次の日から、わたしの監視は日替わりになった。いつも非番だと思っていた山崎にも、仕事がある時があるらしい。
「ZZZZZZZ]
橙色の鮮やかなアフロヘアの隊士は、とにかく異質だった。
「あの……あなたの名前は……?」
「ZZZZZZZ」
喋りかけると、寝るのだ。無論、向こうから話かけてくることはない。
「ふむ……」
――よし、今日は監視がいなかったことにしよう!
そうと決まれば、話は早い。部屋を出ようとふすまを開けると、視界の横から鋼の刀身が伸びてくる。
わたしはそれを後ろに跳躍してかわした。寝ていたはずのアフロは、刀を元の構えに戻しながら、低く身構えている。
――出て行きたきゃ、俺を倒してからにしろってか。
「……お兄さん、一番好きなタイプだわ」
にやりと笑って、わたしも腰に下げた刀を抜く。
昨晩、沖田からもらった刀だ。試し切りにはちょうどいいだろう。
わたしは刃先をアフロに向けて、一瞬。一足で跳んで、アフロの喉元目掛けて、刀を薙ぐ。
――軽い。
思うがままに、抵抗なく動く刀は気持ちがいい。風を斬るようにすべる刃は、アフロの刀に弾かれるも、わたしは笑みを隠せなかった。即座に刀の向きを変えて、振り下ろす。アフロが後ろに退いたため、刃先は畳をすっと斬れ筋を入れた。
わたしはそのまま大きく踏み込み、刀を持ちかえてアフロを突く。アフロは大きく目を開いて――わたしの刀は、橙のアフロの中を突き抜けた。
もちろん、抵抗も歯ごたえもなく、くるくるした髪の毛が少しだけ、畳の上に落ちるのみ。
「けど、やる気がないのに刀抜いたって、わたしはビビらないよ?」
その時、誰かが部屋に入ってきたので、その方向を見ると、
「部屋の中で暴れちゃいけませんっ!」
ゴリラのような大男――局長、近藤に二人して頭にげんこつを落とされた。
その次の日は、まさかの局長自らの監視だった。
「隊士たちばかりにさせるのもズルイのでな。今日は一日楽しく遊ぼう!」
そんな近藤が持ってきたのは、あやとりやおはじき、お手玉だった。
畳の上に広げられた、カラフルなそれらを見つめてから、再び近藤を見ると、彼は満面の笑顔でこちらを見ている。
きっと、わたしが本気で喜ぶと思っているのだろう。
わたしが無表情のまま、おもちゃと近藤の顔を交互に見ていると、近藤は意気揚々と赤いあやとりを手にした。
「ん? 遊び方がわからないかな? どーれ、お兄さんが教えてあげよう!」
得意げに両手に掛けたあやとりを、わたしは刀で一閃する。
はらっと落ちるあやとり。近藤の笑顔が固まるが、すぐに気を直したのか、嘆息した。
「あーあ。ダメだぞー、赤い糸を切るなんて、縁起が悪いじゃないかー」
「縁起が悪いもなにも、ただの毛糸でしょ、それ」
「そうだけど……ほら、恋の赤い糸とかって、女の子好きじゃないの?」
――いったい、わたしを何歳の女の子だと思っているんだ……。
だいたい、もう『女の子』という年でもないのだが。それはきっと何度説明しても、わかってはくれないのだろう。
わたしも嘆息すると、近藤は別の話題を口にした。
「その刀、使いやすいか?」
「え?」
わたしは手に持つ刀を見る。
どこにも名が彫られていないから、特に業物というわけではないだろう。それでも、小ぶりの刀は、筋力が落ちているわたしにも扱いやすい。それに、刀身に細かい傷は多いものの、刃こぼれしている箇所は見受けられず、よく手入れが行き届いている。
「うん。すごく使いやすい」
端的に答えると、近藤は満足したかのように笑った。
「そっか。それな、総悟が小さい時に使っていたやつなんだ」
「ん? お下がり?」
わたしが目を見開くと、近藤はさらに笑う。
「そうそう! 江戸に出てくる少し前くらいに、姉にねだって買ってもらったらしくてな。子供用だなんて本人は文句言ってたんだが、それでもけっこう長い間、後生大事に使ってたんだぜ。まぁ、さすがに真選組として給料もらえるようになって、きちんとしたのを買い直したんだが。それでも、夜によく、それの手入れをしている姿はよく覚えているよ」
「……そんな思い入れのあるものを、どうして?」
わたしが刀を持つ手に力を入れると、近藤は優しく笑う。
「それだけ、桜ちゃんのことが大事なんじゃないかな?」
ふと思ったのですが、この小説、このハーメルンの中でそうとう長い話になりそうです。
だって、まだ動乱篇ですよ?
このあと、ゴールデンカブトムシの回収して、お姉ちゃんの話して、モンハンやって吉原かなぁ……なんて考えていたのですが。
もちろん、そのあともバラガキやら金時やらトッシーも成仏させなきゃいけないし……。
アニメ銀魂はとりあえず終わってしまいましたが、その寂しさを埋めるためにも、こつこつ書き続けていきたいと思いますので、どうぞこれからも、よろしくお願いします。