偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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ほんとの男は惚れてる女に弱いもの⑥

 それに、ただただ茫然とするトッシー。

 

 わたしが、手を伸ばすよりも早く――

 

「なにしてんだテメーはよっ!」

 

 銀時がトッシーの襟首を引っ張る。そのあと下りた斬撃を、わたしは刀で受け止めた。

 

「仲間討ちって、局中法度で禁じられてたよね?」

 

 横に一閃。刀を二本弾いて、残りの隊士は後ろに退く。わたしはすぐさま翻して、銀時たちの後を追った。

 

 路地裏に入る。先頭を走るのは神楽。続いて銀時と引きずられるトッシーに、しんがりは新八となっているようだ。

 

「さささ坂田氏っ! くびっ首が痛いでござるよっ!」

「るせー! 助けてやってんのに文句言ってんじゃねーよっ!」

 

 路地の向こうが、一瞬で明るくなった。車のヘッドライトに照らされて、思わず一瞬目を閉じてしまう。路地の間ぎりぎりを、その車――パトカーがこちら目がけて走って来る。

 

「神楽ぁ!」

「わかってるアル!」

 

 そのパトカーを、神楽は両手でがしっと受け止めた。バンパーにはしわが寄り、前輪がギリギリとカラ回りを続ける。

 

「神楽氏、すごいでござるよ! できればドクタースランプな如くきゅぃぃぃぃいいいんと言いながら――」

「んな冗談言っている暇はねーんだよ!」

「銀さん、後ろから!」

 

 確かに冗談を言っている暇はなく、後ろからもさっきのパトカーが同じように迫ってきて。

 

「桜! できるか!」

「たぶんね」

 

 跳躍して、迫るバンパーに乗る。運転手にニコリと笑みを向けて。容赦なく、フロントガラス越しに運転手の眉間に刀を突き刺した――実際は少し刺さる程度で止めたのだが――ハンドルが無駄にまわり、コンクリートの塀に車体が火花をあげて擦りあげられ、横転。その直前にわたしは飛び退き、前へと走る。

 

「桜っ!」

 

 わたしを呼ぶ銀時は、前からのパトカーの運転席に乗り込んでいた。路地の端では気絶した隊士が転がっている。銀時がエンジンを掛けると同時に、わたしはしわが寄ったバンパーを踏み、車体の上に乗った。バックでドリフトしながら路地を抜け、大通りを無理やり走る。その勢いに、悲鳴があがるのが聴こえたが、わたしは気にすることなく、

 

「桜さん!」

 

 開けられた後ろのドアから伸びる新八の手を取り、車の中に身を滑り込ませた。

 

「ふー危なかったアルなー」

 

 と、全く危機感なく言いのける神楽は、助手席に座っていた。そんな神楽の頭を、銀時が軽く叩く。

 

「たく、力入れすぎやがって。今にも車が壊れそうじゃねーか」

「仕方ないアル。乙女のかよわさで壊れる車がやわすぎるアル」

「ハイハイ。仕方ないこと愚痴る銀さんがわるーございました」

 

 ガタガタと走る車は、それでも明らかに法定速度以上で走っており、何台もの車をびゅんびゅん抜かしていく。

 

「お兄ちゃん、車の運転なんかできたんだねぇ」

「そりゃあ、長年生きてれば特技の一つや二つは増えていくものさ……て、どうしてうちの女どもはこうも呑気なの? 今ってけっこう危機迫っているシーンじゃないの?」

「いやだってさ、新八くんの隣の誰かさん見たら、なんか返って白けるじゃない」

 

 わたしの隣の新八のさらに隣。助手席の後ろに座るトッシーは、頭を抱えてぶるぶると震えていた。

 

「悪くない悪くない。拙者は何も悪くない……」

 

 それだけを永遠とぶつぶつ繰り返している。

 

「こいつぁ、ほんとどーしよーもねーなー」

 

 銀時はため息を吐くと、無線機を取り、ごく自然と話しだした。

 

「こちら三番隊、三番隊。状況報告どうぞ」

 

 ――なぜ三番隊?

 

 運転席を見れば、明らかにわかりやすく、『三』と書かれた板がかかっていた。

 

 ――どうも真選組って、抜けてるわよね。

 

 だからこうして偽物の無線にも、騙されて答えるのだ。

 

『土方は無事に見つかったか?』

 

 自然に応えてくる男の声に、聞き覚えはなかった。銀時の持つ無線機を神楽が奪い、喋り出す。

 

「えー土方は見つかりましたが、ちょー可愛くて強い味方がいたため、敵わなかったアル。どうぞ」

『アル?』

 

 銀時がまた神楽の頭をぽかっと叩くが、スピーカーの向こうの人は気にせず一人語る。

 

『まぁいい。早く土方を殺して、保護人を捕えろ。近藤と土方、両者始末しなければ、真選組は伊東派とふたつに割れてしまうからな――伊東派が真選組を掌握するには、両者とも攘夷志士にやられたことにせねばならん。まぁ、近藤はもう成功したも同然だ。すでに列車は発車し、乗り込んだ隊士は全員こちらの手の物。あとは時間の問題だ』

「保護人?」

 

 神楽から無線機を取りかえし、銀時が訊く。

 

『貴様は任務を忘れたのか? 真選組で預かっていた桜とかいう女のことだ。傷つけることなく鬼兵隊に引き渡せとのことだったが、さっき命令がかわってな――腕の一本くらい、なくてもいいそうだ。手荒な手段でかまわん。女の一人や二人、早急に捕えろ』

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