わたしは覚悟を決めて、声かけることに決めた。
「ねー、たかすぎさん」
「ふぁっ! ど、どうした?」
――声裏返んなし……。
話す気を失くしつつも、わたしは続ける。
「わたしがここに来てからさ、何も話しかけても来ませんでしたよね?」
「あ、あぁ……」
「今更、なんですか? 本当に、お芋食べたかっただけ?」
わたしは新しいお芋をがしっと素手で掴んでは、高杉にそれを投げつける。
「それとも、笑いに来ましたか? わたしがこんな枝一本で先生に挑んでいるの、道場中のうわさになってますよね?」
「おい、手!」
銀時が慌てて駆け寄り、火消し用の水をわたしの手に掛けてきた。服まで濡れて、わたしは顔をしかめる。
「なんで水掛けられたの……?」
「馬鹿っ! 火傷すんだろ!」
そして、強制的にしゃがまされ、バケツに残った水の中に、手を入れられる。
言われてみれば、手がヒリヒリと痛いかもしれない。
ひんやりとした水が気持ちいいなと呆けていると、高杉が近寄って来る。
「桜ちゃ――いや、桜」
呼び捨てにされて、わたしは少年を見上げた。
「お前が望むなら、俺はどんなことだって、してやる。ただし、一つだけ約束してほしい」
「約束?」
彼の表情は真剣だった。
真剣に、真面目に言うのだ。
「いつか、俺のために琴を弾いてほしい」
――そんなこと?
わたしは眉根を寄せた。
「琴くらい、用意してくれれば全然いいけど……」
「じゃあ、決まりだな!」
すると、銀時は高杉の肩を組んで、意地悪く笑った。
「なんでもするって、言ったよな、高杉君」
その後、銀時から説明された作戦に、高杉は苦々しい表情を浮かべた。
☆★☆★☆★☆
「アンタ、そんなに琴上手いのかィ?」
マシュマロがじんわりと溶ける姿を睨みつけながら、沖田がそう訊いてくる。
わたしも自分のマシュマロをくるくると回転させながら答えた。
「正直、そんなに上手くはなかったと思うけどね。なにせ、ほんとに子供の頃の話だし。お裁縫の方が得意よ。この後もずっと自分の着るものはもちろん、門下生や先生のも、お駄賃もらいながら直したりしてたからさ」
「まぁ、人間意外な特技の一つや二つはあるもんだよな……」
そう呟きながらも、沖田のマシュマロも焦げてきたのだろう。くるくると串を回しだす。
わたしのマシュマロは全体が固く、茶色帯びてきたので、火から外した。香ばしくなったマシュマロにふーふーと息を吹きかけながら、
「そういう総悟くんは、これといった特技ないの?」
「そうさなァ……。車やバイクの運転はもちろん、トラクターやヘリ、船の運転免許は持ってるぜ。あと、宇宙毒物劇物取扱免許もある」
「資格マニア?」
「いんや。ただ土方の野郎を殺したいだけさ」
「うん、聞かなかったことにするわ」
苦笑しながら、マシュマロをぱくっと食べた。一瞬感じた固さの中からじんわりと溶けだす甘みに、頬が零れそうになる。
「あ、うま」
食べてその美味しさに驚いている沖田に、
「でしょ?」
と、わたしは笑いかけた。
☆★☆★☆★☆
そして、決戦の日。
「せんせー、質問があるんですけどー」
寺子屋での授業中に、いつも寝てばかりいる銀時が手をあげる。
「おや、珍しいですね。いいでしょう、何ですか?」
少し嬉しそうな顔をする先生に、銀時はある雑誌を取り出した。
「この男の人はー、女の人にナニしてるんですかぁー?」