偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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仕事は苦労と失敗と誤解されて当然のもの③

「ダメでござる! 桜氏がこの刀に触れてはダメでござる!」

「なんでよ」

「拙者は桜氏を見てたいんでござって、桜氏になりたいわけではないでござる!」

 

 ――あぁ、そういえば……。

 

 トッシーの行動に合点がいったときには、浪士の刃が間近に迫っていた。わたしはトッシーに足をかけて転ばせる。

 

「あべしっ」

 

 トッシーがおかしな呻き声を発するが、無視して振り下ろされる刃を蹴り上げた。回転して宙を舞う刀を一瞥しつつ、わたしは横から突いてくる刀を重心を逸らしてかわす。そのまま相手の手を引っ張って、浪士は前のめりに倒れてきた。その首元にわたしは踵を下ろす。その浪士はトッシーの上に倒れて、

 

「だべしっ」

 

 再び呻き声が聴こえる。

 

 そして他の隊士がまた刀を振りかぶったところで、わたしは落ちてくる刀を受け取ろうとした――が、わたしは急に誰かに引き寄せられた。顔を向けると、落ちてくる刀の持ち主だ。わたしを殴ろうとこぶしを握って。

 

 殴られるよりも前に、反撃しようとした時である。

 

 そいつが、膝から崩れ落ちた。

 

 開けた視界に現れるのは、見知った顔である。

 

「その程度で俺を守ろうなんざ、よく言えるものでさァ」

 

 仏頂面の沖田総悟はそれだけ言うと、すぐさまわたしの横をすり抜ける。振り返れば、浪士の一人が鮮血を散らしていた。

 

 ぐさっと、地面に刀が突き刺さる。

 

「……だから、刀が欲しいって言ったんじゃない」

 

 わたしはそれを引き抜いて、少し離れていたところでうろたえていた浪士に一足で詰め寄った。左から首を狙って一閃。刀身の中心で捕える目前で、止める。

 

「逃げるなら今のうちよ? わたし今機嫌が悪いから、すぐに逃げないと容赦できないけど」

 

 足をもたつかせながらも逃げる浪士に嘆息しつつ、沖田を確認すると、すでに残る浪士は無残な姿で倒れていた。

 

「殺したの?」

「真選組でもねェあんたには関係ないことでさァ」

「なによ、その言い方!」

 

 わたしは刀を捨てて、沖田に詰め寄る。

 

「もうちょっとモノの言い方ってものがあるんじゃないの?」

 

 すると、沖田は冷たい目で答えた。

 

「俺が攘夷浪士殺して、何がいけないんでさァ?」

「何がいけないって、根本的に人を殺しちゃ――」

「俺の、真選組の仕事はこういうことでさァ。別に、あんたに理解しろとは言わねェよ。あんたはただ、真選組で預かっている捕虜みてェなもんだ。そんなあんたに、俺のやること口出しされる筋合いはねェし、ましてや心配や指図される筋合いはもっとねェ」

 

 そして、沖田がわたしに刀を向けてくる。

 

「……俺は命令によっちゃ、あんたを殺すこともあるんだ。あんたは素直に俺らの言うこと聞いてるしかねェんだよ」

 

 その言葉に、わたしは固唾を呑むことしかできなかった。

 

 言われたことが、事実だからだ。

 

 わたしは真選組の仲間でもなければ、彼の家族でもなんでもないのだから。

 

 でも、何かが違うのではないかと、思えてしまって。

 

 今までの、わずか数週間のことだが、そんな他人であるとも思えなくて。

 

 わたしが口を開きかけた時、

 

「だ……だずけで……」

 

 倒れた浪士の下でつぶれている、無様なトッシーの呻き声に、沖田が嘆息した。

 

「まぁ、とりあえず話だけは聞いてやろうか。土方さん」

 

 そういう沖田が、一瞬にやりと笑うのを、わたしは見逃さなかった。

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