偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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信頼はこぶしで掴みとれ④

  

 

 ずずずとお白湯を啜る。お茶碗にそそがれた乳白色の緩いおかゆからは、お出汁のいい匂いがしていた。木のスプーンで、それを一口。身体に沁みわたる優しい栄養。

 

 これよ、これ。わたしはこういうのを求めていたのよ。長い眠りについていた奴が、いきなり固いスルメだマヨネーズだわ、食べちゃいけないよね。普通。

 

 色々なもので汚れた身体も、洗わせてもらった。肌も髪も艶がもどった気がする。身も心もほかほかだ。

 

 そして、今この部屋にはわたし一人。はしたないとわかっていながらも、足を伸ばす。外から差し込む光も橙色で風情がある。

 

 まぁ、ふすまの向こうには監視がおり、その会話がまる聴こえなのだけど。

 

「どうやら、決闘の直前に副長がマヨネーズ一本まるまる飲ませたらしいぜ」

「まじで? 副長そこまでして勝ちたかったの?」

「てか、そういうプレイがしたかったんじゃね? けっこうコアそうじゃん、副長」

「あーわかるわかる。妙なこだわり強いもんなぁ」

「て、め、え、ら……そんなに腹ぁ切りたいなら今すぐ介錯してやろうか、え?」

「ふ、ふくちょぉー!」

「ったく」

 

 舌打ちとともに、ふすまが開いた。

 

 副長こと、土方が黒い服のようなものを持って入ってくる。わたしはとりあえず、足を戻した。

 

 土方は斜めを向いて、

 

「あの……すまなかったな」

 

 そう謝ってくる。

 

 わたしはお白湯をすすった。何について謝っているのだろうと考えてると、土方は続ける。

 

「近藤さんにも謝ってこい言われてな……なんだ、その……仮にも病み上がり……でいいのか? そんな女にいきなりマヨネーズ飲んだ後運動させるのは……その、年上としても止めなきゃいけなかったかと。まぁ、言い出したのはお前さんだが……」

 

 そうか。人前で口からきらきらしたものを出してしまったことで、わたしが心を痛ませているのではないかと心配しているのか。

 

「わたしさ、いくつに見える?」

 

 訊いてから、おかゆをまた一口。すぐに喉を通って行くけれど、それなりによく噛んでいると、土方はいきなりなんだと言いたそうな顔で答える。

 

「十七、八くらいだろ?」

「残念。二十三。たぶん」

「多分?」

「何年寝てたか、いまひとつわかんないからね。けど、攘夷戦争終わったの、五年くらい前なんでしょ? さっき食事持ってきてくれたおばさんに聞いたんだけどさ。戦争のときが十八だったから、だから今は二十三歳くらい。けど、年取ってなく見えるから、まぁ高杉がなんかしてくれちゃったみたいね」

 

 わたしはお茶碗を置いて、土方を見る。

 

「だからね、ちゃんと成人してるのよ。もういい大人がさ、勝手にマヨネーズ飲んで動いてってだけなんだから、あなたが気にすることじゃないわよ。自業自得」

「お……おう」

「そういうわけでね、自分で責任取りたいから、あの少年も助けに行きたいのだけど?」

 

 呆気にとられたような土方は、仕切りなおすかのように咳払いをした。

 

 そして、持っていたものを投げてくる。わたしはそれを広げてみた。彼らと着ているものと同じ、真選組の制服である。

 

「それ着て、近藤さんと一緒に城に行って来い。俺らは城の外で待機しておくから、何かあれば、すぐに逃げて来い。自分の身くらい、守れるだろう?」

 

 問われて、わたしは首を縦に振る。制服はちゃんと少し小さめで、わたしが着てもぶかぶかにはならないだろう。しかし、ボタンの重ねが男性用だ。

 

「真選組に、女はいないの?」

「当たり前だろうが。だから、胸にはさらしでも巻いて、男の振り……総悟のふりしてもらう。役職もない奴を連れていくわけにはいかないしな。出来るか?」

 

 あの少年の姿を思い返す。白い肌。大きな目。細い髪。たしかに彼も女の子のようだった。身長もわたしより彼の方が若干高いものの、彼も線が細かったから、なんとか誤魔化せるだろう。

 

 あと、一番ちがうところは――

 

「土方さん、なんか切るものない?」

「あぁ? これしかねぇが……」

 

 土方が腰にさげた刀をくいっと動かす。わたしは立ち上がり、何も言わず、その刀を抜かせてもらった。

 

「おいっ!」

 

 土方が制止しようとするが、それよりも早く。

 

 わたしは自分の長い髪を持ち上げ、逆手で持ったその刀でなるべく根元のあたりで髪を切る。

 

 さくっとした切れ味が、気持ちがよかった。薄桃色の毛束を、放り投げる。

 

 夕陽の橙に反射して、きらきらと黄金に輝いて見えた。

 

「改めて、わたしは桜と言います。よろしくね、副長」

 

 わたしは土方に向かって、笑みを向けた。

 




ようやく沖田救出に向かいます。将軍も登場予定。
ひと段落つくまではオリジナル話が続きますが、そのあとは原作に沿った話も入れていく予定です。

話のテンポが遅いでしょうか?
色々悩みながら書いていますが、お楽しみいただけたら幸いです。
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