――起こせばいいのに。
くすりと笑って、わたしは崖を滑り下りた。よっと沖田の後ろに着地すると、彼は「はいよ」とカレーを差し出してくる。
「ありがとう」
礼を言って、わたしは沖田の隣に座った。
「いただきます」
スプーンに大盛りすくって、頬張る。鼻から抜ける香ばしい香りに、ピリリとしたスパイスが舌で踊る。
「ふぉいひぃ。ふぁりふぁほへ」
「もういい。俺は何も言わねェーから、ゆっくり食え」
「ふぁい」
もぐもぐと、かつかつと。二人並んで、無言で食べる。
カレーは意外と家庭的な味がして、美味しかった。肉は熊肉だからその癖はあるものの、他はごくありきたりな具材で作ってあるようである。ルーも多分、市販の固形ルーであろう。
――やっぱり、全然ドSじゃないじゃない。
これが土方が食べるとなれば、色々スパイシーすぎるスパイスが入っているのかもしれないが。
風が木々を揺らす音。焚火がぱちぱち弾ける音。スプーンが皿をこする音。
それだけだが、決して居心地は悪くない。
あっという間に食べ終わり、わたしはぷはぁーと息を吐いた。
「美味しかったぁ! ありがとね、総悟くん!」
「……別にどーってことねェでサァ。可愛い寝顔、見せてもらったしな」
目を細めて、そう言ってくる沖田に、わたしは同じような笑みを返す。
「んー? 眠り姫にちゅーでもしちゃったかな?」
「さぁ? どーだかね?」
そう、とぼけてくる沖田に、わたしは苦笑して、
「なんか……昔話する気、失せちゃったな」
ぽつりと呟くと、沖田は鍋を片付け始める。
「別に、アンタが話したくなったらでいいでサァ。女に話したくねェーこと無理やり聞き出すほど、野暮な男になるつもりはねェーし。それに……」
「それに?」
首を傾げると、彼は顔を近づけてきた。耳の横で囁いてくる。
「これ以上二人っきりでいると、ちゅーだけで押さえられそうもねェ」
「え?」
耳にふっと息を吹きかけられ、わたしの肩が上がる。
その様子を見てか、離れた沖田がへへっと笑った。
「そーゆーわけだ。さっさと
「……はいはい」
わたしは二つ返事して、なんとなく空を見上げた。
月は見えないが、やっぱり夜空はキラキラしている。
後日談。
登城を命じられた近藤に、わたしはある荷物と手紙を持たせた。
荷物は、手作り黄金熊のぬいぐるみ。
手紙にはこう書いた。
『将ちゃんへ。カブトムシの代わりにどうぞ。蜂蜜大好き黄金熊、名前は……著作権上、自分で考えてね。友達の桜より』
帰って来た近藤に、涙ながら感謝されたのだった。
ちなみに、巨大カブトムシと白くて巨大な
カブトムシ狩り、これにて終了です。
偽物の銀魂が誰かの有意義な暇つぶしになりますように。