偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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信頼はこぶしで掴みとれ③

 マヨネーズの量は半分くらい。使いかけである。

 

 わたしはそのマヨネーズを取り、赤いふたを開ける。口の部分は予想通りのプリティ星マーク。

 

 それをばくっとくわえた。持つ手に力を入れると、ぶちゅうっとマヨネーズが飛び出してくる。

 

 口中に広がるまろやかな甘み。鼻に抜ける爽やかな酸味。喉を通るねっとり感がそのまま身体全体に広がっていく。次第に酸味は甘みに負け、甘みはねっとり感に負け。これ以上ないくらい贅沢に油を堪能する。

 

 ずずずっと口をすぼめて吸って、吸って、吸って。

 

 ぶふあぁっと、わたしはそれを完飲する。

 

「ご馳走様でしたぁっ!」

 

 わたしは空になったマヨネーズの容器を、土方に投げつける。それを彼は、片手で受け取った。隣の近藤はあんぐりと口を開いて間抜けな面をしている。

 

 身体がだるい。重い。すべての関節にねっとりと油がまとわりついている気さえする。胃の中には油しかなく、消化酵素は間違いなく死滅したことだろう。

 

 それらを全て受け止めて、立ち上がった。

 

「さぁ、土方。表へ出なさい!」

 

 わたしは、土方に指を突きつけた。

 

 

 

 若干松やら植えられているシンプルな庭には、刀を持って立ち回るには充分な広さがあった。

 軒下に集まるギャラリー多数。みんな真選組の黒い制服を着た男たちが、好奇心やら心配やらの目でわたしを見つめていた。

 

「おいおい、副長が女の子とやりあうなんてマジかよ」

「あんなひょろっちぃ子、刀なんて振れるのか?」

「しかも、すごくひもじそうな子じゃないか」

「まさか鬼の副長にこんな趣味があるとはなぁ、弱い者いじめはしない人かと思ってたんだけど」

「なぁ。ちょっと幻滅だよなぁ」

「う、る、さ、い、ぞ、おまえらぁー!」

 

 野次を土方が一喝して。

 

 土方は木刀を構え直す。

 

「本当に、いいんだな?」

「もちろん」

 

 正直言えば、男用の木刀がちょっと重い。ずっと寝ていたから、筋肉の衰えがあるみたいだ。

 

 あんまり長い間打ち合えないな、と覚悟を決めつつ、わたしも構える。

 

 立ち会いは近藤だ。

 

「では、刀を相手の身体に当てた段階で、勝利とする。トシ、わかってるな?」

「あぁ、もちろん手加減するさ」

 

 ――舐められたものねぇ。

 

 人の話を聞いていなかったのだろうか。わたしは奈落に必要とされている殺人兵器だったことを――

 

「よーいっ、はじめっ!」

 

 近藤が手を振りおろしたと同時に。

 

 わたしは駆けた。一瞬で土方の胸元に近づき、下から木刀を振り上げる。

 

「おっと」

 

 土方が後ろに跳躍しながら、口角をあげたのが見えた。

 

 わたしはもう一歩踏み込みながら、木刀を下す。が、それは相手の刃で流された。

 

「へぇ、お前さんけっこうやるじゃねぇか」

「喋ってると、舌噛むわよ」

 

 わたしはまた一歩。木刀の柄をみぞおちに打ち込もうと踏み込む。

 

 土方は高く跳躍した。わたしの頭上を飛び越え、振り向きざまに一閃してくる。

 

 木刀同士が、ばしんっと打ち合った。反動を利用して回転しながら蹴りを出すも、かわされる。

 

 土方の切っ先が目の前にあった。顔を逸らすと、びゅんっとした音が鼓膜を揺るがす。

 

 わたしは木刀を手放した。

 

「なっ」

 

 土方が目を見開くも、わたしは気にせず刀を手放した手を握り、そのこぶしをみぞおちに打ち込む。

 

 土方は若干身を引いたのか、手ごたえはない。しかし、わたしは地面をはねる木刀を踵で蹴りあげ、頭上でそれを受け取り、そのまま打ちおろ――そうとした。

 

 が、わたしはそのまま、うずくまる。

 

「き……ぎもちわるい……」

 

 胃の中からこみあげてくるものに耐え切れず、わたしは吐いた。

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