続いて、桂も言う。
「俺もそれを言いに来ていてだな。桜、昔のことが気に病むのなら、俺の所に来てもいい。知っての通り攘夷浪士なんて荒くれ者の集まりだが、幕府などに監視されるよりも、居心地はいいと思うぞ」
両者の有り難い申し出に、わたしは思わず噴き出してしまった。
笑いを誤魔化すため、お茶をすする。
「オイ、ヅラ。お前の所って、完璧こいつにまた攘夷浪士になれってことじゃねーのか?」
「ヅラじゃない桂だ」
そう言って、桂は最後の団子を食べた。
「にょーいのーひにはれは、ほうほうとはほってはるほほほ……」
「食ってから喋れや」
桂はごくんと飲みこんでから、再び話しだす。
「攘夷浪士なら、堂々と刀が持てる。奈落だろうが、高杉だろうが、こいつを守るための武器も人員も、揃えられるからな。それに、強要するわけではないが、桜さえその気になってくれれば、戦力としても有り難いし、女が入ることによって、隊士の士気も高まるだろう。双方にとって悪い話ではないと思うが」
「けど、そんな組織に入ったら、より一層幕府から狙われちまうんじゃないか? なにより、女一人がそんな男だらけの集団っつーのは……」
桂は団子の串で銀時を指した。
「銀時よ。貴様はいつまで桜を子供扱いしているのだ。シスコンや過保護も大概にせんと、愛想尽かされるのがオチだぞ」
「ばっ……そーゆーつもりで言ってんじゃねーよ。一般常識言ってるだけだろーが」
銀時は自分の腿に肘をついて、頬杖をつく。そして、横目でわたしを見た。
「ま、そーゆーわけだ。桜、お兄ちゃんたちはお前を心配してんの。昔みたいにとはいかんが……ま、あんま自分追い詰めんな」
桂も皿に串を置いて、隣にお金を数枚並べて、言う。
「そうだな、貴様は自意識過剰すぎる。髪のことと同様、妹の一度や二度の失敗をフォローできないのは、俺らの落ち度でもあるんだ。思いあがるな。誰も貴様のことなど責めておらん」
――あぁ……。
わたしは両手で顔を覆って、うつむく。
「なによ、二人揃って……わざわざ説教しにきてんじゃないわよ……」
そのままの体勢で、声を震わせないように、言う。
ずるい。
本当にずるい。
この人たちは。
「てか、ヅラ。いつまでそのビミョーな髪型続けてんの? いっそのことツルっぱげにして本当にヅラ着けたらどうだ?」
「ヅラじゃないカツラだ。てか俺のことより、貴様、桜の髪について何も言ってないらしいじゃないか。女ごころが傷ついたようだぞ」
この馬鹿兄貴たちは、こんなわたしにとって――
「え? そなの? そんな乙女のシンパシー的な感情持ってたの、こいつ?」
とても最低で。
「あー確かに昔は長かったか……けど、いいんじゃねーの? 動きやすそうで」
とても最高な――
「けど、お前にはもう、飼い主いるんだっけ?」
「え?」
わたしが顔を上げると、
「ちぃぃぃぃぃじょぉぉぉぉぉねえぇぇぇえこぉぉぉおおおおお!」
地響きのような怒声をあげて、走って来る男がいた。
スパッと刀を抜いては、わたしの首についている輪を持ち上げて、その刀を突き付けてくる。
「この痴女猫が! いつ誰が俺様の許可なくほっつき歩いていいと言ったんだっ!」
いつもサラサラしている髪が、べとついているようだった。頬も泥で汚れていて、目の下にはうっすらクマが出来ている。
「しかもテメェ、俺の顔を思いっきり踏むなんざ、いい度胸してるじゃねーか。どんな調教されたい? 針か? 蝋か? 鞭か?」
「そそそ……総悟くん……くるしぃ……」
「だからその呼び方やめろ何度言えばわかるんでィ」
沖田は刀を納めると、手早くわたしの首輪に鎖をつける。
「じゃ、旦那。お騒がせしやした」
「おう」
銀時が片手をあげる。
わたしはただ引きずられるだけだった。
「ね、総悟くん、いきなりさ、こんな鎖引きずって、どこ行くの?」
「決まってんだろ。帰るんでィ! とりあえず、帰ったら、もう迷子にならねーよー鈴を着けてやらァ。感謝しやがれ」
どうやら、わたしに拒否権はないらしい。
けど、
「ま、いっか」
わたしは大人しく、自分の足で歩くことにする。
あのいつも澄ましているような少年が、あまりにも泥だらけで、汗だくだったから。
任務をさぼって祭りを楽しんでいるような少年が、そんな必死に一晩中わたしのことを探したのかと考えたら、なんだかとても可愛くて。
まぁ、わたしの捜索も任務には違いないのだろうが、それでも、まぁいいかな、と思う。
きっと、なるようになるだろう。
「またな」
振り返ると、銀時がへらへらと手を振っていた。桂はもういない。沖田が来る直前に隠れたのだろう。
だから、わたしも手を振り返す。
「うん、またね」
銀時は眠そうな目で微笑んだあと、大きなあくびをしていた。
夏祭り篇おしまいです!
いかがだったでしょうか? これで、タイトル通りの話を気兼ねなく書いていけるかな、と作者的には一安心しています。
桜や銀時たちの昔話も、そのうちきちんと整理してわかりやすいエピソードを書いていく予定です。けっこうもうわかるかと思いますが。
とりあえず、次はいよいよ動乱篇にいこうと思ってます。
今までよりも断然長くなるとは思いますが、お付き合いいただければ幸いです。
トッシーに嫉妬する沖田が書きたい!!!
この偽物の銀魂が、少しでも有意義な皆様お暇つぶしになりますように。