土方の仕事始めは、朝礼から始まるらしい。付き添いということで、わたしは今日初めて同席させてもらっていた。
土方と、各部隊長が一部屋に集まり、昨日の仕事の報告と、今日の予定を次々話していく。
もちろん、そこに沖田もいて。
やっぱり、わたしのことは一視もくれないのだが。
――あんにゃろぉぉおおお!
と、襟首掴んでやりたいのを我慢しつつ、わたしは土方の隣で大人しくしていた。
なにか気分を害しちゃったのなら、わたしが悪いだろう。おねだりしすぎた感は確かにある。
けど、一晩経っても怒ってるなんて、まるで子供じゃないか。まぁ、子供なんだけど。だから、守ってあげなきゃいけないのに。だから武器が欲しいと言っているのに。
「分からず屋……」
ぼそっと呟いて、沖田をじーっと見ていても、やっぱり沖田はわたしのことを見やしない。
そして、わたしの仕事が始まった。
粛々とした部屋の雰囲気に割って入るかのように、携帯の着信メロディが鳴りだす。
それは、立ち塞ぐ敵に乾いた風が激しく吹き荒れちゃっているようなリズムで。
呪文のひとつでも唱えたらあたしのペースになっちゃうようなサウンドで。
「つらいひびもえがおでぴりおどよぉぉぉぉぉぉおおおおお」
わたしは大声で叫んだ。適当に叫んだ。それと同時に、土方のポケットから無断で携帯を取り出し、その電話に出る。
「はい、もしもし土方でございまぁす。はーい、あ、はい、限定版の増版が決まった? はい、じゃあ一つ……いや、三つ予約お願いします。はい、夕方には取りに行きますので。はい、よろしくお願いしまーす」
携帯を切ると、土方と沖田以外の白い目がわたしに向けられていた。それに、わたしは乾いた笑みを返す。
「はは……土方さんに欲しかったアニメのDVDをお願いしてまして……えへへ」
どうも土方は、正気の時と、オタクに魂乗っ取られている時があるらしく、朝礼の様子から、今は正気らしい。切羽詰まったり、感情が高ぶると、オタク魂が出てきやすいと、昨晩話したオタク土方が言っていた。
でも、このわたしの行動に、何も言わない。何も反応しない。しいて言うならば、ちょっと目が輝いていなくもない。
――土方の魂が、どんどん弱くなっている?
横目でそんなことを確認しつつ、わたしは笑顔のまま、また大人しく席に着いた。
ちなみに、昨晩そのオタク土方に、『拙者のことはトシ君と呼んでほしい』と言われたので、わたしは『トッシー』と呼ぶことに決めた。
朝礼が終わると、今度は拷問の様子を観察に行くらしい。
屯所の奥の部分の小屋に、攘夷浪士が捕えられているとのこと。
どうやら、土方は拷問のプロのようだ。
「ほんっと、土方さんの拷問はすごいんすよ! むごくて、残虐で、いっそのこと殺してくださいと言いたくなるようなあのむごさ! もうホントはいろいろいい言葉があるんでしょうけど、ホントむごいとしか言えないほどむごいんす!」
そう嬉々として話す隊士に、土方は淡々と話を切りかえした。
「で、状況はどうなってるんだ?」