偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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暇だからこそ昔話が盛り上がる⑥

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

「なぁ、桜」

「ん?」

「これのどこが、恋話(コイバナ)?」

「あ、気づいちゃった?」

 

 わたしはペロリと、舌を出す。

 

「わたしさ、こういった恋の話なんてしたことがなくってさ。何をどう話していいのか、わかんなくって」

「可愛くねェー」

「えー」

 

 糸を針にくるくるっと巻きつけ、針を引き抜く。そして、根元を口で挟んで、八重歯で糸を切った。

 

「さて、チョーカーも無事に直ったし、ちょいとわたしも出かけてこようかな」

 

 膝を叩いて立ち上がると、沖田が座ったまま、ぽけっとわたしのことを見上げていた。

 

「ん、どうした?」

「い……いや、なんでもねェよ」

 

 顔を背ける沖田の耳が赤い。

 

「……はめて?」

 

 わたしは再びしゃがみ、沖田に首輪を渡す。

 

「あぁ……自らはめてもらおうなんて、殊勝なことじゃねェーか」

 

 そういつも通りカッコつけながらも、視線はわたしを捕えていない。

 

「それ、こないだも聞いたね」

「そだっけか?」

 

 ――可愛いなぁ。

 

 口に出したら怒られるだろうから、言わないけれど。

 

 代わりに小さく笑って、わたしは後ろを向き、少し伸びた髪を掻きあげた。

 

 カチッと小さな音がする、今日は彼の手が首に触れることはなかった。

 

「ありがと――じゃあ、行ってくるね」

 

 飛び上るように立つと、チリンと軽やかな音がする。

 

「オイ。どこ行くんだよ!」

 

 慌てて立ち上がる沖田に、わたしは大きく手を広げた。

 

「総悟くん、ここは森よ!」

「それがなんだっつーんだ?」

「そして、蜂蜜がたくさんあるのよ!」

「そりゃ、近藤さんが身体に塗りたくれるくれェ、たくさんあるわな」

 

 わたしはスラリと、刀を抜く。

 

 そして、単語を三つ唱える。

 

「森で、蜂蜜、そして熊」

「……」

 

 沖田の顔が青くなった。

 

「アンタ……まさか……」

「ちょいと修行の一環として、狩ってくる」

 

 構えた刀身が、木々の木漏れ日でキラリと濡れたように光った。

 

「やめろ! 待て、さすがにヤバい! 著作権的にあの夢の国の黄色いクマさんを狩るのはヤバい!」

「だいじょーぶ! 今まで何体も狩ってきたから! 美味しいよ? 蜂蜜食べさせるとお肉が柔らかくなるの、知ってる?」

「だーかーら、待て! いいから待て! ヒロインが夢の国の住人殺害するとか、アンチすぎるから! 世の男の夢を壊すなっ!」

 

 珍しく本気で慌てている沖田に、ニコリと微笑んで。

 

 ――こんなやりとりも、いつか誰かに話す時が、来るのかな?

 

 そんなことを考える。

 

 初めて話した昔話。

 

 今まで、誰にも話したことがなかった昔話。話す必要がなかった思い出。

 

「ねぇ、また夜にでも、話の続き聞いてくれるかな?」

「あぁ? 聞くよ! むしろ今、聞くよ! だから、やめろ! 世界一有名なあのクマを狩るのはやめろ!」

 

 ふふ、と笑って、刀を掲げた。

 

「森、蜂蜜、くまーっ!」

 

 高々と宣言するわたしの声が木霊する。自分で聞いても、とても楽しそうな声だ。

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