「と、いうわけで、はいこれ。激辛マヨネーズ
「なにがいきなり『というわけで』だ! 山崎はどーした! 山崎は!」
「だから、赤いパルフェ吐血事件に巻き込まれたんだって! パルフェがね、真っ赤に染まってね、それを食べたらぷぎゃーって」
「いいから! そんなくだんねー事件の話はしなくていいから!」
そう怒りながらも、土方はその激辛マヨネーズ煎餅をバリっと食べた。
「くっそ、
日が、海に沈みかけていた。
茜色の海は宝石を散りばめたようにキラキラと輝き、その美しさをこれでもかと訴えていた。そんな贅沢に輝いて、いったい何を伝えたいのか、その意図はわたしにはわからない。
しかし、その茜に染まりながらも、わたしの視界をたまに遮る黒々としたアフロは揺るがない。
「てか、なんでアフロ?」
――総悟くんと同じこと言ってやんの。
同じ発言だと伝えて、土方は怒るだろうか。
きっと、その答えはノーだ。それで怒るには、沖田一方。
――そういや、総悟くんは土方さんのこと嫌ってても、土方さんはそうでもないよね。
今まで気づいてはいても、気にしてなかったことに、わたしはくすりと笑いながら、
「アフロだからこそできることも、きっとあると思うのよ」
やっぱり、わたしは適当に答える。
土方は呆れたようにため息を吐いて、また「辛い」と文句を言いながら、煎餅をかじった。
「そのお煎餅、ミツバさんからなんだけどさ」
「あぁ」
「土方さんも、ミツバさんと顔見知りなんだよね?」
「……あぁ」
「ちゃんと、挨拶とかした?」
わたしの質問に、土方は舌打ちした。
「……てめぇには関係ねぇーだろうが」
「関係ないけど、親友のトッシーが恋で悩んでるのなら、相談に乗りたいのが心情ってものでしょう?」
さも当然とばかりに答えると、土方は口から煎餅を噴き出した。
「い……いつの間に親友になった?」
「え? こないだ一緒にチャイナムーン観ながら、言ってたじゃない?」
土方はなんだかんだ、トッシーとうまく共存しているようだった。とある曜日と時間になるとオタクのトッシーが出てきて、それ以外は土方がいつも通り表へ出てきているようである。トッシーがたまに通販で人形などグッズを買ってしまい、貯金がうまくできないと頭を抱えてたりするが、
「まぁ、あれだ……あいつに付き合ってやるのも、ほどほどにしてくれ。これ以上でしゃばってこられたら、堪らん」
この程度らしい。
優しいのだ、この男は。
自分の身体を他人と共存することになっても、『堪らん』で済ませてしまうほど、優しい男なのだ。
お土産の激辛煎餅も、辛いと文句を言いながら食べるほど、優しい男なのだ。
それなのに、数年ぶりにあった旧友への、挨拶を拒む。
その理由は、好きか、嫌いか。
――まぁ、この二択も、確実に絞れるけどね。
わたしは不機嫌そうに煎餅をむさほる土方が愛らしく、頬がほころんだ。
彼の顔が赤いのは、夕日のせいだろうか。
わたしは歌う。
「ごめんねー素直じゃなくって。夢のなーかなーら言えっる」
「おい、やめろ」
「思考回路は、ショート寸前。今すぐー会いたいぜー」
「やーめーろー! なんだその下手くそな歌は!」
怒ってくる土方に、わたしは少し舌を出した。