「いや、五十三番ちょっと待ってくれるかな。今、二次元オタと君たちアイドルオタクは違うって言ったけど、何も違わないよね。敵わぬ恋をしているという点で、何も変わらないよね。それなのに、まるで拙者たちだけが非生産的な下等生物が如くのたまって、君たちがその巻き添えをくらっているという言い方はおかしいよね。訂正してくれるかな」
――トッシーが人生謳歌しまくってるぅぅぅぅうううう!
頭の中で絶叫と賛美が響き渡る。
土方さんついにここまできちゃったよ。まわりのオタク軍団と遜色一つないって範囲に収まらないで突き抜けてるよ。ナンバーワンだよ。淡々とした仏頂面ながらも、とても輝いているよトッシー。いやぁ、たったの四日でよくもここまで成長しちゃったよ。あの鬼の副長の変化の姿に感嘆すら覚えるよトッシー!
と、わたしが頭を抱えている前で、神楽は画面の向こうの新八に声援を送っている。銀時はその姿を呆れて見ていた。
――おや、まだ気が付いていない……?
言うべきか、言わないべきか。
土方のメンツを保つためなら、言わない方が吉だろう。そもそも銀時たちと真選組がどんな仲なのかは知らないが、知り合いなのは間違えない。ならば、クールな土方のキャラを壊すようなことはするべきではないに決まっている。決まっているのだけど――
――言いたい!
その欲望が収まってくれない。一人でこの秘密を抱えるのは重すぎる。むしろ、みんなで笑い飛ばしたら面白そうだな、と一瞬でも頭をよぎらせてしまうわたしは、きっと性格が悪いのだろう。
そう悩ましく、顔をしかめていると、銀時が首を傾げる。
「なに、桜どうしたの? 新八のがあまりに痛すぎて観てられない?」
「いや……ううん、それもそうなんだけど……なんか……えっと……」
――もっと痛い人がいるのぉぉぉぉぉぉおおおおおお!
そんなわたしの苦悩をまったく知らないテレビの奥の人たちは、勇ましく演説を続けていた。
「違うに決まっているじゃないですか! 七番さん、あなたたちの好きなキャラクターは二次元です。想像上の、架空の存在なんですよ!」
「じゃあ、君は君の好きなアイドルと、結婚できるのかな?」
トッシーの鋭い質問に、新八は顔を赤く染めた。
「ななな……なにを言っているんですか! そりゃあ、お通ちゃんと結婚なんてきっと無理ですけど……」
トッシーはうんうんと頷く。
「だよねー。いくら応援したって、どれだけCD買ったって、絶対に結婚できないよねー。だったら、拙者たちと全然変わらないじゃないか」
「でも! 僅かながらそうなる可能性だって――」
「いや、ないよね。絶対ないよね。決して結ばれないんだから、二次元でも三次元でも変わらないよね」
「でも――」
「だから――」
二人の論争は次第に周囲を巻き込み、立ち上がる者も出始めたら――乱闘になるのはあっという間である。
乱闘の中で、一際目立つのがやはりトッシーである。中身があれになっても、身体はやはり真選組副長。動きにキレがあり、無駄がない。
「もしかしてさ、桜、気づいてた?」
テレビを指差す銀時の笑みは乾いており、その指がわなわなと震えていた。
わたしが何回も頷くと、神楽が言う。
「これ、もしかして、土方アルか?」
ちょうどその時、画面は新八の右ストレートにカウンターを食らわす土方のアップが映していた。