偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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女ならば一度は可愛い弟が欲しいと思うもの③

 優雅にそう話す二人を、わたしは仁王立ちで見ながら、自問自答する。

 

 ――なんで、こんなに苛々(いらいら)するの?

 

 さっきから、なぜかこの二人を見ていると苛々するのだ。

 

 沖田がへらへらしているから?

 

 ――久々に姉に会えて嬉しいなら、微笑ましいじゃないか。

 

 ミツバという姉が綺麗だから?

 

 ――別に美しさで女に嫉妬したことなんて、今までないけど。

 

 考えたって、答えがでない。

 

 だけど、なぜか苛々するのだ。もやもやするのだ。

 

「訳わかんない……」

 

 髪を掻き上げ、嘆息すると、ミツバがこっちを指していた。

 

「総ちゃん、あの人は知り合いの人?」

「え、アイツは……」

 

 どうやら、あの人とはわたしのことらしい。沖田はわたしの顔を見て、言葉に詰まる。

 

 ――さすがに、大好きなお姉ちゃんの前で『ペット』とは言えないか。

 

 助け舟を出そうと口を開きかけた時、沖田が言う。

 

「……彼女は、僕がお付き合いさせていただいている人です」

 

 口を開けたまま、わたしは三回まばたきした。

 

「まぁ!」

 

 ミツバが感嘆の声をあげ、口を押さえている。

 

「こっち来いよ」

 

 無表情のまま、沖田が手招きしてくる。

 

 それと同時に、わたしの足をひっぱってくる誰かがいた。

 

 アフロがさらにボンバーしている、山崎である。

 

「桜ちゃん、いつからちゃんと付き合ってたの!」

「知らないわよっ!」

 

 小声で否定して、その頭を蹴り飛ばす。ちょっと力を入れすぎて、隣の客席へと吹っ飛んで、泡を吹いている気がするけど、それどころではない。

 

「桜!」

「はいっ!」

 

 沖田に呼ばれて、反射的に返事をしてしまう。

 

 ――お付き合いって、ペットと飼い主って関係でも使う言葉だったっけ?

 

 そんなことを考えながら、仕切りを迂回して、沖田たちの席へと向かい――座る沖田の、隣に立った。

 

「えと……」

 

 近くで見るミツバは、確かに綺麗だった。でも、色白というよりも顔が青白く、大人しいというよりも、儚くて。

 

 ――具合悪いんですか?

 

 と、訊きたいのを堪えて、わたしは頭を下げた。

 

「挨拶が遅れて、申し訳ありませんでした。桜、と申します。総悟くんには、いつもお世話になっております」

「あら、ご丁寧に……」

 

 ミツバは慌てて立ち上がり、ぺこりと頭を下げる。

 

「総悟の姉の、ミツバでございます。こちらこそ、いつも弟が――」

 

 と、そこで、ミツバが大きく咳き込んだ。一度や二度では治まらず、ごほごほと咳を繰り返し、

 

「姉上、挨拶なんていいから、早く座って!」

 

 沖田に促され、ゆっくりと座り、何度かゆっくり呼吸すると、ようやく咳が治まったようである。

 

「……大丈夫ですか?」

 

 わたしが尋ねると、ミツバは弱弱しく微笑んだ。

 

「えぇ、ご心配おかけしました。いつものことなので」

「姉上は、昔から肺の病を患ってるんだ。最近は調子がいいって言ってたけど……やっぱり、江戸の空気はツライですか?」

 

 わたしに説明してから、ミツバの心配をする沖田。

 

「そんなことないわ。それに、これからはずっと江戸で暮らすんですもの。ツライとか言ってもいられないわ」

「しかし姉上……」

 

 眉をしかめる沖田に、ミツバは気丈に笑う。

 

「総ちゃん、これからここで結婚する幸せな女に、ツライとか苦しいとか、マイナスのこと言ったらダメでしょう? 素敵な旦那様と暮らして、可愛い弟ともすぐ会えるようになるんだから。私は嬉しくて仕方ないのよ」

 

 そして、ミツバは立ちっぱなしのわたしを笑顔のまま見上げた。

 

「しかも、こんなに可愛らしい女の子が総ちゃんの彼女だなんて、困ったわ。嬉しいことだらけで、顔のしまりがなくなっちゃう」

 

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