「はぁぁぁぁぁああああああ」
わたしは深い、深いため息を吐いた。
将軍たちに簡単に挨拶してから、逃亡。幕府の人にも、真選組の人にも見られないように夜道を駆けずり回り、朝。
開店したばかりの団子屋の椅子に座り、今に至る。
疲れた……。
その一言に尽きる。
あの祭りでの出来事を説明しろと言われたら、なんて言えばいいのだ。
過激派攘夷浪士首領が元婚約者で、よりを戻そうと迫られているところを、兄に助けられ、その兄も実は昔、異名を持っていた攘夷浪士で、わたしは昔は攘夷活動やら攘夷浪士討伐とかあちこちで暗躍してたけど、今や将軍とその妹君の友達です――
「誰が信じるっていうのよ……」
「そのちゃっかり将軍と友達になっちゃうのが、とても俺は貴様らしいと思うがな」
――あら、口に出てたかな。
顔をしかめながら、その言葉に、わたしは横を向く。
ちゅんちゅんと小さく跳ねる
昔から変わらない独特の雰囲気に、わたしはお決まりの声をかけた。
「あ、ヅラだ」
「ヅラじゃない、桂だ――すまぬが、団子二皿頼む」
堂々と名乗るその姿に、わたしは苦笑する。
「うん、知ってるよ――久しぶりだね、小太郎さん」
「いきなりだけど、小太郎さん。こんなとこで油売っていると、捕まっちゃうよ? 一応、反幕府
「一応ではなく、事実だがな」
「今日、お巡りさん多いと思うよ? 危ないよ?」
「祭りであんな惨事のあった翌日に、真選組が捕えていた女が逃亡したとあったら、そりゃ多いだろうな」
「う……」
事実を言われて、言葉を詰まらせる。
桂の頼んだお団子とお茶が届いた。一皿勧めてきたので、わたしは有り難く頂戴する。
茶色のとろりとした密がかかったみたらし団子を、ぱくり。もちもちとした弾力を味わうたびに広がる甘みが優しい。飲み込んだあとに、渋いお茶を飲むと、胸がすっとする。ふとお茶の表面をみると、茶柱が立っていた。
空を見る。今日も晴天。雲ひとつない。きっと一日中いい天気だろう。まだ気温もさほど高くないが、もう少ししたら、また真夏日和だろう。
ふと、わたしは思い浮かんだことを口にした。
「そういやさ、小太郎さん、髪切ったんだね」
桂はお団子を呑みこんでから返答する。
「好きで切ったわけではないんだがな」
「また伸ばすの?」
「そのつもりだ」
わたしがお茶をもう一口すすると、桂は言ってきた。
「貴様も髪短くしたんだな。女が思い切ったもんだ」
「人命かかってたからね……そういえば、誰も髪の話してくれなかったな」
「そうなのか?」
「高杉も何も言わなかったし、お兄ちゃんにも言われたなかったし、総悟くんも言わなかったな。他の隊士たちには勿体ないって騒がれたけど」
「長い髪にこだわりあったのか?」
「いや、別に」
「まぁ、髪型なんてそんなものだ。貴様自身に変わりがなければ、見た目など特に気にするに足りん要素だ――なぁ、銀時」
気づいてはいた。というか、目の前に立たれて気づかないわけがなかった。
「おー、邪魔するぜ。おねーちゃん、俺にも団子ひとつ!」
そう言って、坂田銀時がわたしの隣に座った。