思い起こせば、カラクリから撃たれた砲弾を斬った後で、将軍とその妹君と会っている。
その時、いきなり転がり込んだわたしを心配する二人を誤魔化すため、あげたものは……。
「確か、林檎飴とカブトムシをあげたけど? なに、もしかして、そよちゃんお腹壊しちゃったとか?」
姫様に屋台の飴など、刺激が強かっただろうか。散々持ち歩いたものだし、正直埃とか硝煙とか被っていたかもしれない。
わたしがあげたもので、姫君が体調を崩したとなれば、下手したら切腹ものである。その前に暗殺を疑われて拷問もあるかもしれない。
いや、まだそれならいい方だ。
わたしの手からお箸が落ちる。
「どどどど……どうしよ、近藤さん……わたし、そよちゃん殺すつもりなんてぜんぜん……」
「死んでないから! そよ姫むしろ最近友達がまた増えたって喜んでるって話だから、むしろ問題なの将軍様の方だから!」
「しょう……ぐん?」
近藤の言葉に、わたしはまた愕然と口を開く。
「も……もしかして……将ちゃんカブトムシで怪我しちゃったとか? その傷が化膿して細菌が全身にまわり今危篤状態に……」
「どうして桜ちゃん、すぐに殺しちゃう方向で考えるかなぁ?」
嘆息する近藤に、わたしは即答した。
「だって、世の中デットオアアライブじゃない」
ねぇ、と沖田に同意を求めると、彼は付け合わせのもやしをむしゃむしゃと頬張りながら、こくりと頷く。
「おー、よく覚えたじゃねェか、桜。褒美に、今晩の訓練はアンタの好きな
「やったー! もう足がもげるほど走ったり、腕がちぎれるほど腕立てしたり、窒息するほど息をひそめたりしなくていいのね!」
両手を挙げて喜ぶわたしに、沖田がくつくつと笑う。
「ほぉ、ずいぶんと余裕じゃねぇか。もしかしたら、死遭いで足の腕も心臓も全部失うかもしれねェんだぜ?」
それに、わたしも口角を上げて答えた。
「あら、その台詞、そのままお返しするわよ? 舐めてかかってると、今日こそ死に恥さらしてやるわ」
「へへへへへ」
「ふふふふふ」
黒い笑みをお互い浮かべて、わたしと沖田はまた晩餐を再会する。
近藤はそんなわたしたちを見降ろしながら、
「えーと……訓練に勤しむのは感心なものだが、あの、死なない程度にね? 仲良くね? 詳細は敢えて訊かないことにするけどさ……」
助言のようなことを口にして、仕切りなおさんとばかりに咳払いをした。
「将軍、桜ちゃんがあげたらしいカブトムシを嬉々として飼い始めたんだけど、すぐに死んじゃったらしいんだよね」
「あらら、そっちがデットオアアライブ……」
わたしはお茶碗を持ちながら、適当に返す。お箸で生姜焼きを掴み、ご飯の上に置く。そして肉ごとご飯を掴み、口に運んだ。
――美味い!
咀嚼しながら、考える。
屋台で売っている着色されたカブトムシ。子供の夢を壊すようだが、寿命が短いのは明白であった。
「そうしたら将軍、ひどく落ち込んだようで」
そのような運命を、将軍は立場ゆえの常識のなさで、きっと知らなかったのだろう。
「もしも、カブトムシの様子を友が観に来たら、友になんて示しをつければいいのかと嘆いたらしいんだよね。もう、職務が一切手に付かなくなるほどに」
やっぱり、友達想いな将軍である。