偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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この気持ちが恋でないならきっと世界に恋はない⑤

 右から、左へ。

 

 動いたわたしの頬に触れると、熱を帯びていた。

 

「ん……けっこう痛いよ?」

「殴ったんだから、当たり前でィ」

 

 咄嗟のことで思考が追いつかないものの、ぽけっと訊く。

 

「なんで、殴られたの?」

「そんなのテメェで考えろ」

「わからないから、訊いているのだけど?」

 

 即答すると、沖田は項垂れるように嘆息した。

 

「敵の位置を確認しようと、窓から見上げてみりゃ、アンタが落ちてきてるんでさァ……どうやったら、あんなことになるんでィ」

 

 ――あぁ、そのことか。

 

 わたしがヘリコプターから飛び降りたことを怒っているでらしい彼に、かいつまんで説明する。

 

「高杉に捕まっちゃったところ、みんながマシンガンに襲われているようだったので、飛び下りてみました。どうやらあいつ、わたしに怪我させたくなかったようなので、撃つのやめるかなぁっと……」

「へぇ……」

 

 顔を上げた沖田の目が、冷たく光っているように見えた。

 

「で? あの高さから生きて着地できる見込み、ちゃんとあったのかィ」

「総悟くんは、わたしの身を案じてくれていたのかな?」

「いいから答えろ」

 

 短く言われて、わたしは一瞬顔をしかめるが、

 

「それは……」

 

 顔の横で、軽く両手を握った。

 

「猫は着地が得意だにゃん」

 

 そして、くいっと首を傾げる。

 

「――で?」

 

 しかし、沖田の反応はますます険しくなるだけだった。

 

「いや……えーと……総悟くん、よくわたしのこと猫扱いするからさ……それで……あーもうごめんなさいっ! 何にも考えてませんでしたよ! でも大丈夫だったでしょ、無事にこうして、怪我ひとつしてないんだから!」

 

 いたたまれなくなって、叫ぶわたしに、沖田も怒声を返す。

 

「そりゃあ、全部旦那のおかげだろうが! 旦那が近くにいなかったら、誰も助けてくれる人がいなかったらどーするつもりだったんだ? 死ぬつもりだったのか? あぁ?」

「それは……」

 

 口ごもる。

 

 死ぬのも、ありかもしれない。

 

 そう一瞬でも考えたのは、事実だから。

 

「ちったぁ……人の気持ちも考えてくれ……」

 

 小さく呟いたその言葉に、わたしは思わず笑みを浮かべた。

 

 心配されることは。

 

 助けられることは。

 

 やっぱり、嬉しいものだ。

 

「ありがとう――わたしも、総悟くんが無事で、よかったよ」

 

 そう言うと、沖田がどこか恥ずかしそうに舌打ちして。

 

 その時、土方の声が響く。

 

「総員に告ぐっ! 敵の大将は討ち取った! もはや敵は統率を失った烏合の衆――一気に畳み掛けろっ!」

 

 奥を見れば、列車の前で刀を掲げたのち、敵陣に突っ切っていく土方と近藤の姿。

 

 大将とは、万斉のことだろう。倒れた万斉を隊士たちが取り囲んで、縄できつく縛っているようだ。

 

 ――本当の大将は、ちゃっかり逃げてるけどね。

 

 高杉の乗っていたヘリコプターは、いつの間にか見えなくなっていた。しかし、それを今言うことが野暮だということは、さすがにわかる。士気を高めて、戦場を勝利で治めるのだ。

 

 盛り上がる戦場を見て、沖田も歩を翻した。

 

「頼みがある」

 

 腰の刀に手をかけながら、彼が言う。

 

「もしも、本当に俺らが無事なことを喜んでくれてるのなら……アイツに礼を言ってやってほしい。俺らは……言えねェからな」

「あいつ?」

 

 わたしの疑問符には答えずに、そう言うだけ言って、彼は敵陣へ駆けていく。刀を抜くと同時に、倒れる敵の数は増えていった。

 

 ――怪我、大丈夫そうね。

 

 彼の動きに安心しつつ、わたしはもう一人、わたしのために怪我をした男を探す。

 

 銀時は列車の上で胡坐を掻いて、へらへらとこちらに手を振っていた。

 

 わたしは、肩を押さえる動作をして、首を傾げる。

 

 彼は大丈夫だとばかりに腕を回そうとして――やっぱり痛かったらしい。肩の怪我を押さえて、大きく顔をしかめていた。怪我はひどいようだが、命に別状はないらしい。

 

 わたしは苦笑を返して、列車の中を見る。

 

 すると、神楽と新八が、深刻な顔をして、誰かに話しかけているようだ。

 

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