偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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この気持ちが恋でないならきっと世界に恋はない①

 

 ◆◇◆◇◆◇◆

 

 どんなに栄えたお家でも、潰れるのはあっという間だ。

 

 死ねば、それで終わりなのだ。

 

 家族みんなが死ねば、それで終わり。

 

 どうして、こうなったのか――子供だったわたしは、知るよしもなかったが、栄えれば栄えるほど、恨みを買うのは簡単である。

 

 一家暗殺。

 

 そんなものは、よくある話だ。

 

 商家が武芸に長けているわけもなく、十数人の侍に夜、襲われたら、悲鳴をあげることしかできない。

 

 初めに死んだのは母だった。見せしめのように、首が飛んでいた。血が吹き上がる様が、思いの外鮮やかで、こうも派手に死ぬことが出来るのかと、幼い頃のわたしは薄情な感銘を受けていた。

 

 次に、召使いたちがあっという間に息絶えた。

 

 そして、逃げていた父が情けない姿で殺された。失禁し、色々なものを垂れ流した姿は、今まで偉そうにしていた父親の記憶の中で、一番情けない姿だった。

 

 押し入れに隠れていた弟が殺された。最期まで泣いていて、ぱたりと声が聴こえなくなった。

 

 そして、全てを強制的に見せられたわたしの番。どうして悲鳴をあげないのかと、何回も殴られ、蹴られた後の結末。

 

 目に入る光景全てが赤かった。

 

 血は乾けば黒くなるが、量が多すぎたのか、錯覚だったのかはわからないが、すべてが赤く見えた。

 

 侍が、刀を構え、にたりと嗤う。

 

 ――あ、死ぬんだ。

 

 残虐な光景の中で、わたしは安堵を覚えた。

 

 ようやく、わたしの番が来たのだ。

 

 ある侍の悪趣味で一番最後になったが、ようやく、この光景を見ないで済むのだ。

 

 一番最初に殺された母を妬んでいたくらいだ。

 

 とっくに、生き延びることを諦め、死ぬことに喜びすら感じたのに。

 

 わたしを斬ろうとした侍が、血を噴き出して倒れた。

 

 代わりに現れたのは、白く小さな少年だった。

 

 ぼさぼさの銀髪が所々赤く染まっていた。質素な服を着た少年が不釣り合いな刀を構えていた。

 

 その刀にも、もちろん血がついていて。

 

 少年が言う。

 

「大丈夫か?」

 

 わたしは言う。

 

「どうして、死なせてくれなかったの?」

 

 少年がぼりぼりと頭を掻く。

 

 そして、その少年は困った顔のまま、わたしの頭をぽんぽんと撫でた。

 

「助けられる奴を助けて何が悪い」

 

 撫でてくる手が思いの外温かくて、心地好かった。

 

「じゃあ、どうしてみんなを助けてくれなかったの!」

 

 目から、何かが溢れてくる。

 

「どうして、もっと早くに来てくれなかったの! どうして、わたしだけ助けたの! どうして……」

 

 わたしは彼の手を両手で掴んだ。

 

「どうして、わたしを独りにするの……」

 

 彼は、一瞬顔をしかめ、少しだけ笑った。

 

「じゃあ、お前が一緒にいたい人が出来るまで、俺が一緒にいてやるよ。大したことは出来ないけれど……それが、この償いでいいか?」

 

 不器用な笑顔がへらーっとしていて、正直頼りなかったが。

 

 わたしは、この顔を絶対に忘れない。

 

 不条理に自分を戒めた、彼の愚かな償いを忘れない。

 

 不器用な優しさを、忘れない。

 

 わたしを助けてくれた白夜叉に抱いた想いを、わたしは絶対に忘れない。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

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