優雅にそう話す二人を、わたしは仁王立ちで見ながら、自問自答する。
――なんで、こんなに
さっきから、なぜかこの二人を見ていると苛々するのだ。
沖田がへらへらしているから?
――久々に姉に会えて嬉しいなら、微笑ましいじゃないか。
ミツバという姉が綺麗だから?
――別に美しさで女に嫉妬したことなんて、今までないけど。
考えたって、答えがでない。
だけど、なぜか苛々するのだ。もやもやするのだ。
「訳わかんない……」
髪を掻き上げ、嘆息すると、ミツバがこっちを指していた。
「総ちゃん、あの人は知り合いの人?」
「え、アイツは……」
どうやら、あの人とはわたしのことらしい。沖田はわたしの顔を見て、言葉に詰まる。
――さすがに、大好きなお姉ちゃんの前で『ペット』とは言えないか。
助け舟を出そうと口を開きかけた時、沖田が言う。
「……彼女は、僕がお付き合いさせていただいている人です」
口を開けたまま、わたしは三回まばたきした。
「まぁ!」
ミツバが感嘆の声をあげ、口を押さえている。
「こっち来いよ」
無表情のまま、沖田が手招きしてくる。
それと同時に、わたしの足をひっぱってくる誰かがいた。
アフロがさらにボンバーしている、山崎である。
「桜ちゃん、いつからちゃんと付き合ってたの!」
「知らないわよっ!」
小声で否定して、その頭を蹴り飛ばす。ちょっと力を入れすぎて、隣の客席へと吹っ飛んで、泡を吹いている気がするけど、それどころではない。
「桜!」
「はいっ!」
沖田に呼ばれて、反射的に返事をしてしまう。
――お付き合いって、ペットと飼い主って関係でも使う言葉だったっけ?
そんなことを考えながら、仕切りを迂回して、沖田たちの席へと向かい――座る沖田の、隣に立った。
「えと……」
近くで見るミツバは、確かに綺麗だった。でも、色白というよりも顔が青白く、大人しいというよりも、儚くて。
――具合悪いんですか?
と、訊きたいのを堪えて、わたしは頭を下げた。
「挨拶が遅れて、申し訳ありませんでした。桜、と申します。総悟くんには、いつもお世話になっております」
「あら、ご丁寧に……」
ミツバは慌てて立ち上がり、ぺこりと頭を下げる。
「総悟の姉の、ミツバでございます。こちらこそ、いつも弟が――」
と、そこで、ミツバが大きく咳き込んだ。一度や二度では治まらず、ごほごほと咳を繰り返し、
「姉上、挨拶なんていいから、早く座って!」
沖田に促され、ゆっくりと座り、何度かゆっくり呼吸すると、ようやく咳が治まったようである。
「……大丈夫ですか?」
わたしが尋ねると、ミツバは弱弱しく微笑んだ。
「えぇ、ご心配おかけしました。いつものことなので」
「姉上は、昔から肺の病を患ってるんだ。最近は調子がいいって言ってたけど……やっぱり、江戸の空気はツライですか?」
わたしに説明してから、ミツバの心配をする沖田。
「そんなことないわ。それに、これからはずっと江戸で暮らすんですもの。ツライとか言ってもいられないわ」
「しかし姉上……」
眉をしかめる沖田に、ミツバは気丈に笑う。
「総ちゃん、これからここで結婚する幸せな女に、ツライとか苦しいとか、マイナスのこと言ったらダメでしょう? 素敵な旦那様と暮らして、可愛い弟ともすぐ会えるようになるんだから。私は嬉しくて仕方ないのよ」
そして、ミツバは立ちっぱなしのわたしを笑顔のまま見上げた。
「しかも、こんなに可愛らしい女の子が総ちゃんの彼女だなんて、困ったわ。嬉しいことだらけで、顔のしまりがなくなっちゃう」