鍛冶屋を出るころには、もう日も暮れていた。夜の歌舞伎町はやたらギラギラとしていて、如何わしいお店も多い。
「お、お兄ちゃん……お兄ちゃんもこういうお店行くの?」
「んー、そりゃぁ……妹には言えないことも世の中にはあるさ」
「あるんだ! あるんだ! 下品! けだもの!」
わたしが罵ると、銀時は嘆息して言う。
「あのねぇ、こーゆーお店がないと、世の中欲求不満な男で犯罪だらけになっちゃうからねー。てか、桜ちゃんもいい年なんだから。そんなに純情アピールするような年でもないでしょうに……ほら、神楽ちゃんを見てみ? あんなに堂々と闊歩してるよ」
わたしはぶるぶると震えながら、銀時の腕にしがみついていた。かという、神楽と新八はわたしよりも年下なのに、この往来を堂々と歩いている。
「神楽ちゃんたちは……あれだよ! まだ若すぎて、どういったお店なのかわかってないんだよ!」
「どういった店って、ここいらのはまだ軽いほうよ? キャバクラやホストとか、ようは仲良くお酒飲むだけのところだからね? 桜ちゃんの想像しているようなホテルとかお店はもう一本向こうの――」
「いーうーな! 言っちゃやだぁー! 聞くだけでもー穢されるー!」
「ずっと男所帯で育ってきたのに、どうしてこんなところだけ過敏かねぇ……」
すると、神楽が振り向いてきた。
「桜ちゃん、そんな怖いお店じゃないアルよ。嫌なことされそうになったら、全員ぶっとばせばいいだけアル」
「こらこら神楽ちゃん、人前で物騒なこと言っちゃダメでしょー」
銀時が呆れたように言うが、わたしは何か希望が見えたような気がした。
「そっか。斬ればいいんだね。怪しいお酒やお薬飲まされる前に、やっちゃえばいいんだね! 神楽ちゃんいいこと言うね!」
「そうアル! 私はいいことしか言わないアルよ!」
いえーいと神楽とハイタッチしていると、後ろからついてきていた
「女の子たちがはしゃいでいる姿、萌えでござるな。そうは思わないか、坂田氏。てか、まさか坂田氏にこんな可愛い妹がいただなんて、羨ましすぎるでござるよ。あれか、あれでござるか、坂田氏。やっぱり、お兄ちゃんのえっち! パチン! みたいなハプニングは日常茶飯事なのでござるか!」
「こーいーつー! いきなりよくわかんねーこと頼んで来たかと思えば、急に元に戻りやがって……真選組を守ってくれってなんなんだよ。桜、なんか知ってるか?」
神楽とこぶしとこぶしでじゃれあっている最中に訊かれて、わたしは振り返りながら、軽く回し蹴りを決める。
「今晩から近藤さんが伊東っていう、土方さんと仲が悪い人たちと出張に行くみたいよ」
「それ……その伊東ってのがなんか悪だくみしてんじゃねーのか……?」
神楽はわたしの蹴りを簡単に受け止めて、空いた手でわたしの脇腹を狙ってくる。わたしは後ろに跳躍して、銀時のそばで着地した。
「おまけに、鬼兵隊も絡んでるかもね」
その時、パトカーのサイレンが聴こえた。見ればやはり、真選組の車である。それが、わたしたちの横につけると、隊士たちが一斉に飛び出してきた。
「土方さん! ようやく見つけました! 局長が大変なんです、屯所に戻ってください!」
と、四人がかりでおろおろする土方をパトカーに押し込もうとする。
「ちょ、ちょっと! 拙者は真選組をクビになったんじゃ――」
「何言ってるんですか! 局長が暗殺されそうになってるんですから……」
すると、その隊士たちはそろりと刀を抜いて、
「副長も一緒に、死んでください」
一斉に、刀を振り下ろした。