偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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朝から甘味を食べると身体がだるくなる③

 続いて、桂も言う。

 

「俺もそれを言いに来ていてだな。桜、昔のことが気に病むのなら、俺の所に来てもいい。知っての通り攘夷浪士なんて荒くれ者の集まりだが、幕府などに監視されるよりも、居心地はいいと思うぞ」

 

 両者の有り難い申し出に、わたしは思わず噴き出してしまった。

 

 笑いを誤魔化すため、お茶をすする。

 

「オイ、ヅラ。お前の所って、完璧こいつにまた攘夷浪士になれってことじゃねーのか?」

「ヅラじゃない桂だ」

 

 そう言って、桂は最後の団子を食べた。

 

「にょーいのーひにはれは、ほうほうとはほってはるほほほ……」

「食ってから喋れや」

 

 桂はごくんと飲みこんでから、再び話しだす。

 

「攘夷浪士なら、堂々と刀が持てる。奈落だろうが、高杉だろうが、こいつを守るための武器も人員も、揃えられるからな。それに、強要するわけではないが、桜さえその気になってくれれば、戦力としても有り難いし、女が入ることによって、隊士の士気も高まるだろう。双方にとって悪い話ではないと思うが」

「けど、そんな組織に入ったら、より一層幕府から狙われちまうんじゃないか? なにより、女一人がそんな男だらけの集団っつーのは……」

 

 桂は団子の串で銀時を指した。

 

「銀時よ。貴様はいつまで桜を子供扱いしているのだ。シスコンや過保護も大概にせんと、愛想尽かされるのがオチだぞ」

「ばっ……そーゆーつもりで言ってんじゃねーよ。一般常識言ってるだけだろーが」

 

 銀時は自分の腿に肘をついて、頬杖をつく。そして、横目でわたしを見た。

 

「ま、そーゆーわけだ。桜、お兄ちゃんたちはお前を心配してんの。昔みたいにとはいかんが……ま、あんま自分追い詰めんな」

 

 桂も皿に串を置いて、隣にお金を数枚並べて、言う。

 

「そうだな、貴様は自意識過剰すぎる。髪のことと同様、妹の一度や二度の失敗をフォローできないのは、俺らの落ち度でもあるんだ。思いあがるな。誰も貴様のことなど責めておらん」

 

 ――あぁ……。

 

 わたしは両手で顔を覆って、うつむく。

 

「なによ、二人揃って……わざわざ説教しにきてんじゃないわよ……」

 

 そのままの体勢で、声を震わせないように、言う。

 

 ずるい。

 

 本当にずるい。

 

 この人たちは。

 

「てか、ヅラ。いつまでそのビミョーな髪型続けてんの? いっそのことツルっぱげにして本当にヅラ着けたらどうだ?」

「ヅラじゃないカツラだ。てか俺のことより、貴様、桜の髪について何も言ってないらしいじゃないか。女ごころが傷ついたようだぞ」

 

 この馬鹿兄貴たちは、こんなわたしにとって――

 

「え? そなの? そんな乙女のシンパシー的な感情持ってたの、こいつ?」

 

 とても最低で。

 

「あー確かに昔は長かったか……けど、いいんじゃねーの? 動きやすそうで」

 

 とても最高な――

 

「けど、お前にはもう、飼い主いるんだっけ?」

「え?」

 

 わたしが顔を上げると、

 

「ちぃぃぃぃぃじょぉぉぉぉぉねえぇぇぇえこぉぉぉおおおおお!」

 

 地響きのような怒声をあげて、走って来る男がいた。

 

 スパッと刀を抜いては、わたしの首についている輪を持ち上げて、その刀を突き付けてくる。

 

「この痴女猫が! いつ誰が俺様の許可なくほっつき歩いていいと言ったんだっ!」

 

 いつもサラサラしている髪が、べとついているようだった。頬も泥で汚れていて、目の下にはうっすらクマが出来ている。

 

「しかもテメェ、俺の顔を思いっきり踏むなんざ、いい度胸してるじゃねーか。どんな調教されたい? 針か? 蝋か? 鞭か?」

「そそそ……総悟くん……くるしぃ……」

「だからその呼び方やめろ何度言えばわかるんでィ」

 

 沖田は刀を納めると、手早くわたしの首輪に鎖をつける。

 

「じゃ、旦那。お騒がせしやした」

「おう」

 

 銀時が片手をあげる。

 

 わたしはただ引きずられるだけだった。

 

「ね、総悟くん、いきなりさ、こんな鎖引きずって、どこ行くの?」

「決まってんだろ。帰るんでィ! とりあえず、帰ったら、もう迷子にならねーよー鈴を着けてやらァ。感謝しやがれ」

 

 どうやら、わたしに拒否権はないらしい。

 

 けど、

 

「ま、いっか」

 

 わたしは大人しく、自分の足で歩くことにする。

 

 あのいつも澄ましているような少年が、あまりにも泥だらけで、汗だくだったから。

 

 任務をさぼって祭りを楽しんでいるような少年が、そんな必死に一晩中わたしのことを探したのかと考えたら、なんだかとても可愛くて。

 

 まぁ、わたしの捜索も任務には違いないのだろうが、それでも、まぁいいかな、と思う。

 

 きっと、なるようになるだろう。

 

「またな」

 

 振り返ると、銀時がへらへらと手を振っていた。桂はもういない。沖田が来る直前に隠れたのだろう。

 

 だから、わたしも手を振り返す。

 

「うん、またね」

 

 銀時は眠そうな目で微笑んだあと、大きなあくびをしていた。




夏祭り篇おしまいです!

いかがだったでしょうか? これで、タイトル通りの話を気兼ねなく書いていけるかな、と作者的には一安心しています。

桜や銀時たちの昔話も、そのうちきちんと整理してわかりやすいエピソードを書いていく予定です。けっこうもうわかるかと思いますが。

とりあえず、次はいよいよ動乱篇にいこうと思ってます。
今までよりも断然長くなるとは思いますが、お付き合いいただければ幸いです。
トッシーに嫉妬する沖田が書きたい!!!

この偽物の銀魂が、少しでも有意義な皆様お暇つぶしになりますように。
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