その後、先生から解放されて、結局終始寡黙なままの高杉と別れてから、わたしは銀時を呼び止めた。
「なんだよ、晩飯までまだ時間あるだろ? 一世一代の大仕事を終えて疲れてんだから、休ませてくれよ」
半眼でそう言う銀時に、わたしは叫ぶようにして訊く。
「どうして、わたしを助けてくれたの?」
「そりゃあ、アイツにぎゃふんと言わせたかったからって、前にも言ったろ?」
「それだけ?」
わたしがじっと、銀時のやる気のない目を見つめると、彼は一瞬視線を逸らしたのち、にやりと笑った。
「じゃあ、初恋ってことで」
そして、ふわぁーっと欠伸をしたのち、
「じゃあ、妹よ。兄は今から寝るから。晩飯できたら起こしてくれ」
そう言い残して、自分の部屋へと帰っていく。
残されたわたしは、一人で首を傾げた。
「きょーだいで恋って、するものなのかしら?」
誰も、その疑問には答えてくれなかったけれど。
けれど、今でも覚えている。
銀時に『初恋』と言われて、わたしの胸が高鳴ったことを。
☆★☆★☆★☆
キラキラしている。
目を開けた瞬間に、満天の星空に視界を支配されて、わたしはそれしか認識できなかった。
――あぁ、夜になったのか。
ぼんやり眺めてから、身を起こすと、崖の下から声が掛けられる。
「いつまで寝やがってんだ、痴女猫め!」
のそのそと動いて見降ろすと、見上げている沖田がお玉を持っていた。焚火の上に鍋をかざして、お玉で掻きまわしているのである。
鍋の中身は、匂いでわかった。
「カレーだ!」
「いきなり言うのがそれかよ」
「だって、カレーなのよ? すきっ腹にカレーを我慢しろなんて、そんなドSなことするような子に、わたし育ててないもの」
「誰もアンタなんかに育てられてねェんだが……てか、俺はドS星に生まれたドS帝国の帝王だってこと、知らねェーのかィ?」
ニヤリと笑うと、沖田はご飯の盛られた器にカレーをよそう。そして、スプーンですくうと、食べようと大口開けてこちらを見上げていた。
わたしは淡々と言う。
「でも、総悟くん、わたしが本気で嫌がることは、しないもの」
「……ったく」
やれやれと肩をすくめて、沖田はもう一つカレーを準備しだす。
「さっさと降りてきやがれ。本気で食べちまうぞ!」
「はーい」
わたしはひょいっと立ち上がり、崖を降りる前に辺りを見渡した。
倒れてたはずの、白い侍がいない。
――帰ったのかな?
まぁ、昼間から夜になったのだ。あの程度の気絶なら、すぐに目が覚めていて当然であろう。実際、沖田も今は元気そうである。目的の瑠璃丸も潰れてしまったのだから、もう森に滞在する必要もない。巨大カブトムシの姿もなかった。どこに行ったのかは、あまり考えないでおきたい。
いないのは、万事屋だけでなく、沖田の他の真選組の姿もなかった。
どうやら、沖田一人、わたしが目覚めるのを待っていてくれたようである。