列車が土手沿いの線路を走っている。夜もどっぷり深まり、真っ暗な空には三日月がぶら下がっている。
夏が終わろうとしている夜の風は、心地よかった。ほのかに香る草の匂いに包まれて、寝転んだらさぞ気持ちよかろう。
だけど、寝転ぶわけにはいかないのだ。
寝転ぶときは、死する時か。
さぁ、戦えと、神楽が傘の銃砲を撃ち鳴らした。
「御用改めである!」
「テメーら、神妙にお縄につけ!」
威勢よく、銀時も高らかに木刀を掲げる。
身につけているのは、皆、真選組の黒い制服。車の中にあった予備の制服はサイズが大きいものの、折ったり止めたりして、わたしも何とか着こなせた。気合付けに、髪も一つに結う。
「沖田総悟ちゃんの再来ね」
一人苦笑し、わたしも車の窓から身を乗り出した。ちなみに、運転は新八に代わっており、彼は懸命に両手で運転をしている。この中で一番必死な顔をしているのは彼であろう。
そして、走る車の上に片膝をついているのは、真選組副長、土方十四郎。
「あわわわ、無理、無理でござる! 落ちるでござる!」
「るせー! テメーはちっと格好つけることもできないのか!」
しかし、彼はすぐ丸く頭を抱えてしまい、尻を銀時にバスーカで叩かれている。
彼をそこに置いた理由は、アピールである。
敵に対しては、威圧するため。
味方に対しては、
銀時が車の中に戻り、舌打ちした。
「なんだ、攘夷志士か?」
前方にはバギーのような車やバイクがたくさん走っていた。皆、バスーカやマシンガンを装着してそうで、いくつかの銃口がこちらを向いている。まだ少し距離があるからか、銃弾はこちらへ届いていない。しかし、かなり新八もアクセルを踏んでいるので、それも時間の問題だろう。
対して、後方には、まだかなり距離があるものの、何台ものパトカーが見えた。赤い提灯が
皆、守りたいもののために戦おうとしているのだ。その怒声とサイレンは、ただただ我らの局長を守りたいと全力で叫んでいる。
「お、いたいた」
わたしは、並走する列車を確認した。列車内でもなにかトラブルがあったのか。前の方を走る列車と、今並走している列車のふたつに離れていた。
「敵があの前の方の列車に向かっているアル。きっと近藤もあそこにいるはずネ」
神楽がその列車を指差すが、わたしの探していた相手は隣の列車。
大勢の敵に対面している、沖田総悟。敵の中には、あの伊東の姿も確認できた。伊東は窓を開け、こちらを見ては驚いたような顔をしている。
それに対して、沖田は、鼻で笑っているようだった。しかし、わたしと目が合うやいなや、すぐに顔をしかめてしまう。
――あんにゃろー……。
わたしは沖田に思いっきり舌を出してから、新八に言う。
「前に向かう前に、隣の列車に車を寄せて!」
「隣? 近藤さん助けに行くんじゃないんですか?」
「それは副長と
わたしはドアを開け、身構える。
「わたしは、馬鹿な飼い主もどきに訊きたいことがあるの」
すると、神楽が言う。
「あのサド野郎の心配なんて、優しいアルな」
「そりゃ、年上のお姉さんだからね」
片目をつぶって答えている間に、車はガタガタと過剰に揺れながら、土手の斜面を上がっていく。その間に列車が少し前を走る形となると、少し前方で伊東が列車からバイクに乗り移っていた。バイクを運転する男は何かの楽器を背負っているようである。
「あいつは……」
「知り合いなの?」
銀時の呟きに尋ねると、彼は首を振った。
「なぁに、おめーが気にすることじゃねーさ」
そう言って、わたしの背中をバンと叩く。
「行って来い!」
「任せとけ!」
わたしは、列車に跳び移った。