偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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あれもしたいこれもしたい女の子に見えても④

「こい……ばな……?」

 

 わたしが訊き返すと、妙は伸ばした腕にぱしゃっとお湯をかけた。

 

「近藤さんが、桜さんが悩んでる様子だから、話を聞いてやってほしいって。内容までは聞いていないのだけど、女同士の方がいいだろうってことだから、恋の悩みなのかなって思ったのだけど……違うのかしら?」

「あぁ……ゴリラ的に気を使ってくれたのね……」

 

 俯いて、髪を掻き上げる。いつもよりも、髪のするっと指の間を通って行く。

 

 上目で妙の様子を見ると、穏やかにわたしの様子を窺っているようだ。

 

 ――話して、みるか……。

 

 決して、恋の相談などではないが、悩んでいるのは事実だ。実際にこの妙という女性は十代後半だろう。わたしよりも年下なのだが、普通よりも大人びた雰囲気がある。もしかしたら、何か解決の糸口が掴めるかもしれない。

 

「恋とかじゃなくて、友達とケンカしちゃってるって話なんだけど、いい?」

「もちろん」

 

 淡い期待を込めて、わたしは口を開く。

 

「その友達っていうのが、わたしの面倒を看てくれている年下の男の子なんだけど……」

「あら、ずいぶんしっかりしたコなのね」

「しっかりしてるっていうか、背伸びしてる感じかな?」

 

 苦笑しながら、話を続ける。

 

「恥ずかしい話なんだけど、わたし今お金がなくて。でも、どうしても欲しいものがあったの。服とかはいくらでも買ってくれてたんだけど、それだけはどうしても買ってくれないし、不要になったものすら、くれなくって」

「何が欲しかったの?」

「武器」

 

 少し、妙が眉をしかめる。

 

「それは、危ないからじゃなくて?」

 

 わたしは首を振った。

 

「自分で言うのもあれだけど、わたしこれでもけっこう強い方でね。そのことは、彼も知っているんだけど……」

「どうして、そんなに武器が欲しかったの?」

「彼のこと、守ってあげたくて。わたしのせいで危ない目に遭うこともあるから」

「そう……ケンカの原因はそれだけ?」

 

 わたしは膝を抱えて、再び首を振る。

 

「そのあと、ちょっとしたきっかけがあって、彼が苦手な人と、一緒に行動する機会が増えたの。他の人の話だと、それもどうやら原因のひとつらしいんだけど、どうしてわたしがその人と一緒にいたら機嫌悪くなるのか、わからなくて」

「……その、彼が苦手な人も、男の人?」

「まぁ、一応」

 

 ――極度のオタクだけど。

 

 話がややこしくなるから、それは言わないけれど。

 

 とりあえず、話終えたかなと、妙の顔を見る。妙はわかったとばかりに、手を叩いた。

 

「桜さん、それは、嫉妬してるんじゃないかしら」

「嫉妬?」

 

 訊き返すと、妙は大きく頷く。

 

「そう。男の子って、好きな人が他の男と仲良くしていると、それを口にすることは絶対にしないけど、すごく機嫌悪くなるものなのよ。素っ気なくしたり、冷たく当たってきたりするの。逆効果なのにね」

「ふむ……」

「それと、女の子のほうが守ってあげたいとか言うと、男のプライドが許さないものみたいだわ。たとえそれが年齢どうこう関わらず、どんな小さな男の子だって、女の人は守ってあげたいと思うものなのよ」

「でも、実際にわたしの方が強いと思うよ?」

「そんなの、関係ないのよ。気持ちの問題よ!」

「そうなんだ……」

 

 今の意見を踏まえて考えれば、近頃の沖田の機嫌の悪さは、プライドを損なわれ、嫉妬しているからということになる。

 

 わたしは顎を手に置いた。

 

「なるほど、なかなか的を得た意見だわ――けど」

 

 真面目な顔で、わたしは言い返す。

 

「だとしたら、彼はわたしのことが好きだということ?」

 

 すると、妙はくすくすと笑いだした。目から零れそうになる涙を拭っている。

 

「……なんか、そんなに変なこと訊いたかな?」

 

 不安になって訊くと、妙は首を振る。

 

「いえ――でも、好きかどうかは、本人に直接訊いてみたほうが、いいかもね」

「そっか」

 

 わたしはバシャっと顔にお湯をかけた。ちょっとスッキリした気がする。

 

「ありがとう! 今度会ったら、訊いてみることにする! あーちょっと安心したら、早くアイスが食べたくなってきたなぁ」

「そうね、上がりましょうか」

 

 妙はなぜか、堪えたような笑みを浮かべていたが、特にわたしは気にしなかった。

 

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