偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

80 / 134
暇だからこそ昔話が盛り上がる⑤

 わたしは走りながら、枝を大きく振りかぶる。

 

 が、

 

「いーち、にー、さーん……」

 

 カウントを口ぐさみながら、ひょいを身を逸らして避けられた。

 

「やぁ! やぁ!」

 

 同じように、二回、三回と枝を振るも、ひょい、ひょいっとかわされて。

 

「なんで当たらないのー!」

「嘆いてるとあっという間だぞー、にじゅうにー、にじゅうさーん……」

「もー!」

 

 ヤケクソ気味に、わたしは枝を腰に構えて突進し、そのまま枝を突き刺そうとした。

 

 その時、ふと視界に入った銀時の目が、ぎらりと光ったように見えた。

 

 ――殺される!

 

 家族が殺され、自分も殺されかけた時と同じような気迫を感じ、わたしは反射的に足を止める。と、勢いを相殺できず、前のめりにずべーっと転んでしまう。

 

「おい、大丈夫か?」

 

 声をかけられ、顔をあげようとした時、気がついた。

 

 少年の足もとには、枝で書いたような線が引かれていた。その線は、少年のまわりで円を作っている。その円の中では、少年は半歩しか動けないだろう、そんな広さで。

 

 ――ぎんとき、動いてないっ!

 

 カァっと頭が熱くなる。

 

「あと何秒!」

 

 怒鳴るように訊くと、少年は一瞬たじろいだ。

 

「お前、鼻すりむけて痛そう……」

「何秒っ!」

 

 怒気を強めると、少年はまた髪を掻きむしって、

 

「あー、二十秒くらい?」

「わかった! 数えて!」

「でも……」

「数えなさいっ!」

 

 渋々、二十からどんどん数を減らしている少年を確認して、わたしは立ち上がる。

 

 あと、一撃が限度だろう。

 

 わたしは深呼吸した。枝を振っても、半歩でも動かれれば、避けられてしまう。しかし、突進して突こうとしたら、あの気迫――つまりは、その攻撃手段だと、彼は本気を出すのだ。つまりは、本気を出さないと避けられないということ。

 

 円の中から動く気がないのは、今更どうしようもない。

 

 しかし、そこまで手加減されて負けるのは嫌だ!

 

 狙うは相手の胸。小細工出来るほど、頭も、技術も足りない。

 

 わたしは身を低く構え――走った。

 

「八、七……」

 

 ギリギリまで武器は自分の近くで構えたまま、相手にぶつかる勢いで走る。

 

「六、五、四……」

「やぁぁぁぁあああああ!」

 

 あと一歩、というとこで、腕を突きだした。

 

「三、二……」

 

 ふと、手が軽くなる。なぜか、わたしの腕が上がっていた。

 

「一……」

 

 枝が、わたしの持っていた枝が、空をくるくると飛んでいる。

 

 銀時は枝を持って上げていた腕を下した。

 

「俺の勝ちだな」

 

 どうやら、わたしの枝が、少年の手によって弾かれたらしい。

 

 呆気なく、負けてしまったのだ。カランと、枝が転がり落ちる。

 

 わたしは膝を付いた。

 

「負け……ちゃった……」

 

 どうしよう。頭の中がその言葉でいっぱいになる。

 

 先生に敵わない銀時にすら、敵わないのだ。あと経った二カ月で、わたしが先生に勝てる可能性なんて、どのくらいあるのだろうか。果たして、あるのだろうか。

 

 途方に暮れていると、銀時がわたしに手を差し出す。

 

「じゃあ、俺のお願い、聞いてほしいんだけど?」

 

 太陽を背中に浴びて、少年の天然パーマがキラキラ輝いてみえた。

 

「あと二カ月、俺の言うとおりに訓練してくれ。んで、一緒にアイツをぎゃふんと言わせてやろーぜ」

 

 涙を目に浮かべているわたしに対して、銀時は意地悪くにやりと笑っていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。