――お願いだから、そんな問答やめて……。
そんな悲痛な願いをよそに、
「えー、そーゆーわけでね、お姉さん。オタクの総一郎くんがウチの桜に、そーゆーコトしちゃった責任、どー取ってくれるんですかー?」
「総悟です」
「いやね、ウチはお金が欲しいわけではないのですよ。あくまで、総一郎君の誠意がみたいんですよ」
「総悟です」
銀時と沖田が、そんなやりとりをし始める。
「ちょっと総悟くん、今名前なんかどーでもいいでしょ!」
わたしが横にいる沖田にそう叫ぶと、沖田はいつもの無表情で淡々と言った。
「なに言ってるんでィ。俺の大事な名前間違えられたんじゃぁ、招待客全員に、アンタの兄さん馬鹿にされちまうじゃねェーかィ」
「やめて! めんどくさいからって、君もこのよくわかんないノリに乗らないで! てか、この席並びおかしいから! お見合いだろうが合コンだろうが、なんでこっち側だけこんな窮屈なのォ!」
なぜだか、窓際から沖田、わたし、銀時と三人横並びだった。対面するのは、ミツバ一人。
両手に花といえば聞こえがいいのかもしれないが、両手に馬鹿はいささかツライ。
「まぁ、細けェーこと気にすんな」
「そうそう、総悟郎君がやらかしちゃったことに比べれば、小せェーモンよ、このくれェ」
「総悟です」
訂正、相当ツライ。
その時だ。
「お待たせしました。チョコレートパフェ三つでございまぁす」
と、ウエイトレスが、沖田以外の前にパフェを置いて行く。
「食べないの?」
隣の沖田に訊くと、
「あぁ、いいんだ」
と、コーヒーを一口飲む。
――あんだけお姉ちゃんに甘えておいて、今更大人ぶってもねぇ……。
そう思いながらも、パフェを食べようとスプーンを手にした時だ。
「そうだ! 出会えた記念に、素敵なパフェの食べ方を教えますわ!」
嬉しそうにミツバはそう言って、テーブルに備え付けてある、赤い細長い容器を手に取った。
そして、それをパフェの上で真っ逆さまにすると、白と黒の素敵な模様に、赤い液体が滴り落ちていく。
鼻の奥でツンとする刺激に、顔をしかめた。
そのパフェは、銀時の前に差し出される。
「さぁ、坂田さんどうぞ。桜さんのも今から作りますね」
銀時の顔は引きつっていた。わたしは即座に、自分のパフェを手に取る。
「いや、わたしは大丈夫で――」
言葉の途中で、ミツバが一瞬苦しそうな顔をして、咳き込み始める。
ゴホゴホと、胸の奥から込み上げてくるような咳。
すると、沖田がわたしに耳打ちしてくる。
「この痴女猫! 姉上は肺を患ってるんでサァ! ストレスは大敵なんでィ!」
「んなこと言われても、アレ食べろって?」
沖田の澄ました顔の奥で一瞬、ニヤリと笑ったのを、わたしは見逃さない。
――こいつ、これがわかってて食べ物頼まなかったなっ!