「獲物を持っちまうと、どうしても殺気というか……気迫というか、気配みたいなのが出ちまうだろ? アイツクラスになると、そんな気配でどこからどう攻めてくるのか、わかっちまうのさ。だから、獲物を持っていても、自然に振る舞えるようになれ。もうそれが手の一部だと、お前自身が思うくらいにな」
そういうことで、四六時中、わたしは枝を持って生活することになった。
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「なぁ、桜……」
「ん、ふぁひ?」
「やってること、今とそんなに変わんなくないかィ?」
噛みつこうとした輪切りのトウモロコシが、ぽろっと地面に落ちた。
「まぁ、基礎体力の訓練嫌だなぁってのは変わらないけど……別に、今ずっと刀握っているわけじゃないし」
「でも、アンタずっと腰に刀差しているよな?」
次に玉ねぎに噛みつくと、回りの一枚がくるっと取れる。
「ふぁいひにしてるんふぁからひひでほっ!」
「何言ってるかわかんねェーよ」
半眼で睨んでくる沖田から顔を背けて、もぐもぐと玉ねぎを食べていく。
ごくりと飲み込んで、わたしは小さく呟いた。
「……大事にしてるんだから、いいでしょ」
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筋力をつける。
気配を消す。
あと、勝つために必要なことは――
「作戦には、協力者が必要だな」
「しょーしょくは?」
焼きたてのお芋をほふほふと食べながら、わたしは首を傾げた。
銀時は焚火の枯れ葉を枝で突くと、枝に刺さったお芋を掲げて言った。
「そーゆーわけで、協力者の晋助君と小太郎君です! みんな拍手するよーに」
「みんなって、わたししかいないけどね」
お芋を飲みこんだ後には、水分が欲しくなる。お茶を啜りながら呟くと、銀時の横に並ぶ少年が冷静に言った。
「楽しい焼き芋パーティーだと聞いていたんだが……」
艶やかな黒髪の少年である。どことなく気品と、真の強さを感じさせる美少年は、不服を言いながら、しゃがんで枝で枯れ葉を突っつく。
「楽しいじゃねぇーか。幼女と一緒に焼き芋を食べながら、先生をぎゃふんと言わせよう作戦会議だぜ?」
「ふむ……幼女か」
銀時の言葉に、その少年の視線はまっすぐわたしに向けられる。
黒い瞳がじーっと、じーっとわたしを見つめて、
「幼女か……」
何かを納得したように呟く年上の姿は、背筋の凍るような身震いを生じさせた。
しかし、まだこの少年と見つめあっている方がマシである。
さらに隣のざんばら頭の少年の方が、タチが悪かった。
顔を赤らめながら、チラリと、チラリと仁王立ちでこちらを
先生に一太刀浴びせるためには、手段を選ばない所存であった。
しかし、こいつの手は、借りたくなかったのが本音である。
「……ぎんときの友達って……この二人しかいないの?」
わたしが尋ねると、焼き芋を二つに割った銀時は首を傾けた。
「あー……こいつらだって、友達というほどのものでもないような……なんつーか……」
「そうだな。素直に友と呼ぶのは、まだ何か足りんかもしれんな」
お芋を選んでいるのだろうか、枝で突っつきまくりながら、小太郎はどこか自信ありげにそう言う。
それに、銀時は眉をしかめた。
「え、なに? 何かがあれば、俺たち友達になっちゃうわけ?」
「うむ。すでに俺はお前のことをもっと知りたいなと思っているぞ」
「やだー、俺、そっちの趣味はないんですけどー」
まぁ、どうやら銀時の知り合いはこの二人しかいないようである。
――わたしも、友達いないしね。
唯一の知り合いといえば、ここでずっと照れている気持ち悪い少年のみだ。