わたしは、団子をまた一口食べる。
――な、何しに来たの?
もしゃもしゃしながら、微笑を浮かべて表情を動かせない。
桂と、銀時。
この二人が、何を目的に、こんな朝からわたしを取り囲むのか。
まさか、昔話に花を咲かせたいわけでもあるまい。
わたしは恐る恐る口を開こうとするよりも早く、銀時が口を開いた。
「あー、その、なんだ」
照れくさそうに、こみかみを掻く。
「こないだは、悪かった」
謝罪されて、わたしは瞬きを何回かした。銀時は固まるわたしを見て、言葉を続ける。
「あれだ、三日前、
「あぁ……」
工場の前で、再会した時のことを謝罪しているらしい。わたしが生半可な返事をすると、銀時は訊いてくる。
「身体の方は、大丈夫なのか?」
わたしは頷いた。
「うん。筋力が衰えた感じがあって、今ひとつ調子は出ないけど……日常生活を送る程度なら、平気」
正直、沖田救出の時の打撲がまだ完治はしていないのだが、余計な心配をかけるだけなので、黙っておく。嘘はついていない。
「そうか」
銀時は運ばれてきたお茶をすすった。
桂が相手をしていた雀が飛び立った。青い空までは届かないけれど、懸命に道を飛び越えていく。
「神楽――俺が一緒にいるガキ共に、お前のこと説明した。ただ、幼いころ兄妹のように育った奴で、訳あって生き別れていたってだけなんだが……そしたら、二人に怒られたよ。どうして真選組に預けたのか、そして、どうしてあんな態度取ったのかってな」
困ったように言うそぶりに、わたしは苦笑した。
「その神楽ちゃんって子に、言われたよ。わたしのために泣いてくれたんだってね」
「あぁ?」
銀時は目を見開いたのち、さらに顔をしかめて舌打ちした。
「たく……余計なこと言いやがって……」
「ありがとね」
「……なんで礼を言われるんだか」
「いい仲間に逢えて、よかったね」
笑って、言う。すると銀時はまた驚いた顔をしたが、優しく笑って、
「……あぁ」
短くそう答えた。ちらりと隣の桂を見る。彼もお茶をすすりながら、微笑んでいた。
わたしは食べかけのお団子を皿に置いて、両手をあげて、身体を伸ばした。
「あーあ。なんだか気が抜けちゃったなぁ」
のんびりした朝である。呑気にお団子とお茶を飲んでは、両手に男をはべらせてお喋りだ。
さっきまでが嘘みたいだ。気を張って、逃げ回って。行く場所がないと、帰る場所がないと途方に暮れて。
それでも、いいじゃないかと思う。
「あ、そうだ。高杉どうしたの?」
「たこ焼きで汚れたのが気に食わなかったらしく、あれからすぐに帰ったさ」
「そっか。ナルシストも相変わらず大変だね」
「ほんとだな」
お団子食べて、お茶を飲む。
――美味しい。
思うのだ。
こうして、お茶する相手がいるだけで、なんて光栄なことなのだろうか。
こんなわたしと。
裏切って、仲間を斬り捨てたわたしと。
お茶をしてくれる人がいるなんて、こんなわたしからしてみれば、充分恵まれているのではないかと。
澄んだ空を見ていると、ふと涙が出そうになる。が、零れ落ちないように我慢する。
そんなわたしに、銀時はさらに手を差し伸べてくれる。
「お前さえよければなんだが……俺のとこに来ないか?」
銀時は、まっすぐわたしを見て、そう言った。