しかし、わたしは日頃の
「あまんとだかなんだか知りませんが、どんどん世の中ぶっそーになっているのに、どうして女が強さを求めてはいけないの? 女はどうして家にこもっていなきゃいけないの? 琴をひけば世界は平和になるの? お花をいければ誰も泣かないの?」
「ぼ……僕は、桜ちゃんの琴を弾く姿見ると……すごく幸せな気分になるよ……?」
泣きそうな顔で言ってくる少年に、わたしは一言で返す。
「なんで?」
「なんでって……綺麗だからさ。嫌なことを全部忘れられるくらい君の姿が――」
その瞬間、少年が大きく、わかりやすく、枝を上から振りかぶった。わたしは驚きながらも、両手で枝を持ち上げて、下される枝に枝を合わせる。
かつん、と軽い音が鳴った。
「じゃあ、いつか桜ちゃんが泣いちゃうくらい綺麗だと思えるものを見せてあげる! そして、自分に強さなんていらないと思えるくらい、僕が――俺が強くなって、どんな悪い奴からも桜ちゃんを守ってみせるよ! そうしたら……そうしたら、俺とけっ、けっ……」
彼の声も、手も震えていた。しかし、唾を飛ばしながら、言いきる。
「結婚してくれる?」
そして、父親の怒声が上がる。少年は怒られるものの、不服そうな顔をするだけだった。
その後、彼はより一層、勉強をさぼり始めて、通っていた塾も退学になってしまったらしい――が、それはわたしの知ったこっちゃない。
☆★☆★☆★☆
「おいおい、知ったことだろーが。アンタのその捻くれた考えのせいで、一級犯罪者が生まれたんじゃねェーか?」
「え? なにそれ。わたし悪いの?」
沖田の半眼に、わたしは嫌な汗を掻きながらも、視線を背けた。
――そうかなぁ? でも、誰も攘夷浪士になれだとか言ってないけどなぁ……。
確かに、その後から、彼の着物が派手になったりだとか、言葉遣いが気取った感じになったり、道場破りを始めた噂がたったり、奇行がますます目立ち始めたらしいが。
「うん……やっぱり、わたしは関係ないよね。うん」
そういうことにして、一針進めつつ、また話し始めた。
☆★☆★☆★☆
そんなありきたりのお家が、よく潰されるのもありふれたことで。
商売で恨みを買い、難癖付けられて家を焼かれ、一家虐殺。
よくある話が、まさか自分の身に降りかかるとは中々思えなかったけれど、本当に起きるからこそ、よくある話なのだ。
そんな中、助けてくれたのが、銀時だった。
同じ町の手習い所にいた少年が、先生と共に、わたしを助けてくれた。
助かったのは、わたしだけ。
銀時はその時すでに親を亡くしていて、その先生の世話になっていたのだけど、その先生が、わたしのことも同じように世話してくれることになった。
そうして、わたしと銀時が兄妹になって、少し経った頃――
「先生、どうしてわたしにはけんどー教えてくれないんですか?」
なよっとした線の細い男の人だった。長身で、髪も長くて、肌も白い。風になびかれれば、そのまま折れてしまうような風貌だった。だけど、子供十数人に一気に襲われても、瞬きする間に、全員を無傷で叩き伏せてしまう――そんな強くて、優しい人だった。
そんな先生に、わたしは誠心誠意、頭を下げた。
しかし、その先生は首を振るだけ。
「どうしてですか? わたしが女だからですか? せんせーも、女は武器なんて持つなと言うんですか?」
「女性には武器なんて持ってほしくないとは、思うけどね……」