偽訳・銀魂 白夜叉の妹と真選組   作:由比レギナ

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女ならば一度は可愛い弟が欲しいと思うもの⑥

 しかし、それに気づいても後の祭りである。

 

 咳が治まると、ミツバは何事もなかったかのように、またニコリと笑った。

 

「まぁ、確かに見た目はよくないかもしれないから……私が先に食べてみせますね」

 

 そう言って、ミツバは自分のパフェに一際たくさんのタバスコをかけていく。そして、さも当然とばかりに、それを一口、また一口と美味しそうに食べていた。

 

 わたしは、ごくりと生唾を呑み込む。

 

 ――やべぇ……どうやって、どうやってかわせばいい?

 

 窮地である。「さぁ」と笑顔で次勧められたら、なんて言ってかわせばいいか、全力で頭を回転させる。

 

 ミツバは水も飲まずに、そのパフェを半分くらい食べると、無言でわたしのパフェを手前に寄せた。

 

 容赦なく、わたしのパフェが赤い液体に侵略されていく。

 

「さぁ、どうぞ。坂田さんも、早く食べないと溶けてしまいますよ?」

「あ、でも俺、パフェは甘い方が好き――」

「ぐはぁぁぁあ!」

 

 ミツバが吐血した。

 

 口から真っ赤なモノを吐いて、またゴホゴホとさっきよりも苦しそうな咳をする。

 

「ぜひに食べさせていただきまぁすっ!」

 

 銀時は自棄とばかりにパフェを掻き込んだ時だ。

 

 カバディかばでぃカバディかばでぃ。

 

 淡々としたメロディが店内に響く。

 

 銀時の顔が真っ赤に染まり、そのメロディが一旦止んだかと思えば。

 

 カバディかばでぃカバディかばでぃ。

 

 また同じようにカバディが響く。

 

 銀時が口から赤いものを発射させたと同時に、

 

「あ、これ山崎の携帯じゃん」

 

 わたしは華麗にソファの後ろへと跳びあがり、憐れな銀時を飛び越えて通路へ着地する。足取り軽く倒れる山崎の元へ向かい、ポケットに入っていた携帯を取り出した。

 

 ディスプレイには、『ふくちょー』と書かれている。

 

 ――これ、土方さんに見られたら怒られるんじゃないかな?

 

 そんなことを思いながら、迷うことなく通信ボタンを押した。

 

『てっめぇ山崎、どこほっつき歩いてやがるっ! 十五時に南埠頭だ言ってあっただろバカヤロー!』

「へぇ……じゃあ、山崎は赤いパルフェ吐血事件に巻き込まれて気絶しちゃったから、代わりにわたし行くね」

 

 怒る土方に、明るい声音で返答しつつ、わたしは軽い、あくまで軽い脳震盪(のうしんとう)を起こすようにと、山崎の顎を軽く、あくまでかるーく蹴り上げた。

 

「ふべっ」

 

 そんな呻き声なんて、わたしの耳には入らない。

 

 わたしはその携帯を袖にしまいながら、神妙な面持ちで沖田たちの元へと戻る。

 

 涙や鼻水でいっぱいの銀時と、不思議そうな顔で首を傾げているミツバと、変わらぬ無表情の沖田。

 

 彼らに、わたしは申し訳なさそうに伝えた。

 

「せっかくの機会に、大変恐縮ですがぁ、副長から大事な用事を言い渡されてしまったので、今日はこれで失礼させていただきまぁーす!」

「オイ、なんでそんなに嬉しそうなんだ?」

 

 半眼の沖田にそう問われて、わたしは肩をすくめた。

 

「そんなことないよぉー、すごく残念! じゃあミツバさん、またの機会に」

 

 これ以上沖田に睨まれないために、足早に立ち去ろうとするわたしを、

 

「……桜さん!」

 

 ミツバが呼びとめる。振り向くと、彼女は立ち上がっていた。

 

「その……副長さんは……お元気ですか……?」

 

 俯くその顔は、恥ずかしそうに、赤く染まっていて。

 

 ――お?

 

 内心ニヤリと笑いながらも、わたしはごく普通に笑った。

 

「今日もマヨネーズ啜りながら、お仕事に励んでますよ」

 

 すると、ミツバは嬉しそうに、くすりと笑い返してきた。

 

「じゃあ、そのマヨラーさんに、これ差し入れてくれませんか?」

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