「桜どーゆーつもりだコノヤロー。おかげでタンコブ出来ちまったじゃねェーかィ」
「いやー、倒れる木の直撃受けて、タンコブで済んでいるのは、流石だと思うよ」
ちなみに、万事屋と土方はしっかりと避け、山崎は脳天から落ちて、今は気絶中である。
結局、万事屋は今晩の夕飯は酢昆布となったらしい。焚火ですこし炙って食べるのだという。
熊肉を分けようかと思ったのだが、
『熊? なに、桜ちゃん熊なんかまた狩っちゃったの? いい歳してまだそんな中二病なことしてんの? 馬鹿なの? ねぇ、いつまでロマンとか幻想追い求めているわけ?』
と、カブトムシなんて子供っぽいものを狩っている三十路も近いような男に言われてしまったため、一切の食糧を分け与えることはしなかった。
そんな経緯もあり、今は沖田と二人で遅い
わたしは串に刺してある肉に噛みついた。
「けっこう歯ごたえがあるわね」
「おい、よく火通せよ」
「ふぁいしょーふ」
噛めば噛むほど味の出る懐かしい味に満足しつつ、
「みんなもう寝たのかな?」
「みてェーだな。土方さんも疲れただかなんだで、さっきテントに入っちまったし」
「いい歳した大人が、カブトムシ相手にはしゃぎ過ぎなのよ」
「ちげーねェー。土方なんざ、もうじき
「……まぁ、その時はほどほどにね?」
姑にいびられ続けた嫁の復讐のような光景を思い浮かべながら、わたしはまた一口、肉をかぶりつく。
「ふぉいひーへ」
「あぁ、なかなか
まわりはテントに囲まれて、どのテントからも寝息といびきが聴こえてくる。
夜風は寒いが、バーベキューの火がほどよく身体に暖をくれる。
快適とは言えないが、そんなに悪い夜ではない。
「……なぁ」
「ん?」
「さっきの話の続きを聞かせろよ」
「あー……誰も聴いてないかな?」
焼きかけの野菜をひっくり返す。バーベキューのカボチャは美味しいが、なかなか火が通らないのが難である。
「聞かれちゃアレな話なのか?」
「いやー……まぁ、いっか」
一応、真選組の敵である高杉や桂の出てくる話なのだ。彼らとの繋がりが知れれば、立場が危うくなるかもしれない。自分の立場は――まぁ、今更ではあるから、どうでもいいとして。
「でもね、総悟くん……」
「なんだ?」
もぐもぐとキャベツを食べながら、無表情でこちらを見てくるあどけない姿に、くすりと笑って、
「これでもわたし、総悟くんのことは特別信用してるんだからね」
――裏切らないでね。
一方的な願いを押し付けて、わたしは懐かしさに、空を見上げた。
☆★☆★☆★☆
銀時との勝負に負けた翌日から、地獄の特訓が始まった。
「次、腕立て百回っ!」
腕立て、腹筋、山道の走り込み。午前中は基礎体力をつけることに専念した。
くたくたの身体に、無理やり昼食を掻き入れて、午後はひたすら素振りをした。
そんな、ごくごく普通の特訓だが、おかしな点が一つあった。
「ねぇ、ぎんとき。どうしてずっと枝を持ってなきゃいけないの?」
訓練中も、素振りも、食事する時も、しまいには寝る時も、わたしは銀時から枝を持ち続けるように指示された。
「お前が意識しないようにするためさ」
わたしの素振りを横で見ながら、鼻をほじっている銀時がさも当然とばかりに答える。