偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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暇だからこそ昔話が盛り上がる①

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 江戸とは遠くて、小さい田舎町にも、その町を取り仕切る商家があって。

 

 わたしは、そのお家の長女として生まれた。

 

 三つ年下の弟がいて、彼はいつかお家を継ぐのだと、勉学と武芸の両方に勤しむ一方、わたしはよい花嫁に、と手芸やお花に琴など、花嫁修業ばかりの毎日。

 

 わたしは弟が羨ましかった。

 

 外のことを知り、そして外を走りまわる様を、わたしはいつも屋敷の中で、見ているだけだった。

 

 そんな、どこにでもいるお嬢様。

 

 許婚も、同じ町の武家の長男と――という、政略結婚。

 

「桜――彼が将来の旦那になる、高杉晋助君だ。挨拶なさい」

「はい……」

 

 八つにも満たない子供にそんなことを言われても、何の関心も持てなかった。

 

 しかし、父の言うことは絶対なのだ。

 

 わたしは両手を畳の上に置き、頭を下げる。

 

「お初にお目にかかります、しんすけ様。さくら、と申します。まだ未熟ではありますが、たかすぎ家のお役に立てますよう、こんいんまで精進しますので、今後ともよろしゅうお願い申します」

 

 事前に母から教わった通りに言って、顔を上げると、

 

「うわぁ……ほんとにあの子だ……」

 

 ただ、その許婚の少年が、ぽかんと口を開けて、わたしのことを見つめていた。

 

 そのわたしよりも五つくらい年上の少年が、その父親に頭を殴られた。

 

「コラ晋助、間抜けな顔をしおって……大変申し訳ない、この子はずっと桜さんを可愛い可愛い言っておってなぁ。こうして縁談がまとまり、一番喜んでいるのが、コイツなんだよ。これでもっと武芸だけでなく、勉学にも励んでくれればいいのだが……」

「いやはや、こちらも高杉様と懇意にすることが出来て、嬉しく思ってますよ。娘もこんなに好いてくれるところに嫁げるなんて、幸せなこともない――なぁ、桜?」

 

 父に促されて、わたしは笑顔で「ハイ」と答えておいた。

 

 ――気持ちわる。

 

 そんな内心は、必死に隠して。

 

 わたしはまだ子供だったのだ。対して、相手はわたしからすれば大きなお兄さんである。

 

 そんなお兄さんが、自分を見ては顔を赤くしてじーっとこちらを見てくるのだ。

 

 気色悪いの一言である。

 

 今で言うなら、ただのロリコン野郎でしょ?

 

 その後、将来の夫婦二人でと庭で遊んできなさいと言われ。

 

 庭に出ても、その少年は変わらずわたしを見ているだけだった。

 

 ――もうちょっと、リードして欲しいものよね。

 

 年上に対して期待するものの、無駄と悟るのは早い。

 

 わたしは、落ちていた長めの枝を少年に渡す。目を丸くしながら彼が受け取ると、わたしも同じような枝を両手で持った。

 

「けんどー、得意なんですよね? 教えてください」

「へ? あの……え?」

 

 驚く少年を、わたしは真っすぐに見上げる。

 

「女にはひつよーないからって、おとーさま武芸は何も教えてくれないの。でも、生きていくためには強さもひつよーでしょ? それこそ、おさいほーやおりょーりはいるだろうけど、お花や舞いなんてほうが何のためになるのか、わからないじゃないですか」

「で……でも、女の子がそんな危ないことを……」

「やっぱり、あなた、つまらない人ですわね!」

 

 そう言いきると、少年は明らかにショックを受けたような顔をしていた。

 

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