偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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ほんとの男は惚れてる女に弱いもの⑫

 周りでは、真選組同士が戦っていた。まぁ、服装が同じだからそう見えてしまうものの、真選組と攘夷浪士なのだろうが。しかし、一見真選組の隊士たちが戦いあって、そこらに血を出しては死んでいる。

 

 火も上がり、煤と、火薬と、血の匂いはせせらぎも洗い流せない。

 

 戦いは地上だけでなく、空からはヘリコプターが銃弾を雨のように降らせている。

 

 そんな中、沖田が無事に近藤たちの元へ辿りつけるかどうかは、信じるしかない。

 

 ――大丈夫。

 

 そう言い聞かせて、わたしは前を見据えた。

 

「さて……いい加減しつこいと、本気で嫌いになるわよ」

 

 わたしは空いている手を腰に置く。

 

「ほぉ。つまり、まだ俺のことは嫌いでないってことか」

 

 言われて、ため息を吐いた。

 

「そりゃあ……ずっと一緒にいた、幼馴染ですからねぇ」

「じゃあ、幼馴染からでもいいから、一緒に来ねぇか?」

「別に、攘夷活動したいとは思わないので」

「なら、お前が帰ってきてくれたら、もう攘夷活動しないと約束してもいいんだぜ?」

 

 平然と、簡単に言ってのける高杉を、わたしは吐き捨てるように笑った。

 

「だったら、自分で作ったお米持ってきてから、プロポーズしなさい」

「百姓か……そんな人生送れたなら、俺も幸せになれたかな?」

 

 高杉は、笑いながら、煙管をふかす。

 

「まだ、遅くないと思うけど?」

「もう遅いに決まってるだろ。俺の手はもう、幸せを掴むには汚れすぎてるさ」

「それ、わたしに対して言う?」

「だから言うのさ――一緒に不幸になろうぜって」

 

 そして、高杉は煙管の灰を捨てると、それをしまった。代わりに持つものは、もちろん刀だ。

 

 問題は、ここからだ。

 

 このまま、会話だけで高杉が引き下がってくれるか――否。

 

 ならば、大人しく高杉に付いて行くのか――そんなつもりは、さらさらない。

 

 戦って、退けられるか――自信がない。

 

 ――八方ふさがりってやつ……?

 

 そんな絶望感を悟られないように、わたしはとりあえず口角を上げておく。

 

 高杉と遭遇して三回目。今までは銀時だったり、土方だったり助け舟があったものの、今回も二度あることは三度起こるか。

 

「言っておくが、いくら時間を稼ごうとも、誰も助けちゃくれねぇよ? 銀時や真選組の奴らは軒並み手が離せないだろうし、桂もここには来てねぇみたいだからな」

 

 ――なんか読まれてるしっ!

 

 ずっと腕を上げていたせいか、はたまた心境によるものか、刀の切っ先が揺れる。

 

「さっきの小僧に、助けてもらえば良かったんじゃねぇか? 二人がかりなら、逃げることくれぇ出来たかもしれねぇぜ?」

「年下の男の子に助けてもらおうなんて、恥ずかしい真似できるわけないでしょ?」

「怪我した足手まといを逃がしただけと、違うのかい? それが分かっているから、小僧も大人しく退いたんだろうよ――お前も大概、お人好しだな。あいつを盾にすりゃ良かったんだ」

「やっぱり、訂正するわ」

 

 覚悟を決めて、刀を両手で持ち直す。

 

「あなたのことは、嫌いよ。高杉」

 

 わたしは身を低くして駆けた。高杉の足を払おうと刀を振るうが、それと同時に上段から振り下ろされる。

 

「ずいぶん動きが遅くなったじゃねぇか」

 

 即座に頭の上に構えなおして、その刀を受けた。ギンっと衝撃が全身に走り、わたしは片膝を着いてしまう。

 

「力も弱くなったな。それとも、そのまま押し倒してほしいのか?」

 

 ――長年誰かさんが眠り姫にしてくれてたからでしょうに!

 

 軽口を言いかえしてやりたいものの、そんな余裕はなく。わたしは歯を噛みしめながら、刀の向きを変える。高杉の刀を滑らせて、そのまま彼の顔を目がけて横に薙いだ。一歩下がることで避ける高杉。間を入れずに、わたしも踏み込み、刀を振るうも――

 

「弱い」

 

 下から打ち上げられた一閃に、わたしの刀が弾かれた。上空を回転する刀身が月明かりで輝く。

 

 が、わたしは即座に、手のひらを突き上げた。顎を押し上げると、一瞬高杉がよろめく。そして、わたしは跳び上がった。空中で刀を掴みながら回転しつつ後方に着地し、振り返りざまに腰を目がけて刀を振る。

 

「戯れは、こんなもん満足か?」

 

 その刀は、斬る寸前に動かなくなった。高杉が後ろでに掴んでいる。微動だにしない。

 

 わたしが刀から手を離そうと判断した時には、高杉の刀の柄で、みぞおちを突かれていて。

 

「腕の一本構いやしねぇと命令したが、やっぱり無理だったな」

 

 膝が崩れ、砂利の上に唾を吐く。

 

「お前を傷つけるだなんて、出来ねぇよ、桜……」

 

 悲しげなその声を最後に、視界が黒くなった。

 




動乱篇も、どうにか四月中には終わりそうです。
長くなるなぁと覚悟していたものの、見事に一カ月かかりました。
お付き合い、ありがとうございます。

この場を借りて、真選組、伊東ファンの皆様、ぜんぜん出番を作れず申し訳ありません。
この裏では鉄橋で落ちる伊東を近藤が助けたり、さらに落ちそうになるのを、駆け付けた沖田が支えたりしているつもりです。そして土方が鉄橋の上から跳び下りてヘリコプターの敵を一閃――とカッコいいシーン、高杉出したため、書けなくなってしまいました。

原作沿いのタグ、外したほうがいいのかな?と悩みながら、続きも書いていこうと思います。
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