ブームの時期を逃すからこそ楽しいことがある①
カブトムシ。
わたしの記憶では、それは夏に繁殖する生き物である。
鈴虫もずいぶん前に鳴くのをやめ、森の木々がほんのり黄色がかってきた頃に、探す生物ではなかったはずである。
そう――今は、秋なのだ。
「それなのに、どうして我々はこんな大所帯で虫取りをしてるんでしょうか?」
問題提起をする。
見上げて、わかってはいたことだが愕然とする。
なんて、この男は、不格好なんだろうかと。
これでも、第一印象はカッコいいなと思った男の子なのだ。
すぐに残念だと認識を改めたりしたが、それでも、真選組一番隊隊長という立派な肩書きも持っているし、それに負けない剣の腕も持っている。頭のキレもよく、心の内ではすごく仲間想いの優しさも持ち合わせた、かなり高スペックな少年なのだ。
そんな少年が、カブトムシの着ぐるみを身にまとい、大樹にしがみ付いているのだ。
「みーん。みーん。そりゃあ、散々言っているじゃねェかみーん。将軍様の命令で国宝、
ご丁寧に、鳴き声付きである。
そんな彼の着ぐるみでまるまるとしたおしりを見上げながら、わたしは会話を続けた。
「その瑠璃丸ってカブトムシ……本当にそんな真選組総出で探すほどの価値があるものなの? カブトムシでしょ?」
すると、彼は急に顔をこちらに向けて、くわっとした凄まじい形相で睨んできた。
「カブトムシを馬鹿にするんじゃねぇ! 角と角を合わせて行われる熱い戦いに血を掻きたてられない男はいねぇだろーが! しかも瑠璃丸は陽の光を浴びると黄金色に輝くと言われる絶滅危惧種! そんなロマンの塊である瑠璃丸を手に入れたら、サド丸二十八号として俺のサド戦士たちのリーダーとして君臨するのサ!」
「ねぇ、返す気ないよね? 将軍に返す以前に、横取りする気まんまんだよね?」
サド丸って名称だったり、そもそもわたし男じゃないし、とか、色々突っ込む気すら起きずに、わたしは嘆息した。
そして、その木のふもとに腰を下ろす。
上を見上げれば、木々の隙間から見える空の青さが綺麗だった。暑くもなく、寒くもない。まさにピクニック日和な一日を、森で過ごすのは、決して悪いことではない。
「お弁当でも作ってくればよかったなぁ……」
そう呟きながら、欠伸をする。
そもそも、どうしてこんなカブトムシ捜索をすることになったのか。
そもそも、どうして将軍がカブトムシ捜索の命令を発したのか。
それは、わたしが原因だった。
☆★☆★☆★☆
「桜ちゃん……ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
昨日の夕飯時、食堂で沖田とごはんを食べていると、近藤が神妙な面持ちで尋ねてきた。
「夏祭りの時にさ、何か将軍様に渡したもの、なかった?」
「しょーふん?」
豚の生姜焼きを頬張りながら、首を傾げると、わたしは対面する沖田に膝を蹴られた。
「もぐもぐしながら喋るんじゃねェって、何度言えばわかるんでィ」
「ほへんはさい……」
もう一回蹴られつつ、わたしは口の中の物を飲みこんで、お茶を一口。
そして、もう一度近藤と顔を合わせる。
「夏祭りって、あのカラクリ大暴走の時のあの時だよね?」
「あぁ、あの時、桜ちゃん一瞬だけど、将軍様と会っているよね?」
「えぇ、