年がいにもなく、そんな可愛らしいことを言う人に、わたしは愛想笑いを返した。
「……桜も座れよ。てか、なんでアフロ?」
「んー、アフロが世界を救ってくれたらいいなって思ってね」
座って、アフロを脱ぐ。清涼感に一息吐いて、わたしは頭をふるふる振った。
「ホント、猫みてェーだな」
隣の沖田が、小さな声で馬鹿にしてくるので、
「伊達にペット扱いされてないからね」
一層小声で返しながら、首の鈴を指先で鳴らす。
「アンタ、姉上の前では言うんじゃねェーぞ」
「貸しだからね」
「わーってるよ」
片目を瞑るわたしに、沖田はむすっと応えて。しかし、その顔はすぐさま、にこりと微笑んだ。
「改めて、僕から紹介させてください。屯所で預かっている、桜です。公私共に、僕のサポートをしてもらってます」
「あら、真選組のお仕事のお手伝いをしているの?」
ミツバに問われて、わたしは頷いた。
「これでも、剣には自信がありますので」
そう言って、少し腰を上げて刀を見せる。
「まぁ……」
ミツバは驚いた顔をした後、首を傾げた。
「けど、総ちゃん。たとえ彼女とはいえ、いつも女の子と一緒にいたら、お仕事でいじめられたりしてない?」
わたしが座りなおすと同時に、沖田が即答する。
「大丈夫です。仲には気に食わない奴もいますが、僕、負けません! 桜のことも大好きですが、仕事だって誰にも文句言われないくらい、頑張ってるので!」
「まぁ、じゃあ、男友達もいるの?」
「と、友達?」
「えぇ。悩みを相談したり、一緒に遊んだりする友達はできた?」
「それは……」
「まさか、本当にいつも二人っきりでいるわけではないでしょう?」
ミツバは笑顔でわたしに同意を求めてきているが、その目が笑っていない。
なんだろうか。なんとなく、彼女の気持ちがわかるような気がする。
自分の可愛い弟が、いつのまにか女を作っていたのだ。しかも、屯所で預かっているなんて言ったもんだから、ようは寝食共にしていることは明白である。
久々に弟に会ったら、同棲している女を紹介されました。
姉として、母として、決していい気分はしないのではなかろうか。
――墓穴を掘ったのではないか、沖田くん。
そんな眼差しで横を見ると、沖田は覚悟を決めたように一人頷いていた。
「……いますよ。ちゃんと、男友達。なんなら、今から呼びましょうか?」
それから、数十分後。
ろくな仕事のない男は、パフェにつられて、すぐにやってきた。
「姉上、紹介します。坂田銀時さんです。僕の友達で、桜のお兄さんです」
「えーと、話がよく見えないんだけど、これはお見合い? それとも結納?」
――わたしだって話がわからぁぁぁぁぁあああん!
そう叫びたいのをぐっと堪えて、わたしはギリギリ笑顔を作った。
「ちがうよ、お兄ちゃん。二家族間の親睦会みたいなものだよ」
「え、なに桜ちゃん。それを世間では結納っていうんじゃないかな? 言ってくれれば、ちゃんと道具を準備しておいたのに。スルメとか昆布とか」
ニヤニヤと笑って肘で突いてくる銀時の足を、わたしはテーブルの下で思いっきり踏みつける。
向かいのミツバは、こそこそと沖田に話していた。
「総ちゃん、どうしよう? 結納金とか、いくらくらい包むのが相場なのかしら?」
「姉上、大丈夫です。本当に今日はそんなんじゃないですから」
「でも……」