バイトのきっかけは大抵似たようなものである①
「総悟くんっ! お願い、どーしてもお願いっ!」
「いい加減とっとと諦めろってーんだ」
無常に立ち去ろうとする沖田の足に、わたしはすがりつく。
諦めてなるものか。
ここで諦めたら、わたしはもう生きていけなくなってしまう。
そのまま引きずられると、首輪に付けられた鈴がチリンと鳴る。
わたしはあの浴衣を日常的に着るようになった。しかし、あの騒動で裾がほつれてしまい、自分で仕立て直して、膝くらいの長さになっている。黒いタンクトップとショートパンツを沖田に買ってもらい、その上からあの紺色で桜模様の浴衣を緩く羽織っていた。我ながら、なかなか似合っていると思う。
そんな可愛いわたしを、沖田はそのまま数歩引きずりながら歩いた。
負けじと、叫ぶ。
「ね、お願い。どうしてもわたし、これがないと、君の傍にいられないのよ!」
すると、沖田が止まった。じろりと、わたしを見下して、口角を上げる。
「へぇー、じゃあ言ってみろよ。どうしてコレがないと、俺の傍にいられねェんで?」
わたしは顔を引き締める。説得しなければ。何が何でも、手に入れなければいらないのだ。
大丈夫。わたしがこれを手に入れることは、彼にも大きな利点があるのだ。
きっと、きっと分かってくれる――そう信じて、わたしは言う。
「だって、武器がなかったら、いざって時に総悟くんのこと守れないじゃ――」
最後まで言う前に、わたしが掴んでいた足を大きく動かされた。振り払われて、わたしは二、三回転する。
「てて……もう乱暴ばっかして……」
受け身は取れたので、そんな痛くはないのだが、身を起して畳の上に座ると、沖田がしゃがみこんできて、わたしの首輪をくいっと掴んだ。
再び、鈴がチリンと鳴る。
「テメェ、誰が誰を守るって?」
沖田のこめかみがピクピク動いている。なんでそんなに怒っているのかはわからないが、わたしは気丈に答えることにした。
「もちろん、わたしが総悟くんを守らなくちゃ。総悟くん、わたしの監視するのが任務なんでしょ? つまりは、いつもわたしに付いていなくちゃいけないんだから、それだけ危ない目に遭わせちゃう機会も多いと思うのよ。最近、訓練も再開したとはいえ、さすがに素手というのは厳しいかなって」
ぴきっと、一際沖田の表情が引きつった。
「ほぉー、そりゃあ、アレかィ。俺ァ、お前に守られなきゃならないほど弱いっていうことかィ?」
「総悟くんが強いか弱いか置いといても、年下のコを守るのが大人の役目でしょ?」
「そーかい、勝手にしやがれ」
そう言い放つと、沖田はわたしをぽいっと手放して、スタスタと歩いて行ってしまう。
どうしよう。
どうしたらいいのだ。
わたしは涙が零れることを気にも留めずに、四つん這いで手を伸ばして、叫んだ。
「その古い刀をわたしにちょうだぁぁぁぁぁぁああああああい!」
場所は変わらず、屯所内の一室。今日は朝からこの部屋で武器が販売されていた。どうやら、京都に出張していた人が、特殊なルートでいい武器を格安で仕入れてきたらしく、それを隊士たちに販売しているらしい。沖田も、新しい刀が欲しいとこの部屋に来ては、最新のウォークマン機能付きの刀を買っていた。
新しい刀を買ったのならば、古い刀は用済みだろう。中古として売ろうとしていたから、それならば、わたしに譲ってくれと交渉していたのだ。
それが、あんな結末に終わってしまい――わたしは部屋の片隅でずっと泣いていた。
めそめそと。しくしくと。
非番の隊士たちが、わたしを取り囲んでは、励まそうと声をかけてくる。
「ほら、桜ちゃん。そろそろ泣きやんで」
「沖田隊長だって、悪気があったわけじゃないんだから」
「そうそう、女の子に刀なんて物騒なもん、持たせられないってだけだから。別に、桜ちゃんのことが嫌いで言ったわけじゃないから、な?」
わたしはちょっとだけ顔を上げる。
「でも、みんな刀持ってるじゃん。わたしだってちゃんと扱い方もお手入れの仕方だって、知ってるもん」
隊士の中で、特によく見る顔がいた。
確か名前は、