「あ、総悟くん。射的はもう満足したんだ?」
「だからその呼び方やめろっつってんだろ。てか、俺はてめぇを待ってたんでィ」
そう言うと、沖田はわたしを上から下までジロリと見た後、納得したかのように頷く。
「じゃあ、俺が祭りの楽しみ方を伝授してやらァ。まずは射的だな。銃で撃ち落としたものを、全てゲットできるというぼろ儲けの遊びでィ。狙い目は店主だな。装飾品でも、内臓でも、なるべく高そうなものを狙うのがポイント」
「ちょっとー、俺、内臓まで取られちゃうの? 殺されちゃうの? 射的屋って命がけの商売だったの?」
店主が怯えて叫ぶが、沖田は振り向いて、一言。
「武器を持ったら皆、生きるか死ぬかと狩人でィ」
「やめてー! その常にデットオアアライブな精神やめてー!」
そう叫びながら、ひたすら銃を撃ち続ける神楽という少女から、逃げまどう店主。気づけば、このあたりから人気が失せていた。気づけば、そろそろメインステージのイベントが始める時間である。そちらに人がうつったか、あるいは、この状況に関わりたくないと逃げたか。
間違えなく後者だと判断して、わたしもそれに便乗しようと決める。
「あの、えーと……わたし、近藤さんにたこ焼き買っていかなきゃいけないから……これで」
「待てよ、桜。祭り一緒に――」
沖田から声がかかるが、わたしは聴こえないふりをして、足早に立ち去った。
「振られたアルな」
「……るせィ」
そんな声が聴こえたが、すぐに店主の悲鳴と銃声にかき消されていた。
たこ焼きは三箱買うことにした。近藤と、土方と、他の隊士にも配ろうかと思ったのだ。まぁ、余ったら自分がもらってもいいし。
虫かごと、三箱のたこ焼き。それと思わず買ってしまった真っ赤でかわいい林檎飴。遠くの
――やっぱり、お金が余分にあると無駄遣いしちゃって困るな。
二つ買ったところで、きっと将軍にもそよ姫にも会えないだろう。あの可愛らしい姫様に癒してもらおうと思う自分が浅ましい。
――ていうか、なんでこんなに胸が苦しいんだか。
ステージに戻る人並み多い道の途中。ドォン、ドォンという音につられて空を見上げると、大輪の光の花が咲いていた。
白く、赤く、青く。彩どりの花が心揺るがす轟音をあげて、次々と咲き誇り、そして散っていく。
花火。
歓声があがる。足を止めて、わたしもしばらくその光の芸術を眺めていた。
綺麗で。派手で。艶やかで。儚くて。
「あっという間に咲き誇り、一瞬で消えていく。風情があると思わないか? 桜」
耳元でそう囁かれて、わたしは即座に振り返った。
その姿を見て、わたしの思考が思わず止まる。
蝶が描かれた紫の着物を緩く身にまとった男の雰囲気は、昔よりも色気があった。片目には包帯が巻かれているが、もう片方の目はなだらかに細められている。
「お前と一緒だ、桜。誰よりも華々しいが、誰よりも可憐で
その男は、わたしに手を差し出した。
「帰って来い。そして、一緒に派手に散ろうじゃないか」