偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

83 / 134
夜のバーベキューは危ないからやめましょう②

 木々の隙間から覗き見て、

 

「何してるんだろうね」

 

 簡単な感想を漏らした。

 

 銀髪天パー坂田銀時率いる万事屋銀ちゃんの面々が、焚火のまわりでなにやら騒いでいるようだ。

 

 神楽が銀時を殴った。負けじと銀時も殴りかえそうとするものの、新八が止めようとして、代わりに殴られる。罵られる。そして、新八もキレる。

 

「あーあー、喧嘩しちゃって……」

「いいんだ。もっと揉めろ。そして帰れ。とっとと諦めて帰れ」

 

 隣で喧嘩の応援をしている土方に、わたしは首を傾げる。

 

「諦めるって、万事屋も瑠璃丸狙ってるの?」

 

 土方は頷いた。

 

「瑠璃丸のことは知らないようだがな……どうしてだかは知らんが、ここらでカブトムシを探し回っているようだ。万が一にも、瑠璃丸を捕まえられてみろ。転売されるなら、まだいい方。もしも傷でも付けられようモンなら、真選組の存続にも関わる……」

 

 ――たかだかカブトムシ一匹で壮大な話ねぇ……。

 

 口に出したら、怒られそうだけど。

 

 その時、喧嘩している万事屋に、熊の毛皮を脱いだ沖田が、トコトコと近づいて行った。

 

 ――仲裁にでも入るのかしら?

 

 一瞬でもそう考えたわたしが愚かである。

 

 沖田は彼らの足もとに何かを転がした。

 

 肉片である。

 

「よォ、万事屋。これァ、餞別でサァ。食いなよ」

「クソサド……なんアルか、これは」

 

 警戒しながらも、神楽の口からは涎が垂れているようである。

 

 そんな神楽を、沖田は明らかに見下していた。

 

「見りゃあ、分かるだろ。肉だよ、肉。デケーだろ。ちょいと食い切れねェーくれェの肉が手に入ってな。日頃世話になっているテメェらにも、遅いお歳暮というわけサ。遠慮せず、食ってくれよ」

 

 そう言って、沖田はその肉を踏む。

 

「ほら、どーした? 鍋をひっくり返しちまって、腹減ってんだろ? 早く拾えよ。俺からの有り難いお恵みを拾わねェーのかィ? せっかくのバーベキュー楽しまないのかィ? あぁ?」

 

 ぐりぐりと、ぐりぐりと。沖田は蔑みながら、肉を踏む。

 

 そんな楽しそうな沖田の姿を見ながら、わたしは問う。

 

「ねー土方さん。どうして万事屋はお腹空かせてるの?」

「それは俺らがちょいと奴らに刺客を仕向けてだな。そいつが奴らをかき乱してくれたのさ」

「刺客?」

「蚊」

「か?」

「蚊。ちなみに準備は今も木の上で震えている山崎だ」

「蚊ねぇ……」

「あんな短時間でこんなに集めるなんざ、蚊取り名人だな、あいつは」

「……なかなかないスキルよね」

「あぁ、もう二度と使うことがないかもしれないスキルだな」

 

 ――馬鹿馬鹿しい。

 

 淡々と話しながらも、わたしはゆっくりと山崎がいる木へと向かう。

 

 見上げると、山崎が声を震わせながらも、

 

「さささ桜ちゃん! ダメだ、来ちゃダメだ! お化けがでるから! 熊のお化けが出て土方さん呪い殺されちゃったから!」

「死んでねーよ」

 

 万事屋の様子を引き続き観察しながらも、ちゃんと否定する土方は置いておいて。

 

「山崎はやっぱり、山崎よねぇ」

 

 苦笑しながら、わたしは刀を抜く。

 

 血汚れが付いている。刃こぼれはしていないものの、出来れば早めに手入れしたい。

 

 ――もう一頑張りよろしく!

 

 息を整える。どんなに太く、丈夫なものであっても、必ず筋と支点というものがある。その二つがどこにあるのかさえ見極めれば、あとは正確に刃を滑らすだけだ。

 

 わたしは息を吐くと同時に、一閃した。

 

 傾いて行く大樹は、メキメキと音を響かせて、狙い通りの方向へと倒れる。

 

 悲鳴と、罵声と。

 

 土煙のあとに、わたしはこう声をかけた。

 

「どいつもこいつも、食べ物を粗末にするんじゃありません」

 

 わたしのお腹が可愛い悲鳴をあげる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。