偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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屋台で焼きそばかタコ焼きか悩むのを楽しめ⑤

 その時、やけに低い場所で一際大きな花火が点火した。

 

 後ろを向いていても目がくらむほどの明滅。そして、爆音。

 

 何が起きたかと振り返りたいが、目の前の狂喜に満ちた笑みから目を離すことが出来ない。

 

 高杉晋助(たかすぎしんすけ)

 

 今や、過激派攘夷浪士の筆頭たる存在であり、鬼兵隊の首領。

 

 そして、昔は――。

 

 だから、わたしは知っているのだ。

 

 この芝居のような言動が、全て本心なことを、わたしは知っている。

 

 この手を取らなければ、殺される。

 

 そんな殺気を感じつつ、わたしは覚悟を決めて口を開く。

 

「……わたしを、奈落の洗脳から治してくれたのは、高杉でいいのかな?」

 

 すると、高杉は両手を広げて、笑った。

 

「当たり前じゃないか! 婚約者を救うのが俺でなくて、一体誰だと言うんだ」

「婚約者って……そんな昔の話を、まだ言っているの?」

 

 わたしは周囲を見渡す。人がステージから大慌てで逃げていた。真選組はわたしたちには一視もくれずに、ステージへ向かっている。

 

 爆音が立て続けに鳴る。

 

 わたしを胸中を察するかのように、高杉は言った。

 

「今ステージでは、素敵なショーをしているからな。誰も俺らのことなんか気にする暇はないさ」

「なに? そのショーはあなたが演出しているわけ?」

「なに、俺はただお膳立てしてやっただけさ。きっと、将軍様も喜んでくれるはずだぜ」

「……祭りの日くらい、仕事さぼりなさいよね」

 

 わたしは顔をしかめる。

 

 この騒動、どうやら高杉が画策した、将軍を狙ってのものらしい。

 

 攘夷活動をしっかりしちゃってくれているようだが、それは非常に困るのだ。

 

 ――もう、脱出できたかな?

 

 わたしは振り返り、(やぐら)を確認しようとする。

 

 が、一歩詰められて、高杉に顔を押さえられた。

 

「なぁ、婚約者が久々に再会できたんだ。目を逸らすなよ」

「わたし……まだ目覚めてから、一週間くらいだけど?」

 

 両手でしっかり押さえられ、息のかかる距離に高杉の顔がある。相変わらず美形だが、それがむしろ怖い。

 

 怖いけど、怯えるわけにはいかないのだ。

 

 怖いけど、怖気づくわけにはいかないのだ。

 

「ちゃんとこうやって会話できるのは、五年ぶりだ」

 

 怖いけど、逃げるわけにはいかないのだ。

 

 きっと、彼が壊れたように笑うのは、わたしのせいなのだから。

 

 あのとき、わたしが彼らの前から消えて。

 

 裏切って、彼らを斬ったのがいけないのだから。

 

 だから、わたしは高杉から、目を逸らさずに言う。

 

「じゃあ、五年ぶりに言うけれど――わたしはもう、あなたの婚約者じゃないわ。家も何も、もうわたしにはないこと、知っているでしょう? そんな約束は、とっくの昔に破棄されているわ」

「んなこと、関係ねぇよ。俺がお前を愛してるんだ。ただ、それだけさ」

「……そんなんだから、女に逃げられるのよ」

「もう、逃がしはしねぇよ」

 

 高杉が、腰に手をかけた瞬間、目の前に白銀がきらめいて。

 

 わたしが後ずさると、目の前でその切っ先が止まった。誰かが手を伸ばし、それを握っている。

 

 その手からは、赤黒い血が滴っていた。

 

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