周りでは、真選組同士が戦っていた。まぁ、服装が同じだからそう見えてしまうものの、真選組と攘夷浪士なのだろうが。しかし、一見真選組の隊士たちが戦いあって、そこらに血を出しては死んでいる。
火も上がり、煤と、火薬と、血の匂いはせせらぎも洗い流せない。
戦いは地上だけでなく、空からはヘリコプターが銃弾を雨のように降らせている。
そんな中、沖田が無事に近藤たちの元へ辿りつけるかどうかは、信じるしかない。
――大丈夫。
そう言い聞かせて、わたしは前を見据えた。
「さて……いい加減しつこいと、本気で嫌いになるわよ」
わたしは空いている手を腰に置く。
「ほぉ。つまり、まだ俺のことは嫌いでないってことか」
言われて、ため息を吐いた。
「そりゃあ……ずっと一緒にいた、幼馴染ですからねぇ」
「じゃあ、幼馴染からでもいいから、一緒に来ねぇか?」
「別に、攘夷活動したいとは思わないので」
「なら、お前が帰ってきてくれたら、もう攘夷活動しないと約束してもいいんだぜ?」
平然と、簡単に言ってのける高杉を、わたしは吐き捨てるように笑った。
「だったら、自分で作ったお米持ってきてから、プロポーズしなさい」
「百姓か……そんな人生送れたなら、俺も幸せになれたかな?」
高杉は、笑いながら、煙管をふかす。
「まだ、遅くないと思うけど?」
「もう遅いに決まってるだろ。俺の手はもう、幸せを掴むには汚れすぎてるさ」
「それ、わたしに対して言う?」
「だから言うのさ――一緒に不幸になろうぜって」
そして、高杉は煙管の灰を捨てると、それをしまった。代わりに持つものは、もちろん刀だ。
問題は、ここからだ。
このまま、会話だけで高杉が引き下がってくれるか――否。
ならば、大人しく高杉に付いて行くのか――そんなつもりは、さらさらない。
戦って、退けられるか――自信がない。
――八方ふさがりってやつ……?
そんな絶望感を悟られないように、わたしはとりあえず口角を上げておく。
高杉と遭遇して三回目。今までは銀時だったり、土方だったり助け舟があったものの、今回も二度あることは三度起こるか。
「言っておくが、いくら時間を稼ごうとも、誰も助けちゃくれねぇよ? 銀時や真選組の奴らは軒並み手が離せないだろうし、桂もここには来てねぇみたいだからな」
――なんか読まれてるしっ!
ずっと腕を上げていたせいか、はたまた心境によるものか、刀の切っ先が揺れる。
「さっきの小僧に、助けてもらえば良かったんじゃねぇか? 二人がかりなら、逃げることくれぇ出来たかもしれねぇぜ?」
「年下の男の子に助けてもらおうなんて、恥ずかしい真似できるわけないでしょ?」
「怪我した足手まといを逃がしただけと、違うのかい? それが分かっているから、小僧も大人しく退いたんだろうよ――お前も大概、お人好しだな。あいつを盾にすりゃ良かったんだ」
「やっぱり、訂正するわ」
覚悟を決めて、刀を両手で持ち直す。
「あなたのことは、嫌いよ。高杉」
わたしは身を低くして駆けた。高杉の足を払おうと刀を振るうが、それと同時に上段から振り下ろされる。
「ずいぶん動きが遅くなったじゃねぇか」
即座に頭の上に構えなおして、その刀を受けた。ギンっと衝撃が全身に走り、わたしは片膝を着いてしまう。
「力も弱くなったな。それとも、そのまま押し倒してほしいのか?」
――長年誰かさんが眠り姫にしてくれてたからでしょうに!
軽口を言いかえしてやりたいものの、そんな余裕はなく。わたしは歯を噛みしめながら、刀の向きを変える。高杉の刀を滑らせて、そのまま彼の顔を目がけて横に薙いだ。一歩下がることで避ける高杉。間を入れずに、わたしも踏み込み、刀を振るうも――
「弱い」
下から打ち上げられた一閃に、わたしの刀が弾かれた。上空を回転する刀身が月明かりで輝く。
が、わたしは即座に、手のひらを突き上げた。顎を押し上げると、一瞬高杉がよろめく。そして、わたしは跳び上がった。空中で刀を掴みながら回転しつつ後方に着地し、振り返りざまに腰を目がけて刀を振る。
「戯れは、こんなもん満足か?」
その刀は、斬る寸前に動かなくなった。高杉が後ろでに掴んでいる。微動だにしない。
わたしが刀から手を離そうと判断した時には、高杉の刀の柄で、みぞおちを突かれていて。
「腕の一本構いやしねぇと命令したが、やっぱり無理だったな」
膝が崩れ、砂利の上に唾を吐く。
「お前を傷つけるだなんて、出来ねぇよ、桜……」
悲しげなその声を最後に、視界が黒くなった。
動乱篇も、どうにか四月中には終わりそうです。
長くなるなぁと覚悟していたものの、見事に一カ月かかりました。
お付き合い、ありがとうございます。
この場を借りて、真選組、伊東ファンの皆様、ぜんぜん出番を作れず申し訳ありません。
この裏では鉄橋で落ちる伊東を近藤が助けたり、さらに落ちそうになるのを、駆け付けた沖田が支えたりしているつもりです。そして土方が鉄橋の上から跳び下りてヘリコプターの敵を一閃――とカッコいいシーン、高杉出したため、書けなくなってしまいました。
原作沿いのタグ、外したほうがいいのかな?と悩みながら、続きも書いていこうと思います。