偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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暇だからこそ昔話が盛り上がる③

 その問いにも、先生は首を振った。

 

「私が君に剣を持たせない理由は、性別ではないよ。君が復讐を考えているからだ。復讐からは、悲しみしか生まないよ? 君の人生はこれからだ。そんな人生を、君には歩んでほしくない」

「そんな、ありきたりな言葉、求めてないです」

 

 この先生の瞳は、どうしても思い出すことができない。

 

 いつも、笑っているか、髪で隠れているのだ。

 

 わたしは、まっすぐに先生の顔を見ていたものの、先生がどのような顔をしていたのか、思い出せない。

 

「これから、わたしがどんな風になるのかなんて、わたしにはわかりません。でも――殺したい相手がいるなら、殺したい」

「それが――」

「守りたい相手がいるなら、守りたいし、やりたいことがあるなら、やりたいの――でも、そのためには、力がいる。お金はもう、ない。権力もない。なら、わたしが今、一番持てる可能性があるのは、力だと思う」

 

 わたしは、先生の帯を掴んだ。

 

「どうじょーがある。そして、こんなに強いせんせーがいる。一緒に競う仲間がいる。この機会を逃すほど、愚かなことはしたくない!」

「……それが、子供の言うことですか……」

 

 先生はそう呟いて、小さく笑った。

 

「そこまで言うのなら、チャンスをあげます。三か月以内に、私に一太刀でも浴びせてみなさい。いつ、どんな手を使っても構いません。それが出来たのなら、きちんと、あなたに稽古をつけましょう」

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

「なぁ、オイ。旦那は出てこねェのかィ」

「えへへ。これから」

 

 わたしは肩をすくめて笑う。すると、また沖田の半眼が返ってきた。

 

「さっさとその話をしてほしーんだが? こちとらだって、暇じゃねェーんだ」

「だったら、木に掴まりながらでもいいよ? ミンミン鳴きたいのなら」

 

 すると、沖田がいそいそと動きだした。どうやら、カブトムシの着ぐるみを脱ごうとしているらしい。

 

 ――おや、ようやく恥ずかしい自覚が出たかしら?

 

 背中のファスナーを下そうと、手を後ろに回して――バタバタしている。

 

 上からまわして、バタバタ。

 

 下からまわして、バタバタ。

 

 いったん休んで、バタバタ。

 

 わたしはジーとそのファスナーを下した。

 

「……余計なことすんじゃねェーよ」

 

 赤面しながら口を尖らせる沖田に、わたしはこう言いかえした。

 

「総悟くんが山崎に用意させたその着ぐるみ、山崎に泣きつかれて、わたしが作ったものだから。余計だったかしら?」

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 次の日から、わたしは先生のあとを付いてまわった。

 

 武器はやっぱり枝だ。

 

 寝起きを攻めてみた。

 

 食事中に襲ってみた。

 

 トイレから出た瞬間を狙ってみた。

 

 もちろん、寝ている時にも殴ってみた。

 

 しかし、すべての攻撃を、

 

「ぜんぜんですね」

 

 と笑顔でかわされてしまった。

 

 そんなことをしていると、一か月なんてあっという間に過ぎてしまった。

 

 ――どうしよう……。

 

 先生が道場で、他の生徒の稽古をつけている姿を、わたしは隅に座ってじっと見ていた。

 

 武器の持ち方も、真似てみた。

 

 すり足も、真似てみた。

 

「小太郎は、いつも回りが見えてないですね。見えるものが全てではないことを、理解しなさい」

 

 そういう、先生が生徒の指導することだって、全て覚える覚悟で耳を澄ませている。

 

 それなのに、なぜ一回も当てられないのだろうか。

 

 その時、わたしの頭にコツンと何かが当たる。

 

 見上げると、銀髪の少年が、つまらなそうに枝でわたしの頭を叩いていた。

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