気がつけば、入り口に寄りかかるようにして、沖田がわたしを見下していた。
――こいつ、無駄に気配消しやがって……。
気づけばなのだ。気がつかなかったのだ。気付けなかったのだ。
それが、異様に腹が立つ。
そんなわたしのふくれっ面を無視して、沖田は淡々と言った。
「こいつの監視は、すでに近藤さんの許可も得て、信頼できる奴に依頼してありやす。わざわざ邪魔な奴を連れていく必要なんかありやせんぜ」
「邪魔……」
わたしのこめかみがピクピク動くが、沖田はにやりとも笑わない。
代わりではないが、伊東が口角を上げた。
「ほう……ずいぶん用意周到じゃないですか、沖田君。そんなに桜さんを連れていきたくない理由でもあるんですか?」
「んなもん、特にあるわけがねェですが、こいつの監視は俺が引き受けた仕事なんでね。ただ、やることやってるだけですよ」
そう言って、最後に沖田はわたしを一瞥した。
「そういうわけでさァ。これ以上俺の手ェを
なぜだろうか。
言葉は冷たいものの、その目は何かを
そして、さらにさらに翌日。
「ちーっす。依頼を受けた
わたしが、静かになった屯所内の食堂で、少し遅めの朝ごはんを食べていると、気の抜けている白髪の男が現れた。
やる気のない銀髪の天然パーマを、見間違えるわけがない。
頭をぼりぼりしながら、わたしの姿を見つけると、その男は片手を上げる。
「よぉー、迎えにきたぜ」
「お兄ちゃんっ!」
わたしは飲みかけの味噌汁を慌てて置き、坂田銀時に駆け寄った。
「どうした? なんでどうしてお兄ちゃんが白昼堂々こんな所に来ているの?」
「なぜって、だから言ったでしょーが。依頼を受けたの。ここの沖田君から、旅行の間ペットを預かってくれってお金もらったの。しかも前払いで。いやぁ、さすが真選組。役人は金払いが違うねーってわけで、じゃあ行きますよー」
と、銀時に手を引かれる。
「ちょっとちょっと! 行くってどこに?」
慌てるわたしに、まったく動じず銀時は着物の合わせから紙を取り出す。
「局長と一番隊隊長のサイン付き契約書があるの。二人が帰ってくるまで、君は万事屋で預かることになってまーす。じゃあ行くよ? もう行くよ? 桜ちゃんお泊りだかんね。靴下持った? パンツ持った? あ、二食は用意してあげるけど、おやつはうち、酢昆布しかないからね。他のが欲しいなら、自分のおこずかいでちゃんと買ってねー」
「あーもう! 準備もなにも出来ているわけないでしょー! てか、酢昆布ってなに? 渋すぎるでしょ、そのおやつ!」
「あーそれうちの神楽ちゃんに言うと怒られちゃうよー。むしろ怒り通り過ぎて泣いちゃうかもしれないから、禁句でお願いしまーす」
そして、そのまま銀時と手をつないで、誰にも文句言われる時間もなく、屯所から堂々外に出ることになった。
ちなみに持ち物は、昨日伊東からもらったアルバイト代と、沖田にもらった刀一本。それと、切れた赤い首輪だけである。