌をして、言う。

 

「あいつならうんこだとよ」

「トシ、女の子に対してうんこなんて言葉使っちゃダメだろう!」

 

 近藤は土方の肩に手を置いた。そんな近藤に土方は口を尖らせる。

 

「うんこをうんこと言わないで、なんて言えばいいんだよ」

「そりゃ、女の子が使うような言葉で……お花を摘みに行く……とか?」

 

 そのチョイスに、わたしは思わず噴き出した。

 

「普通にお手洗いでいいじゃない」

 

 それに、近藤はなるほどと手を打つ。わたしが笑っていると、土方は懐からたばこを取り出して、火を付けた。

 

「しかしまぁ、ついこないだまで夜は辻斬りがいるって騒いでたってのに、もう祭りで楽しもうなんて、現金なもんだな」

「しゅひひり?」

 

 わたしはまた綿あめを食べながら、首を傾げる。 そんなわたしを土方はジト目で見ながら、

 

「そういや、話してなかったか……お前がうちへやって来るきっかけはな、夜な夜な侍を斬るという辻斬り事件だったんだ。まぁ、その正体が鬼兵隊の一人だったんだが」

 

 そう話し、焼きそばの容器をゴミ箱へ投げ入れる。わたしも、口の中の綿あめを消化させた。

 

「鬼兵隊って、高杉の組織よね?」

「あぁ。過激派攘夷浪士の集まりだな。高杉がとある刀鍛冶と協力して、紅桜(べにざくら)という兵器を作った。その紅桜っつーのがまた厄介なもんで、戦闘データを蓄積し、性能を高め、刀一振りで戦艦をも撃ち落とすというバカげた代物で、そのデータ集めのための辻斬りだったそうなんだが――良くできているとは思わないか?」

 

 そう問われて、わたしは目を細める。

 

 隣の近藤が、

 

「おいおい、何も今こんな話をせんでも……」

「じっくり取り囲んだら、話すような奴でもないだろう」

 

 制止しようとするが、土方は再びわたしを見下ろした。片手を刀に触りながら、言う。

 

「よく出来た話だろう? 高杉は、紅桜なんて名前の兵器を作りながら、桜という名前の女を捕えてたんだ。何か関連があると考えるのが、普通だと思わないか?」

 

 一触即発。

 

 まさにそんな雰囲気を感じ取って、わたしは少し口角を上げた。

 

 離れたところから、祭囃子の太鼓の音が聴こえる。

 

「桜の花が好きな人なんて、世の中たくさんいると思うけど? 血で紅く染まった桜だなんて、風情があるといえば、あるんじゃないかしら」

「高杉と幼馴染だと言ってたな。出身はどこなんだ?」

「ないしょ」

 

 土方が刀をカチャと鳴らす。

 

「てめぇ、そんなこと言える立場にないこと、わかってんのか?」

「わかってるわよ。わたしが何か言ったら、関係ない故郷の人に迷惑がかかることくらいは」

 

 わたしは、ずいぶん小さくなった綿あめをかじる。飲み物もなしに、綿あめ一個食べきるには、なかなかに(つら)い。

 

「まぁ……そうね。昔なじみとして、わたしの目の前であいつがなんかやらかそうとした際には、きっちり止めてやるわよ」

 

 そして、最後の一口をぱくり。割り箸をゴミ箱に投げては、後ろを向く。

 

「浮いた場所らしいこと言うとね、あいつ、昔からわたしのこと好きだったんだって」

「おい、待てよ――」

 

 呼び止められるが、わたしは手で近藤のお財布を弄びながら、足早に人ごみの中に紛れた。

 

 虫かごの中のカブトムシが、もぞもぞと動き出す。

 

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