「おいおい、こんな祭りの夜にする痴話喧嘩にしちゃあ、物騒すぎるんじゃねーの?」
提灯に照らされる髪は素直に橙に染まっていた。しかし、その髪は天の邪鬼でうねうね曲がっている。
白い着物に黒いブーツを履いた背中に、わたしは思わず声をあげる。
「お兄ちゃん!」
「……俺は、そんなブラコンの妹をもったつもりはねーんだがな」
刀を止められた高杉が、さらに笑みを強める。
「銀時ぃ……」
同時に、甲高い悲鳴が響いた。高杉の刀に気づいてだろう。悲鳴はどんどん連鎖し、人がさらに混乱を増して逃げていく。
――まずったな……。
このままいけば、真選組がここに来るにも時間の問題だろう。この状況、見られてどう説明する?
わたしは舌打ちした。
「行けよ」
銀時は、背中越しに短くそう言う。
「テメェが俺の妹でいてぇなら、久々に俺にも、お兄ちゃんらしいことさせてくれや」
高杉が刀に力を入れる。が、銀時もそれに負けずと、こぶしを固く握って動かさない。
血が吹き出る。
「銀時ぃ、てめぇはまた俺の恋路を邪魔するつもりか?」
「邪魔もなにも、昔っからテメェはストーカーしてるだけじゃねーか」
銀時は空いている片手で、自分の木刀を抜き、わたしに投げ渡す。
「任せたぜ、桜」
「……うん」
わたしは素早く、邪魔なたこ焼きを銀時の肩越しに高杉へと投げつけた。空いた手でその木刀を受け取り、すぐさま身を翻す。
「おいおい高杉よぉ、好きな女にたこ焼き投げつけられる気分はどーよ?」
爆音に紛れて、銀時があざけて笑う声が聴こえた。
その木刀は、ずっしり重い。
持ち手の部分には『
「どっかのお土産?」
鼻で笑って、わたしは戦場へと辿りつく。
数日前に見た大きなロボットが、それぞれランチャーなど武器を持って暴れているようである。火薬はさほど込められていないのか、火力は音や見た目ほど強くはないらしい。
しかし、鍛えられた真選組といえど、自身の二倍以上ある金属の巨体を刀一本で相手するのに、なかなか苦戦しているようである。
その中で、一際活躍している二人がいた。
「祭りをぶち壊すなんざァ、天誅くれてやらァ!」
「祭り大使が天罰下すアルよー!」
射的屋で暴れていた二人である。気が狂ったように二人はロボットを、斬っては投げ、斬っては殴り。
「うわー、ほっといても終わりそうねー」
出番はなかったかな、と苦笑した時である。
ステージ上の一番大きなロボットが、バズーカをやや上に構えていた。隣にいる老人は、ロボットと一緒にみた男。このロボットの作成者なのだろう。そのからくり師が指を差す先は、櫓の上。
わたしは叫ぶ。
「総悟くんっ! わたしを上に!」
「あぁ? だからてめぇ呼び方……」
わたしのやりたいことに気づいたのか、チャイナ少女が先に沖田の頭を踏み、跳躍した。わたしもすぐさま走り、沖田の頭を踏んで、跳ぶ。
爆音。
空中で、チャイナ少女がニコリと笑った。
「銀ちゃん、お前が生きてて良かったって、泣いてたアルよ」
そう言って、彼女はわたしの足を持ち、思いっきり上へと投げ飛ばした。
樹をも超えた高さで、わたしは体勢を整える。大きな黒い弾丸が目の前へ来た時、わたしは木刀を一閃した。
爆発。
衝撃と爆風に身を任せて、櫓の中で転がり込む。
「きゃぁぁぁぁあああああああ!」
ついこの間も聞いた悲鳴に安堵しつつ、わたしはすぐさま起き上がり、櫓の縁から見下ろすと、ステージの上へと駆け上がる一人の白い侍。
「お兄ちゃんっ!」
わたしは木刀を思いっきり投げる。くるくると回りながら飛んでいく木刀を、その侍は一瞥することもなく受け取り、巨大なロボットを横に薙ぎ払った。
「ふぅ」
わたしが一息吐くと同時に、
「さささ……桜ちゃん!」
かわいい声に呼ばれて、わたしは振り返った。目をぱちくりさせているそよ姫と、精悍な顔を少し困らせている将軍に、わたしはしばらく考えたあと、持っていたものを差しだした。
「お土産に、溶けた林檎飴と、ひっくり返っているゴールデンカブトムシ持ってきたんだけど、いる?」
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『高杉はストーカー』
もとから犯罪者だから、いいですよね?