偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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バイトのきっかけは大抵似たようなものである②

「桜ちゃん、廃刀令って知ってる? 基本的にね、俺らみたいな軍人以外は、刀持っちゃいけないんだよ」

「……そなの?」

 

 鼻をすする。

 

 山崎はへらーっと笑っていた。

 

「そうそう。ずっと俺らみたいな奴らに囲まれていると、ついつい忘れちゃうかもしれないけど……攘夷戦争後、そんな法令が発せられててね。だから、沖田隊長も、桜ちゃんには刀を持たせられないんだよ」

「ふーん……」

 

 廃刀令。それは初耳だった。確かに、江戸の平和を望むなら、悪くない法案なのかもしれない。よくよく思い返せば、桂は攘夷浪士だから例外だとして、銀時は木刀を持っていた。彼のことだから、他にもいろいろと思惑がありそうだが、市民として条例を守ることにも繋がっているのだろう。

 

 ならば、わたしも刀を腰に下げてたら、より一層街で浮いてしまうことになる。

 

 それに第一、治安を守る真選組内で、条例違反を見逃すわけにはいかないだろう。

 

 わたしは刀を持てない。持たせられない。

 

 けど、理解はできても、納得するわけにはいかない。

 

「じゃあさ、わたしはどうやって、総悟くんを守ればいいわけ?」

「へ?」

 

 わたしの質問に、山崎は目を丸くした。他の隊士たちも同じような顔をしている。

 

「刀の扱いだったら、けっこう自信はあるのだけど、素手の格闘戦って、体格的な問題もあって、あまり得意じゃないのよね。今から鍛えたら、それそこ何年って時間かかっちゃうだろうし……あ、わたしも木刀使えってこと? でも、木刀だと切れ味がない分、腕力で補わなきゃいけないから、こないだ使ってみたけど、やっぱりキツイものがあるのよね。あのあと、ジンジン手が痺れちゃったし、一振りが限界だったかな」

「あー……あの、桜ちゃん」

「なに?」

 

 山崎がおろおろして訊いてくる。

 

「桜ちゃんが沖田隊長を守るって……本気で言ってる?」

 

 わたしは躊躇いもなく、頷いた。

 

 すると、隊士たちが一斉に笑いだす。山崎なんて、泣いているくらいだ。

 

「え、ちょっと……何がそんなにおかしいのよ?」

 

 顔をしかめると、山崎が涙をぬぐって言ってくる。

 

「さ、桜ちゃん……沖田隊長、一番隊隊長って知ってる?」

「そのくらいは知ってるわよ? 自分で散々名乗ってるしね」

「うん。一番隊隊長って、ようは、特攻隊隊長なんだ。敵陣を斬り込んでいく役目なの。その隊長には、どんな人がなると思う?」

 

 そんなの、決まっているじゃないか。

 

「一番強い人でしょ?」

 

 山崎は大きく頷いた。

 

「そう、沖田隊長は、この真選組で一番の剣の達人と呼ばれているからね。桜ちゃんが守らなくても、隊長はそう簡単に倒れたりはしないよ」

「けど、まだ十代でしょ? 剣の腕がたつだけで、強いとは限らないじゃない? やっぱり、大人のフォローが必要よ」

「……桜ちゃんも、同じくらいじゃなかったっけ?」

 

 わたしはむくれて、首を振った。

 

「わたしはこう見えても二十三です。見た目で判断しないでください」

「はは……ごめんよ」

 

 まぁ、ずっと眠っていたし、身体は確かに十代のままなのだが、それでも成人しているのだ。一緒にされるのは心外である。

 

「それなのに、どうして総悟くんはあんなに怒るんだろう……」

 

 わたしはぼそっと呟く。子供は大人に守られて当然なのだ。別に、恥ずかしいことではないのだ。

 

 それをあんなに拒絶するというのは、背伸びしているということ。そんなコ、余計に危ないし、ほっとけないじゃないか。

 

「まったく、人の気も知らないで……」

 

 頬を膨らませてそう言うと、隊士たちはくつくつと笑っていた。わたしはそれを目だけで見上げる。

 

 すると、山崎はまた涙をぬぐいながら言った。

 

「いや、隊長も報われないなぁーって思ってさ」

 

 その時、玄関の方から大声が聴こえてきた。

 

「たいへんだー! 副長が……攘夷浪士にやられたらしいぞー!」

 

 その声に、わたしを囲んでいた隊士たちが玄関へと走り出す。わたしも、顔を手で拭って、そのあとを追うことにした。

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