夢だといいな、と思った。
夜が明けるまで、死闘を繰り広げた。
木々の生い茂る狭い森の中。夜目を駆使しなければ一寸先も見えない中、相手は縦横無尽と攻めてきた。
二対一。数の利がなければ、圧倒的にこちらが不利であった。
しかし、これが現実なのだ。
そう、現実なのだ。
「わたしはさー、絶対に熊だと思ったのよね。熊。なんか黄金の熊みたいなさ、森の主! みたいな……
「それ以上言ったら、さすがの俺も怒るぜ?」
夜も明け、東から太陽が昇って、かなりの時間が経った。もう少しで頂点に達するであろう。
今日も、ピクニック日和のいい天気である。
森も少し開け、草が生い茂る場所で寝転んだら、さも心地よいだろう。
お弁当を食べて、寝転びたい。
お腹空いた。なにより、徹夜明けは眠い。
そんな思考の回らない中、わたしは眉をしかめながら、口を噤み、ふと思う。
――いつも怒っているじゃないか……。
しかし、怒ると言いながらも、沖田の表情はすこぶるにこやかだった。
「よく俺のとこへ来たなァ。そっかぁ、やっぱりサド戦士に、お前もなりたかったんだなァ」
と、沖田は乗っている獣を撫でる。
獣――そう言ったほうが、まだ納得ができるかもしれない。
黒々とした甲殻類のような風貌。その大きさはトラクター程度のサイズはある先分かれしている一角をビシッと伸ばし、六本の足は爪なのか棘なのか知らないが、しっかりと地面を踏みつけてノシノシと、沖田を乗せて歩いている。
この生物を、簡単に呼ぶなら、こうだろう。
巨大カブトムシ。
「さぁ、行くぞ! サド丸二十七号! 全国のカブトムシの覇者となれっ!」
――あんたがガキ大将の覇者だよ……。
沖田は確か十七歳だったはずである。
大人ではないとはいえ、もう子供でもないはずなのだが。
――いつも背伸びしている反動なのかねぇ……。
足をバタバタとさせながら、「行けーっ」とばかりに指を前へ差している姿に、わたしは小首を傾げ、この巨大カブトムシに踏まれない程度に距離を開けながら歩く。
「けど現実な話、この森の主、瑠璃丸とは違うのはもちろんだけど、宇宙外来危惧種だよね? 保護になるのか駆除になるのかは、調べてからになるだろうけど、捕えられて良かったのかな?」
こんな巨大カブトムシが何を食べるのかは定かではないが、地球の生命形態を崩してしまうのは一目了然である。
そういった環境保護も、立派なお役人の仕事だと思うのだが、
「てやんでィ! テメェ、サド丸二十七号を妬いちまって、抹殺をしようとしてるんじゃあるめェーな!」
真選組一番隊隊長殿は、浮かれ過ぎてこんな感じである。
わたしは嘆息しながら、髪を掻きあげた。薄紅色の髪に艶がなく、心なしかべたべたする。
さすがに、昼夜問わずカブトムシ兼クマ狩りは疲れた。
――とりあえず、土方さんにでも報告かな。近藤さんに見せて、総悟くんと二人でさらに盛り上がられたら、面倒だし。
そんな目測を立てた時である。
巨大カブトムシが、急に足を止めた。
「ん、どうしたの?」
覗きこむようにカブトムシの前方を見ると、一人の少女がこちらにビシッと指していた。
「リベンジアルよっ!」
お団子髪の赤いチャイナ服少女に対して、疲れ切ったわたしはこう呟いていた。
「みんなさ、指差すの好きよね……」